お金をどうするか

「元々俺が持ってたお金はどうなるんだ?」

「え?あーはいはい、お金ね」


あーまずい。確かあの奴は三億円くらい持ってたよな。

もし三億円なんて大金をこの世界に持ってきたら、きっとろくなことに使わないだろう。

なんならまたニート生活しだすかも。

それはまずい。どうにか適当に言いくるめないと。


「あーお金ね、本当はこっちの世界に持ってきてあげたいんだけど、実は出金制限的なものがありまして……」


「ふざけんなよ!何が出金制限だ!俺の金だぞ、返せ!」


ここはしっかりと強く言うのが効果的だろう。

何を言われようが、俺の金は返してもらう。


「わかったわかった、後でなんか考えるから。じゃあ、とりあえずそんな感じでよろしく」


「あっおい!」


ちくしょう、あの奴またどこか行ってしまった。

結論も出さずに逃げるなんて、マジで困った野郎だ。


さっき受け取った100万マリアが全財産だ。

まあ、これだけあればしばらくは暮らせるだろう。

まずは衣食住を整えよう。

とりあえずお腹は減っていないから、あの奴が戻ってくるまでの間安全に過ごせるよう、明るいうちに安全に休める場所を確保しよう。

もし暗くなってもあの奴が来なくて何かに襲われたら、たまったものじゃない。


そういえば、あの奴はこの道を適当に進めば街があるって言ってたな。

あの奴がいつ戻ってくるかわからないから、しばらく暮らすくらいの覚悟をしておこう。

覚悟をしておいても損はないからな。


と言っても、今いるのはどこかもわからない道のど真ん中だ。

まあ、とりあえず適当に道なりに進んでみるか。

街までどれくらいかかるかわからないが、ここにずっといるよりは遥かにいいだろう。


しばらく道なりに歩いていたら、建物らしきものが見えてきた。

建物と言ってもビルのようなものではなく、木造のボロ屋と言った方がいいだろう。

とりあえず街の中心まで来てみたが、周りの建物はほとんど木造でボロい。そして、街というよりは村に近い。

おかしいな、あの奴は確かに街だと言ってたのに。

もしかしたら、この世界の街とはこの程度なのだろうか。

おっちょうど道の先に村人っぽい人がいる。

とりあえずお腹も減ったし、何か食べ物が売ってる店があるか聞いてみよう。


「すいません」


叫ぶと、村人らしき初老の女性が振り向く。


「僕は今旅をしていまして、さっきここに着いたばかりなんですよ。それで、お腹が空いてしまって、この辺でご飯でも食べられる場所を探していまして……」


怪しまれないように、いい感じの嘘を混ぜつつ、なんとなく状況を伝えてみた。


「なるほどねえ。あなたもこんな田舎まで来て大変だったでしょ。この辺の村には宿もないところが多いけど、幸いにもこの村には一軒だけ宿があるから、今日はそこに泊まるといいよ。そこでまた食事の話をすれば、何か出してくれるさ……」


一気に衣食住の食と住が解決してしまった。

話によると、この道をまっすぐ進んだところに宿があるらしい。

あたりも少し暗くなってきたことだし、あの奴が戻ってくるまで宿でゆっくりして過ごすことにしよう。


おっ、ここかな。

何やら宿らしき看板が立っている。

営業時間や値段は特に書いていないし、とりあえず中に入ってみるか。


「おっ、あんた見たことない顔だね。もしかして、旅の人かい?」


中に入ると、元気がいいおばあちゃんが話しかけてきた。


「そうなんですよ、さっきこの村に着いたばかりで……」


さっき説明したように、嘘を織り交ぜていい感じに話しておいた。


「なるほどねえ。じゃあ、今日は泊まっていきな。その話だと最近この国に来たみたいだけど、あんたお金は持ってるのかい?うちでは、この国の通貨しか使えないよ」


どうやらこの世界には複数の通貨があるらしい。円やドルやユーロみたいなものだろうか。


「それってこれのことですか?」


さっきあいつからもらった金貨の袋を広げる。


「えっ」


「えっ?もしかしてこれじゃないんですか?」


「えっと、まあこれなんだけど、あんたこのお金はどうしたんだい?もしや強盗でもしたんじゃないでしょうね」


そう言って宿屋の店主は睨みつけてくる。なんかまずいな、完全に犯罪行為を疑われてる。額が多すぎたのかなあ、適当な言い訳をして乗り切るとしよう。


「えっと、実はこれとある人を助けたらお礼にってくれたんですよ。なんで僕もあんまりよくわかってなくて。」


「あーなるほどねえ。でもこれ大金だからあまり見せびらかさない方がいいわよ。この村は比較的良い人しかいないけど、お金は人を変えてしまうから」


「そうなんですね、じゃあそうします。それで宿代はおいくらですか?これで足ります?」


「えっ、あーうん全然足りるわよ。宿代は一泊金貨十枚ってとこかしら」


「お腹空いたんで出来たら食事もつけて欲しいんですけど」


「じゃあ今回はサービスで食事付きで金貨十枚でいいわ」


おっ、優しいな。サービスってなんか嬉しいよな。


「じゃあこれで」


お金を払うと店主はさっさと部屋に案内してくれた。部屋は正直綺麗とは言えないけど、見た感じ掃除はしっかりとされていて、ほこりやゴミはないしまあ許容範囲内といったところだ。


全体的に木目が基調に使われていてベッドも二つあるくらいに部屋は広い。正直想像しているより全然良い部屋で驚いている。てっきり格安ビジネスホテルのような必要最低限な作りをイメージしていたから嬉しい誤算だ。まだ昼間だけど日本に居た時すでに夜だったし、流石に眠い。あいつがいつ来るか知らんがしばらく仮眠を取ろう。





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ニートしてたら地球から追い出されて推しと異世界で暮らすことになりました キベ @kibe_3

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