第8話 天界に現れた化け物

天界に来てからというもの、息をつく暇もない。いきなり天使になれと言われ、殺されかけ、そんでトップと対談かよ。

「セラフィムさん。お話は聞いています。ここ天界の最高責任者と言ったところですね。それじゃあ私に名前をください。名無しというのは不便なもんです。」

「おや?私にはあの気味の悪い話し方はしないのか?お前と私の立場の差はまさしく生徒と教員だが。」

「貴方の部下に不評なんですよ、この話し方。それに貴方もこの話し方の方がいいのでしょう?」

まぁ、これは俺にとっての願望だが、どうだ?

「ふん、つまらん。俺と対面する者は皆まるで殺されると思ってるのか、ガタガタ震え、言葉を発する事すらままならんというのに。」

どうやら、間違った選択はしなかったようだ。これでもし間違ってたら死んでたかもな。まぁ、死んでんだけどさ。

「まぁよい。早速名を授ける。お前の名は…そうだな、シャロスだ。お前は今から天使シャロスだ。わかったな?」

俺の名前はシャロス。これでやっと殺されるリスクが減った。

「分かりました。ありがとうございます、セラフィムさん。」

「シャロス、セラフィム様は何とも思ってなさそうだけどせめて様くらい付けなさい。」

サエルがムッとした顔で注意してくる。それにしてもサエルは初めて会った時よりコロコロ表情を変えるから見てて面白い。

「まぁよいではないかサエル。私もこういう変わり者が1人欲しかったのだ。だからシャロスよ、変に私に気を使うなよ。」

「分かりました。貴方がそう望むなら私はこの態度で接しますよ。セラフィムさん」

てっきり威圧的で怖い人かと思ったが、優しい人だ。人を話し方や見た目、態度で決めつけてはいけないな。まぁ天使だけど。

「それじゃあ次はステータスと恩寵だな。お前のような前世持ちは、前世で重ねた善行の数によってステータスや恩寵に影響が出てくる。多ければ多いほど強力なものになるな。」

「それじゃあ見せてもらおう。お前のステータスと恩寵は…」

直後セラフィムは固まった。そりゃそうだ。さっきステータスの説明があった時に察した。前世での善行の数に応じて協力になる。それなら俺の数値は

体力 4000

聖力 200000

魔力 0

精神力 1

「何だこの出鱈目な数値は、魔力がないのは前世持ち全員に言える事だから普通だ。体力も平均的と言ったところだ。だがなんだこの聖力は。この数値は神に匹敵するぞ‼︎…だが」

「やはり、そうでしたか。」

サエルが納得したような表情をしている。

「シャロス、貴方はこの天界において、最も優れた天使であるのと同時に最も危険な天使です。」

「危険?俺は周りに危害を与えるつもりはないぞ。それに、俺をずっと見てたなら分かるだろ?俺がそんな事をするか?」

こいつが俺を見てたなら分かるはずだ。俺が生きていた時自分から他人に危害を加える事はしてこなかった。

「だからこそなんですよ。」

呆れた表情をするサエル

「いいですか?貴方の精神力は1です。精神力が無くなると、天使は堕天します。そうなれば貴方は欲望を満たすため本能で動き続ける化け物になります。」

堕天使、神に反逆した者って感じだったよな?

「何で精神力がなくなるだけで神に反逆するんだ?」

「いいですか?精神力とは理性です。やってはいけない事をやらないと言うように当たり前の事を出来ているのは精神力があるからなのです。ただ、貴方は前世で精神力を使いすぎた。人は、特に日本人は一生を生きるのに余剰すぎる精神力を持ちます。ただ貴方はその精神力を使いすぎた。気づいてなかったようですが、貴方は高校入学時までは普通の人と同じペースでしたよ。ただ、高校入学してからすぐに適応障害とパニック障害になり、精神力が減りやすくなってました。辛いのに我慢ばっかするとそりゃどんどん減りますよ。それに加えて人の頼み事を次々に受け、勉学に励む。今精神力が1です。つまり貴方はあそこで車に轢かれて死んでなくても、精神力が0になり、理性が保てなくなり、廃人になるか、生きる事に耐えきれず自殺の道を選んでたって訳ですよ。」

そんな…それってつまり。

「俺はどっちみち死んでいたと?」

「そうですね、黙っててすみませんでした。」サエルは頭を下げていた。だが、それに触れられるほど俺には余裕が無かった。

「て事は俺はどっちみち死んでたけど、死ぬ予定がなかったあの女の子を助けれたってことか?」

俺は嬉しかった、自分の価値が無くなってた命でこれから価値を生み出す命を救えたのだ、これほど幸せな事があるだろうか?

「やはり、貴方は…」

「なんだこいつ、頭おかしいだろ」

「…」

サエルは泣きそうな顔でシャロスを見た。ハーダエルは化け物を見るような目でシャロスを見た。セラフィムはそんなシャロスを見て冷や汗をかきながら口を開けた。

「こいつは神になりうるが、悪魔になり得るぞ」


シャロス ステータス

体力4000

聖力200000

魔力0

精神力1

恩寵 全ての願いを叶える(ただし己の私利私欲ではなく、誰かのためになる時のみ)

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