エピローグ
第14話
「――以上が今回の密着取材の内容です」
久しぶりに出社した若手記者は内心安堵する。
やはり自分がいるべき場所はダンジョンではなくこの新聞社だと。
ちなみに現在は現地で記した実体験を元に一日で書き上げた原稿を編集長に提出したところだ。
この原稿は自分の涙と汗とが諸々混じった渾身の出来栄えである。
編集長は無言のまま本文に目を通し、一通り読み終えたところで、
「中身は色々とむちゃくちゃだな。だがいい記事になる。よくやった」
「ありがとうございます」
むしろそうでなくては困る。
あの密着取材期間中に冗談じゃなく十年は確実に寿命が縮んだと思う。
がしかしその甲斐もあってこうして面白い内容に仕上がったのだからよしとしよう。
「それにしたって地水火風すべてを司る加護持ちがいるとはなぁ、驚いた」
「正直、できすぎなくらいですよね。まるで彼らが一堂に会するよう
「まさに事実は小説よりも奇なりってわけだ。まあそれはそれとして、我がアドベンチャータイムズは今後も継続してマストラパーティーの動向を追っていくことにするぞ。こんな破天荒な集団、わざわざ見逃すものか。そんなわけで彼らとの付き合いは君にこれからも任せたぞ」
「了解しました編集長。それならさっそくマストラさん達に今回の取材の謝礼も兼ねてこれから会ってきます。ついでに僕の書き上げた記事を見せて感想を伺ってきますよ」
好きなように書いてくれて構わないと事前に許可はもらってあるとはいえ、完成した原稿を本人達に確認してもらうのは大事なことだ。
自分が書いた原稿を読んだ時、彼らはどんな反応を示すだろうか。
喜んでくれるだろうか。
それとも期待はずれだと落胆するだろうか。
どちらにせよ、彼らパーティーのファンになった自分の熱意が文章を通して本人にも伝わればいいなと思う。
「おっと、手土産を忘れるんじゃないぞ」
「分かっていますよ」
持参する品物は既に考えてある。
新品の軍手と、草刈り鎌。
きっと草むしり中毒の彼なら喜んでくれるはずだ。
足取りも軽やかに外に出る。
「……ふう、暑いなぁ」
本日は雲一つない晴天。
この抜けるような青空の下、今日もどこかで
その光景を想像して、自然と若手記者の口元から笑みがこぼれた。
――これはかつて草むしり冒険者と卑下された男の奮闘の記録。
世界をも蝕む巨大な雑草すら引き抜いて、やがて草刈りマスラオと呼ばれるようになった者の望まぬ英雄譚。
あるいはただの酔狂な冒険者に対する備忘録なのかもしれない。
(了)
__________
読者の皆さま、最後までお付きあいくださってありがとうございます。
色々な部分を匂わせるだけ匂わせてひとまずは完結としておりますが、連載の予定は今のところありません。
元々この作品は数年前に書き上げたのですが、その頃に練っていた本編に繋がる設定などを失念しておりましてそのまま凍結、という形です。
今後の予定ですが、とりあえずは新たな異世界ファンタジー作品を公開していきたいと思いますのでそちらの方でも応援くださると幸いです。
またこれが最後のお願いになりますが少しでも本作を面白いと思っていただけたら、☆レビューやフォロー、応援に作品の感想などをもらえると喜びます。
雑草を抜くだけで強くなるスキルで美少女と最強パーティーを組んだら他にも美女が入ってきてハーレムになった上なぜか密着取材まで受けることになって困る 佐佑左右 @sayuu_sayuu
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