第4話 冒険者ギルド

 さて翌朝。宿屋でいい仕事がないか聞いてみた。


「手に職がなくて、若い子ができる仕事なんて冒険者くらいだね」

「冒険者」

「そそ。冒険者ギルドが斡旋してるから、いってみればいいよ」

「わかりました」


 職業安定所みたいなことをしているのが冒険者ギルドなのだそうで。

 長期任務から日雇い。それから一部の買取までを一手に担っている。


 俺たちのアルバイトは夜だけだ。

 昼間からは酒を提供をしていないので、昼間騒ぐことはない。


 簡単なスープとパンの朝食をいただく。

 そうそうパンなんだけど黒パンといって、かなり硬いのでスープに浸して食べる。

 別にこれはこれで味もあり不味くはない。

 ただふわっふわの日本のパンばかり食べていたので恋しくなりそうだ。


「行ってきます」

「いってらっしゃい」


 お店の女の子、エルミちゃんに見送られて出ていく。

 いざゆかん、冒険者ギルド。


 教えてもらった通りを進んでいく。

 まずは噴水広場を目指して、そこから南通りを行ってすぐだそうだ。


 今日も噴水では思い思いの人がお水を飲んだり、袋に入れたり、それから恋人が手をつないで見つめ合ったりしている。


「ごほごほ」

「えへへ」


 さすがに手をつないで歩いている自分たちを顧みて、少し照れる。

 あれからずっとエリナが手をつなぎたがるんだ。

 理由は分かってる。甘い意味じゃない。

 不安なのだ。とにかく異世界が、不安で不安で怖いんだ。

 そりゃそうだろう。こんな誰も知らない来たことすらない異なる世界。

 怖いに決まっている。

 でも俺はそんなエリナがいるから頑張れる。

 エリナが安心していられるように、俺は今日も手をつないで、握り返す。


 冒険者ギルド前に到着した。

 平均的な三階建ての建物だ。

 ただし建物は他の店より倍くらい大きい。奥行きも広そうだ。


 スイングドアを通って中に入る。ドアベルが鳴った。

 チャリン。チャリン。


 いつものことのようので誰も何も言わない。

 俺たちは頭を低くして、受付を目指した。


 美人のお姉さんの受付が四つ並んでいる。

 その前には少し列ができていた。素直に並ぶ。


 珍しそうにきょろきょろしているうちに順番になった。


「えっと登録というのをするのかな?」

「新規冒険者の方ですね」

「はい」


「ご登録は二人ともですよね?」

「はい」

「はい、そうです」


「それではこちらの用紙にご記入ください」


 文字も一緒に頭に入っていた。

 すごく不思議な気持ちになるものの、助かる。

 名前、年齢、ジョブ、所属パーティー。


「パーティーだって。一緒にするよね?」

「うん」

「何て名前にする?」

「えっと、じゃあフットベアとか」

「ふむ。じゃあフットベアで」

「ジョブは?」


 お姉さんによると剣士、魔法使い、魔法剣士、僧侶、ヒーラーなどを書く欄なのだとか。

 俺? 俺は何だろう。

 中学生だけど、馬鹿正直に書いてもしかたあるまい。


「ジョブはフリーターかな」

「そうだね。フリーターか」


 こうして記入を終わらせた。


「はい。登録完了しました。何か感じましたか?」

「あれ、なんかマジック・フット・ボールっていう技が」

「私も」


 エリナもちょっと興奮気味に俺の方を見つめてくる。

 う、うん。これはなんだかすごいかもしれない。


「ちょっと敵と戦ってきます」

「ナイフくらい買っていくわよ」

「お、おう」


 こうして冒険者ギルドの売店で護身用ナイフを二つ買った。

 一個金貨一枚。やはり武器などは高いらしい。


 そして元気があるうちに門番さんの前を通って城外へ。


 昨日はただ歩いていたけど、今日はモンスターを狩るのだ。

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