ep.4 僕が、やらなきゃ
「ほ、本当だ!!あの、詳しい事情は説明するから、まずは傷の手当を………!」
「そんな物は、どうでもいい……………」
彼女が再び低い声で言う。しかし、その声は少し震えていた。
あ、れ……………?なんだろう、様子が……………
「私は…………戻らなけれ、ば……………………」
彼女の腕が震える。剣の切っ先が僕の首を離れ、床に細い傷を刻んだ。
おかしい。顔色が………………逆光でも分かるくらい、悪い。
「早く、逃さない、と…………………」
そう言い終わるより早く、彼女の体から力が抜け、膝から崩れ落ちた。
「えっ、ちょっ、待っ」
――――――僕に覆いかぶさるように。
「うわぁ!君、大じょ――――――――っ!?」
助け起こそうとして彼女に触れ、僕は目を見開く。
冷たい。
ひんやり、というレベルではない。氷のよう、という形容詞がよく似合う、命が抜け落ちた後の冷たさ。
それに反して、痛々しい傷口からこぼれ落ちる血は熱く、失われていく
………………これ、まずいんじゃないの?
意識を失った………んだよな?ってことは失血?傷、全部で何個あるんだ?一、二、三、四…………とにかく無数にある。特に太ももと
どうする?僕に何が出来る?
応急手当ての経験なんてない。救急車?いや、彼女の服装………足元は編み上げブーツ、胴体には傷のついた鉄鎧、それに――――――握りしめた
でも、コスプレにしてはハイクオリティすぎる。第一コスプレに本物の剣を使う人なんていないだろう。日本じゃ法律違反のはずだし。だとしたら………………
ま、まさか最近流行りの異世界転移!?
彼女は異世界人なのか?なら、救急車は……………呼べない!
『私は…………戻らなけれ、ば……………………』
異世界人なんて、密入国者となんら変わらない。その場合どうなるのか知らないけど、絶対、ゆっくり話すことなんてできなくなる!
『戻りたい』と彼女が言うなら、返してあげなきゃ!喚んでしまった僕にはその責任がある!
とにかく、今ここで彼女を死なせちゃダメだ。僕が、なんとかしないと!
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