第526話 憧れ彼女とその元夫 side松方新二

新二『ごめんね、急に。』


鶴田『…なにか用事?』


鶴田舞は俺の学生時代の憧れの娘だった。。

今はシングルマザーの27歳。

ひょんなことから再会して…玲奈さんと3人でよくご飯食べたり…お料理会したり…俺は…先日こっぴどく怒られて…ビンタまで喰らって…。

こないだ玲奈さんが俺カレへ連れて来てくれてから少しだけ繋がりが戻って…。

俺は彼女の家近くの喫茶店に呼び出していた。


新二『…泉ちゃんは?』


鶴田『…今日は仕事だから託児所。』


泉ちゃんは鶴田さんの娘。すっごい可愛いんだ。


新二『…ごめん、そっか仕事だったら仕事場近くが良かったか…!』


俺はこうゆうとこ気が利かない。

先日に申し出でいたく機嫌を損なっている、無駄話してたら帰られてもおかしくない!

俺は早速話を切り出す。




…。




…。




…。




話し終えると鶴田さんはふーってため息を吐いて。

一回頷くと顔を上げて、


鶴田『…私はすごく良いと思う。

…玲奈ちゃんに固執してたでしょ?

よく決断したね。あの男の子の影響なんだ?』


俺は頷く。

鶴田さんは確認するように、


鶴田『でも良いの?本当に。』


俺は迷わなかった、


『ああ、元々そんな未練無いし。

あの日俺死んだのかも。』


鶴田さんはあの頃の様な笑みで、

クールっぽいのに笑うと幼くなるその笑顔で、


鶴田『…でも、良い顔してる。

そう…玲奈ちゃんとあの男の子を…。

本当に良いと思うな。

あの日だってあの男の子を目で追う玲奈ちゃんがね?』


鶴田さんは楽しそうに俺カレでの一幕を話し始める。

あぁ…確かにね。


鶴田『私ね、本当にしんどかった時にすっごい玲奈ちゃんに助けられたの。

あの娘すごく気の利く子でね?

泉が同伴出来るお店調べて、私の話し聞くだけじゃ無くて熱心に聞き返してくれたり…本当に良い娘。

本当に新二くんの妹さんだったら良かったのにね?』

※当時玲奈は新二と鶴田さんをくっ付ける下地を一生懸命に作っていました。


新二『…玲奈さんは俺の義妹いもうとだし。

…ゆくゆくは俺の弟分とくっ付くから。』


くっくっくって喉を鳴らして頬杖つく元憧れの娘。


鶴田『それで?私に相談?』


『だって…弟分や義妹に人生相談なんか出来ないでしょ。

…鶴田さんは真面目でしっかりして綺麗な素敵な女性。

信頼してる人にしか相談できなくて…鶴田さんしか浮かばなかった…。』


鶴田さんはちょっとびっくりした顔で、


鶴田『それはどうも?でも…私愛人居るような男には口説かれたって絶対靡かないよ?』


ふふ!って喉で笑った後、俺の考えに賛成して俺の相談は終わった。

ねえ?どうやってクズな元夫が慰謝料と養育費払ったのか教えて?って聞かれたけど俺はお茶を濁すことに精一杯だった。

…言えないよ…言えやしない…爺やに言われたことを思い出す。


紐田氏についてはこちらから440〜442話参照

https://kakuyomu.jp/works/16817330656200078233/episodes/16818093081854360597



☆ ☆ ☆

紳士紐田の華麗なる生き様


紐田『あー、パチ行くからお金ちょうだい?』


女『は?あんたいい加減働いて家にお金入れてよ…?』


紐田は悪びれる事無く、


紐田『知ってんじゃん?俺が働いても『あの女』に慰謝料と養育費でせっかく汗水垂らして働いたお金巻き上げられちゃうんだぜ?お前だって賛成したじゃん?』


女『でも…本当に全く働かないなんて思わないじゃん…!』


紐田『慰謝料養育費は給料から出さなきゃいけない。

でも、人道的に生きていけなくなるほど盗られない。

…でも一流企業に勤めてた俺が端金欲しさに変なとこで働けないでしょ?』


女『…一流企業の男だと思って奪ったのに…もう奥さんに返品したい…。』


鶴田舞の元旦那…略しては慰謝料養育費を払いたく無い一心でニート生活を送っていた。

元不倫相手の女の元に転がり込み入籍したけど小遣い貰ってぶらぶら…ぶらぶら。

浮気女も籍を入れたもののすっかり立派な粗大ゴミ。

本人はまだエリート意識と自分の男前ぶりに自信満々。

…それだけに元職場で奥さんの方が評価が高くて笑いものになってた事を今も恨んでいた。


捨てきれないエリート意識と自分をイケメンで優秀!ってナルシストなメンタルを支えに現実から目をしらして浮気女にしがみついてるヒモニート。

それが今の元旦。


☆ ☆ ☆

元旦の朝は早い…!

朝からパチ屋に並び、名前は知らないが顔は知ってる常連たちと真面目に並ぶ。

こう見えても意外と元旦はパチが強い。

負けもするがそこそこ勝ってて息が長く遊んでいるしすっからかんになる前に見切れる男。


男『へっへっへ、兄貴乙です!』


元旦『おう。調子どう?』


最近よく話す二十代中ばくらいの腰の低い男。

元旦はこいつを舎弟だと思っている。

なんのかんの元の会社繋がりは切れてしまった。

大学の同期などの知り合いに今の窮状を見せられない。

元旦は(無駄な)プライドの高い男。


男『なんか美味い話し無いっすかねー?』


元旦『有ったら俺が知りたいわ。』


この男変に顔が効いて時々変な仕事を持ってくる。

こないだはよくわかんない運びもの、こないだは工事現場行って名前住所とか記入して身分証見せたら現場監督がハンコ押してくれて…それをイカついお兄さんが居る事務所持って行くだけで5000円貰えた!

違う日はパスポートを取得するだけで5000円!

別に取られたりしないし経費も向こう持ち!

通帳作るだけとか。


明らかにグレー…真っ黒に近いグレー。

でも元旦はもうまともに働ける気概など持ってはいない。


パチンコ打ちながら隣の男が言う。


男『アニキ、またチョロい仕事あるんすけどどうすか?』


元旦『やる!』


連れて行かれたのは…普通の健康診断施設。

企業とか御用達の綺麗な小さめなビル。


男『ここっす。兄貴には健康診断受けてもらいます。』


元旦は不安になります。


元旦『…なんか内臓とか盗られるんじゃ…?!』


男は笑って、


男『内臓は高いっすけど…そしたら普通に生活出来ないじゃないっすかぁ!

…それは最後の手段なんすよ?はっはー!』


元旦『…本当だろうな?』


男『俺が嘘ついたこと無いでしょ?』


まぁ確かに。

綺麗で新しい健康診断の施設。

まさかこんなライトな施設で…。

何かあればすぐ大声出すからな?そう言うと、


男『聴力検査やってるお客も居るっす。大声は勘弁っす。』


健康診断だった…。


元旦『アレなんだよっ?!』


無事出てきた元旦は緊張と緩和でテンションがおかしくなった。


男『はっはー!すいません!ちょっとからかいがいがあってw

兄貴震えてるからw

治験のバイトの前段階なんす。』


治験?ああ、未認可の薬とか?人体で実験するやつっすよ?

は?俺そんな危ない事しないぞ?!

しなくていいんす、その前段階でキャンセルするっす。

すると健康診断だけ受けて、報酬5000円っす。そんな会話が繰り広げられる。


男『治験本当にやったら結構金になるっすよ?』


元旦『…考えておく。』


金は欲しい。でも身体が1番!

楽しく生きるにはお金と健康!

元旦は小人物だからそこはわかってる。

2週間後健康体って診断に一安心。ニートになってから健診なんてうけてないもん。


男はそんな感じでまともじゃ無いけど楽ちんで短時間で小金稼ぎに長けていた。なまじ小金を持つと使ってしまう、使うともっと欲しくなる。


そんなある日…


男『ちょっと大きい儲け話あるんすけど?』


元旦『やる!』


男案内で連れて行かれたのは駅、電車に乗って何処か行くらしい。


男『…ちょっと拘束時間は長いんですけど…べらぼうに稼げます。

まじで。犯罪じゃ無いんで絶対に捕まらないです。』


元旦『まじか?どれくらい?』


男は黙って指で1。


元旦『一万?』


首を振る男。


元旦『まさか10万?』


男『そうなんすー!』


元旦『やるやるー!』


男『明日からなんすけど。景気付けに!どれが良いっすか?

『マグロ』『カニ🦀』『ホルモン』?』


元旦『…迷うな…どれでも良いなら…やっぱ高そうなマグロ🍣かカニ🦀…

今の気分はカニ!』



ぶつん!!

元旦の意識は途切れる。


☆ ☆ ☆


元旦『ふにゃ。』


男『あ、起きたっすか?』


元旦はびっくり、拘束されてる!


元旦『おい!お前!なんでこんなこと!』


男の名前を呼びかけて自分が男の名前を知らない事に気づきます。


男『どうもー!俺、ちょっと言えないスジから依頼された者でして…。

あんた奥さんの慰謝料と娘の養育費払って無いでしょ?』


元旦『金無いんだから払えないんだっつーの!わかんだろ!』


男『…ですよねー。だから依頼されまして?

兄貴にはこれから…カニを獲りに行ってもらいまーす♪』


元旦『…は?』


男はニヤニヤ顔で続けます。


男『コレから船で外国に行って貰います。

そこで北極圏でひたすらカニを獲り続ける漁師生活!

給料はバカ高!危険満載!…事故多発…!』


元旦『俺は行かないぞ!絶対そんなところ!』


男はうんうん頷いて、


男『はいはい♪自筆の現場入場書類♪生命保険加入証♪パスポート♪自筆の契約書♪

全部兄貴の直筆の書類は揃っていますー♪』


あのチョロい仕事が全部…この為の書類作成の為?!

小さいけど簡単な仕事で端した金貰ってた元旦はもうすっかり信用し切ってて…!焦りながら撤回要求しますがもう明らかに逃げられません。


書類の端に給料が出ていて…拘束時間、危険、外国、住み込み、諸々考えられないほどの悪条件ですw

ですが月給自体は良い…むしろかなり良い!


元旦『帰ったら…無事帰れたら金は貰えるんだな?』


男『もちろんすー!』

(もちろん慰謝料養育費に回した余りっすけどねw)


☆ ☆ ☆

男『ってワケっす。』


浮気女『…じゃあうちにもお金が…?』


男『回って来るっす。

…でも慰謝料、養育費回収してからなんすけど…。』


浮気女『はぁ?じゃあうちはどうやって…。』


男は目を細めて笑いながら、


男『子供さんと一緒に自由に暮らせる…それだけでも…

貴女も不倫慰謝料払って貰わなきゃいけないんす。

旦那さんのお金はアテにしない方が良いっすよ?

それとも…仕事紹介されたいっすか?』


ニコニコ笑う男に浮気女は頭を下げて旦那を捜索しない事、少しずつ払うことを約束した。



☆ ☆ ☆

爺や『…という訳です!坊ちゃん!』


新二『…わかった。

でも坊ちゃんはやめろ爺や。』


爺や『がっはっは!そうでしたな!

若社長!これでよろしいですかな?坊ちゃん!』


新二はもう突っ込まないって思いつつ突っ込みをやめられない。

鶴田さんには言えやしない。

…貴女の元旦はアラスカでカニ獲ってるよ。

※強制。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る