おまけ 続編
ウマシカ勝たんかった!!
どうやら、神であるワシのウマシカ投入策は成功であったようだ。ウマシカの元は、異世界で自らに筋肉をつけすぎ、圧死した者の魂。ヤツなら、知の国にいいようにされる
さて、ウマシカが知の国にさらわれた姫を取り戻したことで、世界に平和がおとずれたが、この先はどうなるのじゃ?
もうワシには関係ないことじゃ、好きにせぇ。
✳︎
「姫! これ、待たんか!」
シカ王の説得にも一切、振り向かず。丈の長いピンクのドレスを引きずり、ホース姫は玉座のある王の間を去る。
「ふぅ。姫には困ったものだ」
玉座に戻り、頬杖をつくシカ王。
「結婚相手はウマシカしか勝たんの一点張り。だが当のウマシカは姫を取り戻した後、ひたすら筋トレの繰り返しだ」
「私は私で、ホース姫の結婚相手探しをしては断られるの繰り返し。こんな毎日では説明くさい独り言も多くなるだろう。はぁ」
シカ王が大きなため息をついた、まさにそのとき。
「王になりに来た」
その者は、相変わらず質素な茶色の衣をまとい、しかし以前現れたときよりも更に屈強になった肉体があらゆるところから見えていた。
「そなたは、ウマシカ!」
シカ王が玉座から立ち上がり、屈強な体にも負けぬ大きな声と笑顔でウマシカを歓迎する。
「オレはウマシカ。産まれたての子鹿のようなときから、馬のような強さがあった。そう親から聞いている」
「そうだろう、そうだろう。以前もそう聞いたからな。さて、王になりたいということはつまり」
「そうだ。王になりに来た」
「これはホース姫を呼ばないと。おーい、ホースやーい」
「何をしている」
「む?」
「オレは王になりに来ただけだ。ホース姫は関係ない」
「しかし、ホース姫はこの国の姫。この国の王になるということは、ホース姫と結婚し、私が王を退いた後、王になるということでは?」
「はっはっは。うるせぇ」
「な、何」
「何を言いたいかはわかるが、オレは王になりに来ただけだ」
「む、むぅ。なるほど」
シカ王は玉座に再び座り込み、考える。確かに、自分の望みやホース姫の望みだけでウマシカを姫と結婚させるのはいけないこと。一方で、ただ王になりたいというウマシカの望みを叶えるのはいかがなものかと。
「してウマシカ。そなたはなぜ王になりたい?」
「オレの体が言っている。オレが平和にした世界はいい加減退屈だと。新たな刺激を求め始めている」
「なるほど。では王になれば、退屈ではなくなると?」
「ふん。それはなってみなければわからないが、そのときはきっと王となってトレーニングするだろう」
「ふむぅ。しかし私も知の国にやられた経験から学んだ。あっさり相手の言う通りにするのではなく、疑ったり、交換条件が必要だと」
再びシカ王は立ち上がり、辺りをうろうろしながらウマシカに語りかける。
「どうだろう。そなたを王とする代わりに、ホース姫と結婚してくれないか」
「なんだと」
「そなたはホース姫と結婚し王子となり、私が王を退き、そなたが王となる。どうだ、悪い話ではあるまい」
「そうか……。なら、力づくで王になるしかないな」
「何!?」
「ぬぁぁぁぁぁはぁぁぁぁぁ」
「や、やめろ、何をする」
王の前に足から滑り込み、バンッと
「娘さんを、オレにください」
「な、なんと!」
「さっき、王から聞いた。王になるということは、姫と結ばれることだと。しかし、そのときはまだ、そこに自分の意思がなかった」
「なんと」
「だが、今ならわかる。姫を背負い、帰ったあの日。あの状態でスクワットするのも悪くないと」
そこに、柱の影から話を聞いていたホース姫が入ってくる。
「こらっ! わたくし抜きで、勝手に話を進めるなんて! そこに、わたくしの意思はあるのですか?」
「ホース。聞いておったのか」
王は目を丸くする。ホース姫は続け様に言う。
「ウマシカ様。あなた、あの日言いましたよね。時は流れるもの、動くものだと。でも、わたくしたちの時は、あの日から止まりました。同じことの繰り返し、退屈な毎日。でも今ようやく、動き出したのではなくて!?」
ホース姫は長いドレスを素早く引きずり、未だ王の前で跪くウマシカの前で立ち止まり、同じように跪く。
「わたくしと、結婚してください」
「な、なんと!」
王の目は、大きく開いた後、喜びで細く歪み、次第に涙がこぼれる。
そして姫と二人でウマシカを玉座へと導くと、玉座はウマシカの屈強な肉体からしたら狭く、さらにウマシカの筋肉が喜びで膨れ上がり、圧死した。
かのように見えたが。
✳︎
魂は、何度も繰り返す。過ちは、何度となく繰り返される。ウマシカの魂よ、再び筋肉の塊となり、世界を救え。そしていい加減、力を制御せえ。神より。
✳︎
「また姫を奪われてしまった。今度は奪わないからと言っておったのに。どうしたらいいものか」
城に朝日が差し込む頃。一人の人間が、赤い光と共に帰って来た。
「そなたは、いや、まさか」
「オレはシカウマ。産まれたての子鹿のようなときから、馬のような強さがあった。そう親から聞いている」
おわり。
ウマシカ勝たん! 浅倉 茉白 @asakura_mashiro
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