第2話  これまでの流れ2

 さて、私の生まれたいインソレンス帝国には6歳になる年の初め頃に国教であるケセム教の教会で“真生の儀”というものが行われ、終わり頃に“お披露目”が行われる。


 “真生の儀”っていうのは魔法に関する才能を確認する儀式のことで、儀式自体はごく短時間で終わり、お金がかかるわけでもない、行われる期間も1ヵ月間と長いので都合のいい日に行けば良く、どうしても協会に行くことが出来ない者がいたなら神官の方が出向いてでも行う義務がある重要な儀式でもある。

そしてその義務を怠ったり、国に虚偽の報告をしたら国家反逆罪で奴隷堕ち以上の重罪になる、これは儀式を受けていない子供を知りつつ放置した者にも適応される。

ちなみに魔法の才能があれば食うに困らなくなるし、儀式を受けに来た子供とその子を連れてきた者(2名まで)は希望するなら食事が与えられるのでスラムなどで暮らしている者たちもちゃんと受けに来るのである。

儀式が5歳になった後で行われるのは魔法の才能が安定するのがこの年齢になった頃(極稀に後で変化することもあるらしいが)と言われているのと、5歳までの死亡率がかなり高いからだ。

魔法や魔法薬(ポーション)があるので富裕層は大分マシだけどね。


“お披露目”はそのままの意味で、真生の儀を受けた子供たちの内、貴族と魔法の才を認められた平民の子らは帝城で皇帝に謁見してお偉いさん達から有難いお話を聞いた後お祝いのパーティで、それ以外は村や町単位でお祝いするだけである。

そして、貴族の子供はこのお披露目やパーティで恥をかいたりしないように3歳頃から仕来りやマナーなどの貴族としての教育が始まるわけだが、私は3歳になった今でもこの国(世界?)の言語をネイティブな発音でしゃべれない(日本語の癖が抜けない)のでその分拘束時間も長く大変だった。

もっとも、真生の儀の後から貴族社会の事を勉強しなくてはいけない平民の子供達はもっと大変なんだろうけどね。


さて、私自身の進捗としては気配察知の範囲は少しずつ広がっていて、その分白黒TVの範囲も広がっている。それと体を循環している何かしらの力を感じ取れるようになって身体能力や五感を少し強化できるようにもなった。

肉体的には遊んでる振りをしながら柔軟性と筋力(インナーマッスル含め)を成長を阻害しない程度(なんとなくわかる)を鍛えていた。

後は武術の型とかもやってはいたが中々一人になれる時間がなく、正直余りやれていないのだが型に対する理解度が前世よりも遥かに上だし、体にも良く馴染む。これも武術の才能に極振りしたおかげだろう。


とまぁ、こんな感じで言葉関係での多少問題がありつつも、それなりに充実した日々を過ごしていたわけだが、私の生活と将来は大きく変化することとなった。

理由は単純で“真生の儀”で私に魔力が全く無い(弟は長男よりもかなり高かったようだが)ことがわかったからだ。

どうやら私が感じていた何かしらの力は魔力ではなかったらしい。転生時の特典で貰っていなかったとはいえ前世でも感じたことのない力だったし、この国というかこの世界の住人のほとんどが持っている上に高い魔力を持ちやすい貴族、それも高位貴族の家に生まれたのだから遺伝子的に魔力を持っていると思い込んでいたわけだ。


あと、“お披露目”で確信したこの世界の容姿についてだけど、貴族は百点満点で大体80点(稀に25~35点くらいのや単純に太っている者もいるけど)以上、貴族の回りにいる平民も多くは70点以上という美形ばかりなので、59~61点くらいの私(前世は48~50点のザ・モブ)は前世より良くなっているのに相対的に見て前世よりも残念な評価になるんだよねぇ。


おかげで私は容姿→微妙、頭脳→残念、魔力→論外という評価を得て、めでたく離れで軟禁生活と相成りましたとさ。


一応成人と見做される15歳、より正確に言うと12歳から3年間通うことになる帝立の初等学校を卒業するまでは教育含めて貴族として扱われるけれど、それ以降は家を出て(貴族籍を抜けて)自立しなければならないとパパンに言われた。あと卒業までに十分な功績を上げればその限りではないことも。

救いとしては父には私を見下すなどの負の感情がなく、寧ろ申し訳なさそうな感じだ。伯爵家のメンツを守るために仕方なくという感じのようだ。ウン、キゾク、メンツ、ダイジ。


ちなみに、“お披露目”後半の立食パーティでは父と弟と一緒に上位貴族や家同士の繋がりのある貴族に最低限の挨拶を済ませた後は誰ともしゃべらず空気と化して黙々と料理を食べたり、周りにバレないような地味な鍛錬をして過ごしたが、私以外の人間の多くは寸暇を惜しんで様々な人と交流していた。

なんでそんなに必死になるかというとこの国特有の従者制度の所為だろう。

これは男爵/1人、子爵/2人、伯爵/3人、侯爵/4人、公爵及び王族/5人の従者を付けるというものだけど、必須なのは後継者だけで他の子供には付ける必要はない。

とは言え、そこは面子を重んじる王侯貴族、王族は継承権のある子供全員に、後は地位や経済力に応じて従者を付ける子供を増やすし、準男爵や騎士爵の方々も出来るだけ付けようとする。勿論出来るだけ優秀な子を。

そして従者を付けて貰えない(継承権が低い又は平民)子供たちは良い家で従者にしてもらえるように必死にアピールしているわけだ。

もっとも、本当に優秀な子やコネのある子は内定を貰ってるので、のんびりしたものだけね。



こうして私は6歳にしてボッチ&ニートとなったのである。

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異世界転生 マジカル武術 Uー龍 @wanatare

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