第6話 ゴブリン

 森を進んでいく。

 それは突然だった。


「ギギギ」


 変な鳴き声が聞こえた。

 最初は鳥なのかなと思ったけど、違う。あれがゴブリンだ。


「ゴブリンッ」

「うん」


「ギギギ」

「ギギギ」

「ギギギ」


 ゴブリンの数は三体。俺たちより多い。


「マジック・フット・ボール!」

「ギャギャギャ」


 サッカーボールを命中させるが痛がるものの、まだ死んでいなかった。


「もう一発」

「ギャアアア」


 ゴブリンが悲鳴を上げ、倒れていく。

 一体目を仕留めたようだ。


「私も」


 エリナも魔法のサッカーボールを蹴って攻撃する。

 見事に命中。日頃練習してきただけはあった。


「もう一回!」


 サッカーボールの二回攻撃でなんとか倒せた。


 しかし最後の一匹が問題だった。


「他の二体より大きい」

「うん、ゴブリン・リーダーかもしれない」


 なるほど。リーダーか。


「マジック・フット・ボール!」


 僕がボールを蹴るものの、避けられたりガードされたりしてしまった。

 それはエリナも同じで、ダメージは与えているものの、なかなか倒せない。


「くそ、どうしたら」

「このままでは私たちのほうが」

「うん」


 その時、頭の中に新しい技スキルが浮かんできた。


「今の!」

「うん!」


 俺はエリナと顔を見合わせる。

 同じ事が浮かんでいたようだった。


「タイミングを合わせよう」

「うん」

「三、二、一、今だ」

「「ダブル・シュート」」


 二人でボールを一緒に蹴る特殊技だった。

 二人の魔力分、サッカーボールは大きな玉となってゴブリン・リーダーに襲い掛かる。


「グギャアアア」


 見事に命中した魔法のサッカーボールはゴブリン・リーダーに大ダメージを与えて倒すことができた。


「やった」

「やったわ」


 エリナちゃんが俺の周りをぴょんぴょんと飛び跳ねる。

 そして俺に近づいてきてギュッと抱きしめてきた。

 エリナはとても温かくて柔らかい感触がした。


「あっ」

「んんん、やったやった」

「ちょっとエリナ」

「あ、ごめん」


 さっとエリナが離れていく。

 顔を赤くして照れているところがかわいい。


「それじゃあ、戻ろっか」

「おう」


 さっと手をつなぐ。エリナを決して離さない。

 この子の笑顔さえ見れれば、俺はなんだってする。

 もっともっと、頑張るんだ。

 今回のように二人で力を合わせれば、いろいろなことができる。

 これはもう証明されたのだ。


 ゴブリンは消えて魔石になっていた。

 青黒いゴブリンの魔石が二個。それより大きいゴブリン・リーダーの魔石も持ち帰る。


 冒険者ギルドにクエスト完了の報告をした。

 ゴブリンの討伐はその魔石を提出することになっている。


「ゴブリン、それからゴブリン・リーダーですね。一週間ちょっとで、これはすごいですね」

「えへへ」

「はいっ」

「でも、ここから先は強い敵も多いです。無茶は厳禁です! いいですね!」

「はい……」

「ごめんなさい」

「よろしい」


 ギルドのお姉さんにお小言を貰ってしまった。

 それでもほめてくれたのでうれしい。


 これからもフットサル魔法を使ったり、エリナと協力して攻撃したり。

 みんな、突然地球から消えてごめんな。俺たちを心配しているだろうか。

 地球は遠いけれど、俺たちは遠く離れたこの地で生きていきます。

 これからもエリナと協力して、頑張ります。

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幼馴染の彼女と異世界転移 ~フットサル魔法で異世界攻略~ 滝川 海老郎 @syuribox

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