見逃せば 青トウガラシが 舌を灼く

見逃せば 青トウガラシが 舌を


「辛い料理が好きだ」などと現地で口走ったおかげで、人間は思っていても決して口にしてはいけない言葉があるということを身を持って学習した。もう二度と言うものか。


 激辛料理を激辛だとも理解できていない食文化の人たちと食事をともにするとき、「辛クナイノ、プリーズ」にあたる現地語は必須だ。


 加えて「大丈夫、辛クナイ」と彼らが言っても信用できない。彼らはウソを言っていない(多分)。ただ辛さの評価基準がワタシからみてオカシイだけだ。


 現地人の感覚とワタシの感覚を対比する。


こんなの全然辛くない

→それなりに辛いが口にできる辛さ。個人差はあるのでここでギブアップもあり得る。


あまり辛くない

→かなり辛い。辛さに対する一定レベルの覚悟と耐性が必要。


ちょっと辛い

→間違いなく激辛である。料理として味わい、口にできる限界。


辛い→もはや味はわからない。ただ熱く痛い。口にできる物質としての限界。


とても辛い→絶対に口にしてはいけない。自傷行為と同じ。こんなモノを口にしなければならないなんて、どんな罰当たりなことをしたのか。


 今暮らす国では直訳すると「ネズミの糞トウガラシ」と言う最低な名前の激辛トウガラシがある。赤いトウガラシ🌶️なら容易に避けて食べられるが、コイツはタチが悪く緑でこんな感じ🫛だ。しかも小さい。ぱっと見では普通の野菜に擬態している。刻まれるともうお手上げだ。


 こうしてワタシも辛さに慣らされいく。だからワタシが「大丈夫、辛クナイ」と言ってもあまり信用してはいけない。

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