第12話  本気

まだ右手に、肉をえぐった感触が残っている


敢えて思い返すなら、切りにくい豚肉と格闘した時の感触というかんじ

元の場所に戻ってみると、


居ない。


信じてはいなかったが、腹が立つ。

あいつ、「動けないっていってたくせに」

とりあえず、居た場所に足蹴をかます

ざら

というか、でこぼこ?とした感触が靴を通して伝わる。

「、、、ひぇ」

変なものを踏んだかもしれない。

不安を取り除くためにも、しゃがんで、指先でなぞってみる。


「、、なんか、覚えがあるような」

不規則な凹凸があり、表面はやや滑らか。

もっと、顔を近づけて目を凝らす

廊下に、ペンキ?で線がひかれているように見える


「、、、なにこれ」

色々な意味で不可解だったが

その線を辿ると、給湯室に着いた。


警戒しつつ、ドアを開ける


「遅かったじゃないか」

そういって、テレビの前で、椅子に座り、


こちらに振り向く清々しい顔。


手には、スーファミのコントローラー


五分前に殺した顔、

フラッシュバックで、死体かこが重なる

実際に体験してみると、ちょっとわかった気になる。

大変気持ち悪い光景だ


「島鳥さん、プレス機の方へ行ったんじゃないんですか」


「プレス機の方に向かった?うんや、給湯室で待ち合わせたいから、高校ボーイに

言伝ことづてを頼んだんだが」


あのやろう

会ったら、刺す。


「はぁ、」


面と向かって話していると、嘘だったような感覚になってくる


でも、しっかりとパーカーには血が付いている。


「伸びてたんじゃ、使い物にならなかったろ」

「、、ええ、まあ、そうでしたね」

はめて、殺されのだから

使い物にならなかったも同然だ。


「キミは今のところ何人殺した?」


「一人ですかね」

「私は、二人だな」


肩にけがをしたと聞いていたが、どうなのだろう?


自ら、話すとか。


「あーうっかりしてたよ。まさか、この防刃仕様の革ジャンを切り裂くとはね」

お気に入りだったのに

ちょっぴり哀愁のある顔をする

なんか、ずるい。


「ちなみに、誰を殺したんだい?」

「島鳥さんです」


「お!どんな状況だった?聞かせてくれよ!」

椅子を逆に座り、興味しんしんの笑顔を向ける。

やっぱり、変わってる《ヘンな人だ》。


丁寧に、死に際を話す。あつみは大変うれしそうだった。

頬杖をついたり、うっとりとしたり、かと思えば、目を見張っていることもある

時折する、相槌は、話を咀嚼して味わっているようで


極上のディナーを堪能するかのように。


幸せそうだと思った


「それは、必要な死だったかい?」

「ええ、必要でした」

ハハッと小さく言ったような気がして

「いうようになったね」

感慨深い微笑みをほころばせた


「あの、待ち合わせの意味って」

「ああ、そうだ話をしよう」


そう言って、島鳥は自分のスマホを見せた

「この<いきのこり>ということについてだが、どういう意味があると思う」

「生存者ってことだと思いますが」


いきのこりだ?」

「そりゃ、参加者じゃないでしょうか」

「、、、正確に言いたまえ」

「え、っとSNSで募集した、有志の参加者の、いきのこり。だと思います」

「じゃあ、キミのスマホにはどう写っている?」

「アタシですか、、」

今まで<いきのこり>はアテにしていなかった

「五人、全員、、います」


「この生き残りは、


私たちではなく、敵の生き残りなんじゃないか」


「、、まさか」


「アカネクン、死体は、切断機に入れたかね?」


「あ、、いれて、なかった」

すっかりルールを忘れていた。


死体は、切断機に入れる事

その時点で、ポイントが10pt


「それがどういうことか」


カウントが減らない。


つまり「、、終わらない」


ポイントなんて、ただのカモフラージュ。


「やるべきことは、ただ一つ」

「協力、、ですか」


「いや、とりあえず会ったら刺しとけばいい」

あまりにも、あっさり言うもんだから頭が止まってしまった。


「は?いや、だって、話の流れで言ったら、、、」

「話の流れに流される必要はないだろう?」

、、、いや、そういう意味ではなくて。と突っ込みたくなるのにも疲れた


「、、、根拠は何ですか」

「単に確立の話だ。今のところ見分けが付きそうにない。

ということさ」

「それ以外では?」

「まあ単純に殺し合いたいだけなんだがね。」

「、、やっぱり」


「今では運よく正解を殺していたが、そうはいくまい。せいぜい自分を護れよ?

次合うときは、キミを殺すからな」

「、、分かりました。次は刺します」


二人は部屋を出た。


プレス機のある部屋


早苗すみれは、プレス機のそばで目覚めた。


うっかり寝てしまっていたらしい。

にしても頭が痛い。

鈍器でなふっ多様なイヤーな痛み。


入口の方から、アカネが歩いてくるのが見えた。

、、、パーカーに赤い飛沫。

「眼鏡をはずしているだなんて、珍しいこともあるんだね」

「そうなの、どこかで落としたか知らないけれど」

目を離さない程度に、目をそらす。

「、、、そうなんだ」

踏み込まれた

目の端で捉えたナイフを持った手首をとっさに、両手で掴む。

両者の力は均衡。

「あんた、とうとう本気ガチになったのね。いいわ、殺すから。」

とは言ったものの、ポーチから取り出せる状況じゃない。

「くっ、、、!」

私の背後にはプレス機があり私が動けなくなったら、放り込まれる可能性が高い。

汚く、圧死する

そんな死に方、お断りだ。

何とかしてナイフを奪わなければ。

お互いの攻防に変化が訪れる


アカネが手前に引っ張り、つい早苗も負けじと

「、、、あ」

手前に引っ張ってしまったこと

後ろに勢いよく倒れ、機械の角に頭をぶつける


後頭部が、へこんだであろう皮膚の感覚でありながら痛みが感じられない

意識が遠のいでいく

液が首筋を伝う

ガクガクと、体が震えだす

寒気、吐き気、鼓動の早まり、冷汗、あるはずのない鈍痛


動けなくなったら、機械。


これは死肉を、プレスする機械だ。


粘っこいイチゴなんとか。


痛みか、吐き気か、勝手に涙が出てくる

焦点がずれていく


「さよなら」


そう、アカネが言ったような気がして、意識は暗闇の中に消えた。


涙は意味を失っていた


早苗の抜け殻をアカネは運ぶ。

足を引っ張るおかげで床には血の線がひかれてゆく


確実に死んだだろう。


これで、読みが正しいなら

もう一度復活するはずだ。

その前に、切断する


えっさこら、えっさこら。


荷台を引く形で引きずっているものの

中央塔0階の切断機まで、一人で持っていくのはかなりしんどい。


人が死ぬと、21g軽くなるとか言ったのはどいつだ。


「あああああああああ、、」

再生。逆再生、産声

どれにも似つかわしくない


死体が悲鳴を上げるのを聞いたことがあるだろうか。

それはテレビで言うには、肺に残った空気が押しだされるからであり

声が発せられているわけではないのだという


ゆっくりと、早苗を見る

早苗は動いていない。

「、、、っ」

ひゅっと喉が鳴る


ソレがきっかけだったのか


左右の目が、ぎゅるりといびつに動き


アタシを見つめていた


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