32 副作用

 お?


 おお?


 おおおおおお!?


 今までは法力を受け取るだけだったけど、初めて法力を渡してみると、この感覚はやばいな。


 自分の中の大事な何かを吸い取られる感覚。


 カクンと全身から力が抜ける。


 その場に崩れ落ちそうになる。


 ってか、膝をついてしまった。


 ところがキッサは俺から口を離さない。


 なんならちょっと笑ってやがる。


 いままでやられた分をやり返す気だな、こいつ。


 あ、やばい、意識が遠のく……。


 思わずキッサを押しやろうとするが、キッサはさらに強く俺を抱きしめてきて……。


 キッサの顔がぼやける。


 感覚が鈍る。


 ああ、もう、俺の魂のすべてがキッサに吸われて行って……。


 俺は夢見心地のまま、意識を失った。



     ★



 次に目を覚ましたのは十秒後か、十時間後か。


 そんなことすらわからない感覚。


 俺が見たのは、キッサの耳にかみつく婆様だった。



「我を加護するキラヴィ、我と契約せしレパコの神よ、我に闇の向こうをみせしめよ!」



 そう叫ぶキッサ。


 そのキッサの表情を眺めながら、おれはまた目を閉じた。



     ★



 あったかい。


 やわらかい。


 うーん、これは女の太もも。


 うん、俺くらいになるとすぐわかるわ。


 パチッと目が覚めた。


 見えるのは、俺を見下ろしているキッサの顔。


 赤い瞳がいつもに増してきれいに見えた。


 やわらかく微笑んで、



「おきましたか、エージ様」


 


 といった。



「あー……なんか今日のキッサは、綺麗だな……」



 思わずつぶやいてしまった。


 キッサはびっくりした顔で俺をみつめると、くすくすと笑って、



「今日の、じゃなくて私はいつも綺麗なんですよ、エージ様の前では」



 といった。


 あー。


 なんだろう、ふわふわした感じ……。



「ファニポンの聖石の場所がわかりました。ここから北に40カルマルト、古城があるそうですけれど、そこに反応が……」


「キッサ」


「はい?」


「キスしてくれ」


「……? はい」



 俺に膝枕しているキッサは、俺に覆いかぶさるようにしてキスをする。



「もっと……」


「はい」



 言われるがままに俺にキスするキッサ。



「えっと、これってさー」



 すぐとなりからミエリッキの声する。



「エージ、副作用でてない?」


「そうじゃな、なぜじゃろう……? わしほどの使い手が介入するとさすがに副作用がでるのかもしれぬな。」



 婆様の声。


 あーなんだかわかんない


 わかんないけどキスしたいぞ。


 しないと死んじゃう気がする。



「ミエリッキィ……キスを……」


「エージ様、私がいるからいいでしょう?」



 キッサが再び俺にキスをする。



「あの、私もいるので……」



 サクラがキッサから俺を引きずるようにして奪い取ると、キスしてくる。



「すみません、私もです……」



 イーダまで俺に覆いかぶさってくる。



「あのねえ! 私にももう、副作用きてるんだからねっ!」



 ミエリッキも。



「ふむう、こりゃ玄孫には目の毒じゃわい。こいつら残して向こうの天幕にうつるぞい」


 婆様の呆れたような声が聞こえた。

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落ちこぼれ営業マン異世界戦記 ~ロリ女帝から女騎士、女奴隷までみんな俺のものになりそう~ 羽黒 楓 @jisitsu-keeper

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