第13話 嘘
アカネ:5人
早苗:4人
柄屋敷:4人
ナツメグ:4人
島鳥:5人
ひゅっと喉が鳴る。
アタシは死体と見つめ合っている
痙攣している目玉と
「あ~あ~あ~」
ゆっさゆさと体を揺らし始める
早苗もどき(二度目)
揺られては困る
アタシはそんなに力がない
とっとと運ばねば。
ここはどこか今は分からない。
たぶん一階。
暗くてよく見えない。
一番端っこ?
まっすぐ行けば
突き当たって階段があったような気がする
とにかく走る。
走れば案外軽くなるもので、
何回もガッツ!ゴッツ!と床と頭がぶつかる音を聞きながら
0階にたどり着く。
切断機に何とか押し込み
バシュウ、、バシュ、、コンベアーが動き
やっと、パーツになった早苗を見ることができた。
ぴこん
いきのこり>4人
画面の表示に一瞬戸惑い、安堵し
「、、、ッし!」
ガッツポーズを決める。
やった、意外とできるもんだ。
(人型相手にという意味で)
ちょっと自分をほめたい気分だ。
ずーり、ずーり
という音が安堵感を消し飛ばす。
だが、その人物を見たとき
またてめぇかと思った。
「ナツメグ、、、」
「ん、お!やっほー」
と、手をひらひらさせ挨拶してくる
引きずっているのは
柄屋敷。
「、、どうやったの」
言ってしまえば柄屋敷とナツメグは
顔二個ぶんの差がある。
(柄屋敷>ナツメグ)
「しゃがませてやれば簡単っすよ」
しゃがむという言葉に身に覚えがある
廊下で何かを見る時に、、、あ
「、、、もしかしてペンキ?」
「そっす」
えっへんと大威張りをかます
体格差を乗り越えるナツメグを
何となく尊敬してしまった。
くやしい。
「じゃあ、最初から柄屋敷を狙ってたんだ」
「いやー男を狙うわけないじゃん?」
「?」
「人影を殴ったら、柄屋敷だったわけで
本当は女の子が良かったっす。その為に角で待ってたんすから」
「、、、げ」
「何が悲しくて、男の血で汚さなきゃなんないっすか?
汚してもいいのは女の子だけっすよ?」
ゾッとする
危なかった、もし、タイミングがずれていたら
殺されてたのは、アタシの方で
こんなやつに運ばれてたんだ
「いやだ、、、」
ナツメグは<そっす>とかるく言うと
にかっと笑った。
何か勘違いしている
ナツメグは片手間に切断機に放り投げスイッチを押す。
ぴろんと来た通知
「よしよし、、」
うまい顔をしながら画面を見つめる。
あ、
「てか、なんで嘘ついたのよ」
「ん?ああプレス機っすか?ちゃんといたっすよね?」
「、、居たはいたけど、
「そっすか」
コイツ反省する気あんのかよ
「てか、島鳥、、さんに傷を負わせたのってナニ?」
「ああ、もどきっす。誰かさんの」
「へえ、、」
やっぱりモドキというのが紛れてんだと確信する。
「、、、そうだ」
「ん?なんすか」
「今まで、何人殺した?」
「んー二人」
「誰と誰?」
「今の柄屋敷と、、」
妙な間があり
「アカネ」
ちょっと恥ずかしそうに、無邪気に微笑んで見せる。
自分が最高のサプライズを贈ったみたいな顔
最悪だよ!!
マジかよ!あ、え?運ばれてんのかよ
いやだもーっつ!!くそがぁぁぁぁ!!ファッ〇!
あれ?てか、モドキがアタシってことは、
「ああ、でも正確にいえば、モドキは二回殺したっすね」
照れるな!
(ああ、今なら早苗の怒りが分かる)
いろんなことが、脳内を駆け巡る中で
ふと、思い出される。
あの会話
会ったら、とりあえず刺していいよ(アカネ意訳)
by 島鳥
よし
「刺す」
「マジ殺す」
「おおおっ!落ち着けって!」
「なによ!」
なだめるってのか?!
「どう殺されたか、聞きたく、ない?」
へったくそなウィンク。
、、、
「マジで!殺すっつ!!」
島鳥なら喜ぶだろうが、アタシはそうはいかない
ああ、
コイツになだめることを期待したアタシを殴りたい。
「うごくなあっ!」
「いっ!」
こういう時の身長差が憎い。
顔面にぶっ刺してやろうと思うあまり、ぴょんぴょん跳ねなくてはならない
「おめーは、ノミかナニカかよ!」
「はあぁつ!?ノミ扱いとかひどくない?」
「じゃあ何がいいんだよ、バッタか?ああん?」
「、、、」
何となく、口ごもる。周りに秘密にしているわけじゃない。
ただ、今、カレシ以外にこの話、したくない
これを話したら、思い出をなくしてしまいそうで
外に流れてしまいそうで
時間が進んでしまう。
楽しかった頃が、過去になってしまう。
いやだ。
とん、とんとまな板に包丁がぶつかる音で目を覚ます。
気付けば、アタシはソファでぐだっていた。
昼下がりの休日。温かい光で満ちている、心地良い空間
ワンルームの小さなキッチン。
懐かしい背中
指がひりひりするので見ると
ばんそうこうだらけだった。
ああ、そうだカレシを驚かせたくて
不器用なりに、りんごをむこうとしたんだ。
別の意味で、驚かせちゃったけど。
<りんごむくけど、たべる?>
とん、とん
切り分けている音
<たべるけど、普通のじゃ、やだ>
<じゃあ、何がいい?>
<、、、うさぎ>
<じゃ、それにきまりだね>
とん、とん、とん
<、、いつか、アタシが>
<ん?>
<りんごのうさぎつくる>
<、、じゃあ、作れるまで、待ってるよ>
とん。
薄暗い室内に戻る葬儀の後、ただ一人帰ってきた。
待ってるって言ったけど、帰ってこなかったじゃん
果たされなかったヤクソク
嘘つきだ。
言いたくない一番の言葉を
喉から出かかった
最低だアタシ
幸せだった、記憶
比例して現実の苦さを味わう
立っているのも辛くなり
しゃがんで、うずくまってしまう
深海にも似た藍色の部屋
ひゅおん
と音がしたような気がした
力なく尻もちをつく
、、ああ
ナツメグの自撮り棒が空を切った音か
「うごかないから、、、よかったっす。まだ動きそうで」
こいつ、アタシのことをアナログテレビか何かと勘違いしてねーか?
ゆっくり立ち上がり、コイツから離れたい一心で歩き出す。
ナツメグが何か言っているような気がするが、どうでもいい。
どこへ行くかとか、当てもない
今はただ、眠りたい
アイイロノウミ ヨコスカ @KOUHONE
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