第5話 マジック・フット・ボール
草原にはところどころモンスターがいる。
まずはスライムだった。
「スライムか。マジック・フット・ボール!」
俺の足元に光の玉が出現するのでこれをサッカーボールのように蹴る。
スライムめがけて飛んでいき命中、爆発した。
スライムは消し飛んで、魔石だけが残された。
「すごい!!」
「へへん」
俺はちょっと有頂天というか、鼻が高かった。
エリナに褒めてもらえたことが大きい。
「次は私ね。マジック・フット・ボール!」
次のスライムに光る玉を蹴って命中させる。
俺と同じ、いやそれ以上の爆発でスライムが爆散した。
「おおぉ、すごいすごい」
「やったわね」
今度は俺が感心する場面だった。
こうして俺たちは次々とスライム狩りをした。
昨日はただ歩いていたのでスライムとか気にしていなかった。
街道沿いすぐにはモンスターが少ないのもある。
道から逸れていくと、スライムがあちこちにいるのが見える。
「マジック・フット・ボール!」
「マジック・フット・ボール!」
しかし長くは続かなかった。
なんというかマジックポイントと言われる魔力量があるようで、使いすぎるとぐったりしてしまうのだ。
俺たちは二人ともぐったりして城下町に戻った。
冒険者ギルドに行って、今日の魔石を換金していく。
まぁまぁのお金になったけど、銀貨数枚といったところだった。
やはり金貨になる制服は高いのだろう。
誰でもできるスライム狩りが高いわけなかった。
それでも今日の宿代にはなる。
夜はまた宿屋のアルバイトで小銭稼ぎだ。
翌日。また草原だけれど、今日は少し遠くへ足を延ばす。
こちらの低い草ばかりの丘にはホーンラビットというウサギがいた。
あのシチューの材料でもある。
「マジック・フット・ボール!」
ぴぎゃ。
ウサギが鳴いて倒れる。
白いウサギを倒して歩いた。スライムもウサギもボール一回で倒すことができていた。
つまりオーバーキルなのだろう。
「リュックいっぱいだよ」
「おう」
エリナに言われてしまった。
分散して二人でウサギを学校用のリュックに詰めているのだけど、すぐいっぱいになってしまった。
「持って帰るか」
「うん」
魔力量の限界もあるので、一度戻ってある程度回復するといいな。
そうしてまた冒険者ギルドでウサギを引き取ってもらった。
スライムよりは高いけれど全部で銀貨七枚くらいだった。
安価にお肉が手に入るという意味では素晴らしいのだろう。
そんな風にウサギ狩りを一週間ほど続けた。
継続は力なりとはいう。
ただ近くのウサギの数が減ってしまったので、だんだん探すのが難しくなってきていた。
もちろんまだあちこちにいるにはいる。
マジック・フット・ボールというサッカーボールみたいな技はとても便利だった。
「じゃあこの依頼、ゴブリンの討伐」
「おおぅ、やってみるか?」
「うん」
俺とエリナは近くの森でゴブリン討伐を受けることにした。
スライムやウサギは害がほとんどないが、利益も少ない。
それで満足している初心者冒険者も多い。
でも、と思う。
もっと美味しいものも食べたいし、狭い二段ベッドではなく広いツインの部屋に泊まれる身分になりたい。
それからそろそろポーションが欲しい。
「すみません。低級ポーションください」
「はーい」
ポーションを買う。ゴブリン討伐ではすぐに怪我をする可能性があるということだった。
ポーションの携帯は義務となっている。
確認まではしないみたいだけど、怪我をして帰ってくれば問題になる。
ウサギで貯めたお金がポーションへと消えていく。
制服の金貨もあったので、まだ大丈夫だけど、それもなかったら今ごろ『すっからかん』だっただろう。
近くの森まで進んでいく。
道中はいつもよりも緊張していた。
エリナも口数が少なくなっていた。
「森だね」
「うん」
周りはすでに木々に囲まれている。
薄暗くはあるが、まだ明かりもところどころに漏れている。
途中でキノコや花なども幾種類も見つけるものの、食べられるかわからないのでそのまま通り過ぎていく。
王都でキノコを食べたという話は聞いたことがない。
さて、いつ、どのへんでゴブリンと遭遇するのだろうか。
俺たちはナイフを握りしめて、森を進んでいった。
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