ep.2 そもそもの始まり

 どうしてこうなった―――――――原因は、たぶん、というか十中八九、いや十中十、100パーセント、僕が『友達ができる』という【黒魔術】を使ったから、だと思う。


 そもそもだ。そう、そもそも。


 僕が黒魔術なんてものを使う羽目になったのは、僕の親父が始まりなのである。


『お前に託すのは【黒魔術の書】だ。長年の研究の集大成として私が作った。この本を、どう使うかはお前の自由だ。きっとお前に幸福をもたらしてくれるだろう』


 というのは、一年前に死んだ親父の遺言である。いや中二病かよ。

 まぁ僕の父はそこそこ有名な学者だったので、あながち嘘ではないかもしれない。


 そう思って、本を開いたのはほんの出来心だった。


 だが、そこで見つけてしまったのだ。



 友達ができる魅惑の黒魔術を。



 ぶっちゃけてしまえば、僕には友達がいない。少ないとかそう言うレベルじゃない。いない。

 三年前に死んだ犬と大切にしている縫いぐるみが入るなら別だけど。


 まぁ今となっては「そこまで友達要るのか?一年前の僕よ……」と若干引いてしまうが、とにかく当時の僕はすぐさまその魔術の(というか『友達』という甘やかな言葉の)とりこになった。



 そんなこんなでこの一年、陽キャウェーイ族が青春を謳歌する中せっせと魔導書の解読に励んできたのだ。



 そして、黒の力が最も高まる満月の今日(いや黒なら新月じゃないのか?と思ったが、突っ込んではいけない気がして口には出さなかった)僕は完成させた魔法陣に生贄を並べ(魔法陣やその周りは魔神サタンでも喚び出せそうだったけど、生贄がカラーヒヨコなせいでかなりシュールな画になっていた)魔術を実行に移したのであった。



 初めは成功したと思った。魔法陣が眩く光り出した時の感動は言葉にできない。

 …………黒魔術なら眩く光るんじゃなくて黒い煙とか出るんじゃないの、というマジレスは心のブラックホールへ放り込んだ。アーメン、汝に幸運のあらん事を。


 しかし、光が収まった先にいたのは見たこともない女の子。

 しかも命の危機というオマケ付き。



 ……………僕が使ったのは『友達ができる』黒魔術じゃなかったっけ。



 いや、たぶん成功なのだろう。だって、『友達』ではないかもしれないが、『人』は喚び出せているのだから。

 ただちょっと僕のイメージと違っただけで。え?コレそういうやつだったん?ってなっただけで。



 だがしかし、僕は言いたいのである。


 こういうのってなんかこう…………清楚で可愛い女の子が出てくるんじゃないの!?

(いや、若干『清楚』ではないが可愛い女の子は出てきているんだけどね?一応。)


 それがいきなり刀向けられて命の危機とか…………


 あんまりだよ神様――――――っ!!

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