第2話 スカウト
会場中の人間の視線が、
勢いで夢の舞台の入口へと乗り込んで来た彼女。
冷静になって頭を回し始めると、現状を正確に把握していくほどに、彼女の顔は熟した果実のように真っ赤に染まっていった。
(わ、わ、わ、私、何やってんだろうねぇ!?
「え~……今からアイドル戦争に参加される方へ、簡単な資料を渡すので、後で目を通しておいてください。事務所に所属していない方は、先に事務所を見つけることから始めてください」
関係者のような人間が、クリアファイルに入った資料を、参加者達へと配り始める。
下を向いたまま顔を真っ赤にする白崎も、資料を受け取ると、先ほどのアナウンスを頭の中で復唱し始める。
(……事務所に所属していない方は、先に事務所を見つけることから始めてください。事務所? どうやって見つけんだろ……んんん? なんかスカウトっぽい人が声をかけてる……あっそっか!! アイドル志望の人間が来るんだから、スカウトも当然くるよね。なら私にもすぐに……)
周囲を見渡す白崎。
面の良い女性達から順に声をかけられており、これなら自分もすぐにスカウトされるだろうと高をくくっていた。
だが……
(……スカウトが来ないっ!?
「あの子どうする?」
「え? ……あー……
(さっきの
膝から崩れ落ち、その場に項垂れる白崎。
アイドルになることを目指したのは良いが、初っ端から壁に直面し、絶望に打ちひしがれていた。
「……ねぇちょっと、アナタいいかしら?」
「すみません、
「スカウトの相談なんだけど……」
「スカウト!? 私ですかっ!? はいっ!! 行きますっ!! 何処へでも連れて行って下さいっ!!」
「おいおい……ちょっとは疑えよ……このオネエとこの胡散臭そうな俺の2人だぜぇ? エッチな動画の撮影とかだったらどうすんだよ……」
「え? エッチな動画の撮影をするんですか!?」
「しねぇよ馬鹿っ!! ちょっとは警戒しろって言ってんの!! は~……コイツ大丈夫かなぁ……」
白崎に近づいて来た人物が2人。
オネエ口調の男性と、ヤクザの若頭のような男性が、白崎の前に立っていた。
場所が場所なら警察に職質されそうな彼ら。
どうもアイドル事務所の人間らしく、白崎をスカウトしに来たらしい。
「あ、あの!! ちょっと質問良いですか!?」
「ん? なんだ?」
「なんで私をスカウトしようなんて……」
「あー……それはだな。お前さっき
「えへへへへ~」
「……半分以上皮肉で言ったんだけどな? まあいいや。んでどうする? 今から俺達は事務所に帰るんだが」
「行きますっ!! 絶対に行きますっ!!」
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アイドル事務所の人間に連れられて、博多駅近くのこじんまりとした事務所に連れられて来た白崎。
ビルの4階に存在するそこは、ぱっと見ではアイドル事務所と区別がつかない場所であり、がらんとした印象を与えていた。
「そうだ、名前まだ言ってなかったな。俺は
「アタシが
「はい、
「とりま、この資料は親御さんと一緒に目を通しておけ。んでサインとハンコを忘れずにな。松崎!! 後は頼むぞ」
「は~いはいっと。んじゃ白崎ちゃん、早速出かけるわよ」
「へぇ? 何処にですか?」
「
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松崎の後を付いて行くこと数分。
アイドルの卵達が技能を磨く場所へと連れていかれた白崎。
そこに至るまでの僅かな時間、松崎は白崎にアイドル業界についてのレクチャーをしていた。
「……そんなわけで、アイドル業界ってとっても厳しい世界なの」
「ああ、なんとなく
「ふふふっ、面食らうわよ~これから見せる場所は。しっかり
目的の場所へと到着した2人。
扉の向こう側には、レッスンに精を出しているアイドルの卵達がいるようで、しのぎを削っている最中らしい。
「開けるわよ」
「はい」
(ふー……緊張してきた。どんな人達が……)
「あ"ぁ"も"!! なに私の足引っ張ってんのよ!! この
「は"ぁ"!? そういうアナタは演技が
面食らうと言われ、身構えていた白崎。
厳しい世界なのはある程度は想定出来ていた。
だが、目の前で行われている胸ぐらを掴んだ取っ組み合いの喧嘩によって、認識を改める羽目になってしまった。
「ま、松崎さん。これは……」
「これがアイドルの世界よ。奇麗な世界の裏側は、
「……」
「……出来そう? アイドル」
「ええ、大丈夫ですっ!! あの、こんにちは……」
「あ"ぁ"!?」
「っ!!」
(怖っ!? ……だけど……私はもう止まらないよっ!!)
「本日からアイドルを目指すことになりました、
「……」
(この子……思ったより
「白崎ちゃん、じゃあ今日はこの辺にしとくわよ。明日は早いし」
「明日……? なにかあるんですか?」
「
「へ?」
「日本最強のアイドル、
ファンタジー×スポ根×アイドル『アイドル戦争』 @komadaaaaaaa
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