大正ロマンと質の高い純文学を堪能したい方へ

「文学」という名に相応しい名作です。

古本屋の朔之助とともに穏やかな生活を送る小説家・征一。彼に横恋慕する女学生・壱加の出現により、彼らの人生は大きく動きはじめ、衝撃のラストへとつながっていきます。

自作の芸術性と向き合う作家・征一と、それを支えるパートナーの朔之助。理不尽を強いられる女学生・壱加と、彼女を精神的に支えるエス(女学生の間での恋愛ごっこの相手)・梓。人物の数だけ違った形の愛と葛藤があり、それらがときに耽美に、ときに激しく描かれています。大変心動かされました。

人物像の描写が繊細かつ鮮やかでリアリティに富み、心理描写も非常に巧みです。それぞれの愛と欲望がぶつかり合う様は圧巻です。

正統派の文芸が好きな方には是非、お勧めしたい作品です。