第487話 裏ラストシーン

これで終わりでしょ?

後はもう…後のこと。

この後は…青井が俺たちのこともっと知りたいって周ったり、ゴミ捨て当番2ヶ月で青井と話し込んだり…。

ラブなコメなんて無かったよ?

もう夕方だし女性陣は!って田中くんは紅緒さんを伊勢さんに託して帰してた。




田中『いいから!こっち!』


田中くんは難しい顔してるけど…笑いを堪えている顔で…。


田中『こっからは台本無いし、なんなら僕の趣味なんだ。

ラブコメverも作りたいなぁ。』


『…うん?誰に見せんの?』


田中くんは少し上を見て考え込んでパッと閃いたように。


田中『…いつか皆んなに。

承くんと…

…祝いに来てくれた人たちに?』


『ちょっと何言ってるかわからない…。』


田中『いいのいいの!承くんは分からなくったって!

…でも一個だけ。

」かな?

ここは史実と違っていいから!

いい?!よろしく!』


田中くんは嬉しそうに自然に!自然でいいから!

撮影は最小限!みんなモニターで見てるだけ!


なんじゃそりゃ。少しだけ髪型直されて俺は田中くんに中学校へ押し込まれる。


田中『…させて貰ってるよ!

そこだけよろしく!』


玄関入って右手…また体育館?


!!

その手前?


あ!!



☆ ☆ ☆



『立花くん!こっち向いて!』


夕暮れの保健室にふたりきり…。

そうだった…あの頃怪我の治療って…毎日の様に夕方俺の頬を消毒して軟膏を擦り込んでくれて…。

毎日心臓が痛くなるほど…ドキドキしてた。


『…もういいよ。』


『ダメだよ!こんなに腫れて!』


あの頃の可憐で愛らしいJCは今や綺麗で清楚可憐、輝くばかりの美人JK。

女性として完成していく過程の美しさ…毎日会ってるけど毎日綺麗になっていく…!


あの頃は…確か体育祭の準備が始まってて…ガヤガヤうるさかったけども今は夏休みでしかもお盆期間で静かな校内。

…人は居ないが…カメラは視認できるだけで3つあるよ?


あの頃は余裕無くって…香椎さんを直視出来なかったけど…

香椎さんの頬も真っ赤で瞳は潤んでて…否応無しにふたりきり。

…あの頃よりも距離感は…近い。

香椎さんはカメラを無視?全く意識せずに優しい笑顔で俺の頬をさっと濡らしたタオルで拭いて消毒液を含ませたガーゼで丁寧に消毒したあと、軟膏を擦り込む。


『ふふ♪』


鼻唄まじりでご機嫌香椎さん。

可愛いなぁ…!


俺はこの時…『俺と距離を取って欲しい。』って伝えた。

罪を告白して停学処分の青井の男気に応える為、このイジメ撲滅の気風を保つ為にも自作自演マッチポンプで香椎さんがグルだってバレちゃマズイと思ったから。


…それで俺は…煮詰まって…

自己嫌悪?自己肯定感が激減する自信喪失型の厨二病っぽくなっちゃってて…しばらく落ち込んでいたっけ。

そして中2進級時宏介は別クラス、青井、田中くん、佐方くんたちも別クラスで…俺はまたぼっちになっちゃって…香椎さんとも距離を取ったまま。

…あの時、伊勢さんが側に居てくれた。

知り合ったばっかだけど俺は伊勢さんを信頼してて…伊勢さんに思い切って相談したら驚く事に伊勢さんは香椎さんを呼んできた。

…そしてまた親しくなって…修学旅行、体育祭、文化祭って香椎さんと怒涛の様な日々を…。


さっき!田中くんが言ったことがやっとわかった!

…史実通りだと…俺はここで香椎さんに距離を置いて欲しいって申し出る。

香椎さんは怒って拒否したけど俺が頭を下げて頼んで…距離を置いてくれた。

…その事は嫌だったって後日美術室でのおやつタイムなどでチクチク言われたっけ。

…俺は玲奈さんが好き。死ぬほど!一生賭けても良いほど大好き!

この頃も好きだったけど…まだ自分の心の取扱いをわかっていなかった…!

これは映画だし、田中くんの言う通りしても良いのかな?


香椎さんは上機嫌に、


『本当にありがとう♪これできっとイジメ無くなる。

…そうだ!お礼にお弁当作ってあげようか?』


俺は頷き、


『…じゃ一回良いかな?

ガッツリ系のおかずでご飯多めでお願いしてもいい?』


『…えっ…!』


予想と違う返しにビックリする香椎さん。

でも口元が嬉しそうに笑ってて…、すぐに次の言葉を恥ずかしそうに呟く。


『今回のお礼に…どこか一緒に遊びに行かない…?』


『部活あるから日曜日…ラーメン食べたいかな?

その後駅前ぶらぶらしない?』


香椎さんはご機嫌で目を細めてにっこにこ!


『もう!女の子とデートでラーメン屋さんへ行っちゃうタイプなの?』


『…大好きなラーメン屋さんがあるんだよ。

一回連れて行きたいな。』


『…うん、ラーメンも好きだよ♪』


もし…もし人生をやり直せるなら…もう自分から離れたりしない。

この距離を置いてと卒業式に逃げたこと…

漢、漢言うけど俺は決してまだまだ漢じゃ無い。

俺は香椎玲奈が好き、大好き!

わかってた気持ちを今回再確認出来た。


夕暮れの保健室。

痛いほど静かな室内。



そっと、香椎さんが紙を俺に見える様に動かす。




!!!



紙には香椎さんの字で…







☆ ☆ ☆

夕日が差し込む保健室。

オレンジに染まる室内。

憧れのあの娘とふたりきり。


やや窓際、オレンジに染まる香椎玲奈。




『なんでそこまでしてくれたの?』




『…君が好きだから…。』



オレンジに染まる香椎玲奈が真っ赤になってるのがわかる。



『…無理しちゃって…♡』


そっと一歩香椎さんが俺に歩み寄る。

…俺も意を決して一歩すすむ。



…香椎さんが俺を少し見上げる様にもう一歩…!

互いの胸が触れそうな距離…!


胸の鼓動がうるさい!気が散る!

ばくんばくんばくん。

あの修学旅行での山荘の時もそうだった。


目の前に香椎玲奈の顔。

大きな潤んだ瞳に左目の小さな泣きぼくろ。

玲奈さんしか視界に入らない…!


…キス…


それ以外考えられない…!


そっと、


玲奈さんがつま先立ちで背伸びして…


艶々でプルプル形の良い唇しか目に入らない…!







田中『おっけー!!エクセレント!!!』



『『『『…ほおおぉ…!!』』』』


ギョッとして窓の外を見ると!皆んなが凝視して!

ため息吐いてた!!!

あぶな!そうだ!撮影!!



『…惜しかったね♡』


でも玲奈さんはイタズラっぽい笑みでくるりんとスカートを翻して小幡さんのとこへ戻っていった…!


セリフ…俺のあの日の…!

400話 告白 参照

https://kakuyomu.jp/works/16817330656200078233/episodes/16818093078740904920


…なんだろう、この胸の中のざわめき!

悔しい様なホッとした様な損した様な得した様な!

もうグチャグチャで訳わかんない!


…こうして数日に及ぶ映画撮影は終了したんだ…!




☆ ☆ ☆

いつか   side田中透


夕暮れの保健室、オレンジに染まるふたり。

オレンジに染まっても真っ赤になってるのがわかるふたり。


いい!ここまで最高!

過去の失敗(だと思う)たる距離を置こう発言は無くなって、香椎さんのお弁当、お出かけを受け入れた承くん!

こうやってれば今頃とっくにくっついてたであろうふたり!

僕はこの映画を撮るきっかけになったイジメ事件の撮影で伝えたい思いがあって。

承くんと宏介くんへの感謝、青井くんの過去との向き直りって目的の為にもこのふたりの進まない関係を後押ししたい!



そして!きた!ラストシーン!


照れながら香椎さん!最高です!


香椎『なんでそこまでしてくれたの?』


承くん!漢らしい!


承『…君が好きだから…。』


オレンジに染まる香椎さんが首まで真っ赤になってるのがわかっちゃう!

さいこう!


『…無理しちゃって…♡』


ふたりが一歩歩み寄る!

良い…心情的にも…!

…香椎さんが承くんを少し見上げる様にもう一歩…!

互いの胸が触れそうな距離…!


香椎さんがこの頃保健室で毎日承くんの治療してたって聞いてこのシーンがうかんで!これしか無いって思った!

セリフは指定してないけど…すごく良い!



胸が触れそうな二人の距離見つめあうふたり!



1番良いカメラが窓際から写すって言ってあるから香椎さんのポジション取り完璧です!



背伸びした香椎さん、香椎さんしか見えていない承くん!

表情いただき!

これでフィニッシュ!

顔が近づくふたりをアップで写し!

カメラはゆっくり下がる!

最後にカメラは背伸びする香椎さんの爪先を写して…完璧!!



田中『かっと!エクセレント!』


側で見てる映像研究会や青井くんや小幡さんがため息をつく!


小幡さんが金髪をかき上げて、


小幡『…もうちょっとでキスだったのに。』


1番側で親友の香椎さんを見てるから行っちゃえ!って思ってたのかな?


『…これで良いんだよ。ふたりの記念はふたりきりでね?』


小幡さんはハッとして、


小幡『…そうね、野暮だったわ。

ありがと、田中くん♪』


…いえいえ…昨日は失礼しちゃったしね…。

あの後四年ぶりに青井くんに殴られるかと…(冷や汗)

承くんが来て聞いて無いとか恥ずかしかった!ってクレーム来たよ!

でも最後に照れくさそうに、


承『…ありがとう。

なんか色々思い出したよ。』


って(笑)



承くん、僕がさっき言ったことなんだけどさ?これ見せたいって話だけどさ。


『…いつか皆んなに。

承くんと…

…祝いに来てくれた人たちに?』


って言ったんだ。

…いつか承くんが結婚する時にこの1時間ドラマ放映して目を白黒させる承くんを見たいんだ。

きっと宏介くんや青井くんや小幡さん伊勢さんとかみんなが居て…あの撮影でさ?なんて語り合っちゃって…。

その時君と香椎さんは着飾って話に入る事すら出来ないんだ。

僕はそんな場面を想像して笑っちゃう。


この頃僕と佐方くんは君に救われた。

宏介くんとも青井くんとも親友になれたのは君のおかげ。

君にいくら感謝しても仕切れない。

優しくて頼りになる武将の様な熱血漢。

それが僕の知ってる立花承という漢。


今は香椎さんの婚約なんて高校生離れしたとんでもないイベントの真っ最中だけどきっとなんのかんの君のペースに巻き込んで最後は勢いでなんとかするんでしょ?

いじめられてた目立たない少年が学校で1番の完璧女子を射止めるラブストーリーを早く完結させて欲しい。

中1からの大ファンの僕はそう思わずにいられない。

僕はきっといつまでも宏介くんと承くんが大好きで目が離せないんだ。


『人』を撮りたい。

綺麗だったり汚かったりとにかく人の本気本音本当を残したい。

それで生きていきたいんだ。

それが僕が映像を撮りたい理由、夢。


☆ ☆ ☆

あるの書きたいシーンでずっと温めてた場面でした。

追体験して変わらないものと変わったものを確認する話し。

田中くんの思いと夢。

一度やった話しをまたやる様なもので読者さんはどう思うんだろう?

焼き直し回に見えちゃうかな?色々葛藤したシリーズだったよ。

もっと文章力があれば…!って歯噛みして宏介サイドを休んで書いた回になりました。

いつもコメント、♡、☆ありがとうございます♪

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