「酒よりも 博打が悪い」と 義父が言い

「酒よりも 博打ばくちが悪い」と 義父が言い


 今は亡き義父は酒好きで酒を呑むとヒトの悪口を言ったり、バイクごと泥田に落っこちて泥だらけで帰ってきたりするような困ったヒトだった。


 その義父が言った言葉が上の言葉だ。


「酒はこれ以上飲めないという肉体的限界がある。バクチにはそれがないからバクチにはまると賭け金が際限なくいくらでも増えていく。キリがない。酒よりもバクチの方がタチが悪い」


 ある意味で真実だ。


 南国の人はギャンブル好きが多いような気がする。原始的なトランプやサイコロの賭場がそこかしこでこっそり開かれているらしいが、ワタシは全く関心ない。アレってはっきり言ってインチキだ。


 こっちに来たばかりのころだから四半世紀ほど前のことだ。熱帯某国のデパートのスポーツ用品売り場のレジ横に妙な手書きの広告を見つけた。


「偏光メガネとセットで使うイカサマトランプ制作を請負います。色でも柄でも数字でも全てあなたの思いのまま!」


 (おい! どこがスポーツやねん!)


 とわたしはココロの中でツッコミを入れた。


 そしてレジ横のガラスショーケースにはよくわからない機械とサイコロの組み合わせ。


「日本製の出目が自由自在のサイコロコントローラー。パナソニック、SONY、東芝、日立、シャープなど各一流メーカー製品を取り揃えてございます」


(なんでイカサマのチンチロリンがスポーツになんねん! 日本の家電メーカー製? そんなわけあるかーい!)


 日本の家電メーカーがそんな製品を開発してたらもはやオシマイである。世紀末である。そういえばこの頃は本当に世紀末だった。まさか、イカサマアイテムに手を出したのがきっかけで日本の家電メーカーが斜陽になったのか。


 という冗談はさておき、四半世紀前に既にこんなアイテムが堂々と売られていたのだ。トランプやサイコロ賭博、そんなものに手を出すのはアホウ以外の何者でもないとわたしは思っている。

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