第488話 そして戻る日常
撮影が終わり夏休みもすっかり後半戦。
俺は少し焦っていた。
撮影で感じた香椎玲奈への思いと今現在の状況の深刻さ。
俺がなんとかするとは言ったもののまだ何も変えられていない現状。
時間が無い、焦りと焦燥が俺を焦がす。
☆ ☆ ☆
撮影が終われば普通に高校生の夏休み。
俺はバイトして、松ちゃんのとこに顔出しての繰り返し。
ひとつ変わった事と言えば…。
俺カレ閉店後。
景虎『第二回!チキチキ!俺カレ新メニュープレゼン大会!』
料理勝負も良いけど…って俺カレの経営最高責任者たる奥様考案のプレゼン大会形式の俺カレ新メニュー大会!採用者には金一封!
景虎さんが燃えている!
松ちゃんも勝負の形が変わっただけで燃えている。
景虎『坦々タンドリーチキン!』
新二『A5牛の濃厚ビーフカレー!』
※A5は最高級の格付け牛肉
女子大生バイト『坦々タンドリーって響き可愛い!』
保利くん『牛…!ぎゅう♪』
奥様『…どっちも美味しいけど…。』
保利くんのキャラが変わってる…!そんなに美味いの?
例え2票入ろうが奥様が是と言った方が勝ちって特殊ルール。
奥様『…坦々は微妙に時期がね…暑い時に辛いものは正しいんだけど…冬のが良いと思うわ。
…A 5 はダメ!美味すぎるけど!コレいくらかかる?』
新二『一食9800円くらい?』
奥様『たわけ!』
新二『美味けりゃ金出すだろ…!』
流石に言わざるをえない!
『出せないよ!
松ちゃん前回も金に糸目を付けない食材使って美味いけど不採用だったじゃない!』
俺の言葉はあまり響いていないのか首を傾げて、でも美味けりゃ客来るだろ?
美味くなきゃダメだろ…って。
貴族様みたいな暮らししてるから…!
景虎さんが笑って、
景虎『新二、これはお前の好きなゲームで言うところの『縛り』だ。』
※縛り…ゲームを楽しむ為に条件を付けたり制約を設けて不自由ながらも自分で難易度を上げ工夫を凝らして楽しむゲームのやり方。
例 人数制限、買い物不可、特定のなにかを使用不可など。
新二『縛り…!』
景虎『うちみたいな小さな店は材料費だってそうはかけれない。
高くて美味いものはそりゃ美味い。
でもうちのメニュー高く無いけど美味いだろ?』
俺も松ちゃん頷く。美味いよ!量も多いし!
景虎『その為には創意工夫と手間を惜しまないってこと!
そのヒントになればってこのプレゼン大会始めたんさ!
新二!だっけ安い食材でなんかうちで出せるメニュー考えてくれよぉ!
出来ない?出来ないのぉ?』
新二『出来らぁ!!』
※あるがこの流れ気に入ってるw
煽り散らかすイケおじに煽り耐性が無い子供部屋おじさんが挑発に乗っていつもの展開!
でもね、帰り道。
新二『絶対俺カレのメニューになるカレー作ってやるよ!』
松ちゃんは楽しそうだった。
別れ際にも、
新二『じゃ、明後日のママに会いに行くの付き合ってくれよな?』
って恥ずかしそうに俺に頼んで来た。
勿論了承する。
そうだ…あんなに都合の良い映画みたいな世界じゃない。
俺は香椎さんの為に…早くなんとかしなきゃ…!
焦っちゃダメってわかりつつも逸る心を抑えきれない。
☆ ☆ ☆
二日後、松方邸。
執事『待ってましたよ、坊ちゃん!』
新二『…若社長って呼べ…。』
執事『がはは!若社長でしたな!坊ちゃん!』
コレはこういうコントなんだよね?
お約束ってやつ。
…結論は前回同様、松ちゃんのママと小一時間お茶して少しだけ話して…
疲れが見えたママにすぐお暇するって流れ。
相変わらずぼんやりした童女みたいな雰囲気のママは息子の松ちゃんを意識出来て居ない。トークも俺が中心で松ちゃんは相槌ばかり。
それでも帰宅中、
新二『前回よりも話せてない?
…承!お前今回!』
俺は今回、松ちゃんママに『新二くんは社会人になるんですよ?』と伝えた。
前回学校の話をするママに『新二くんは大きくなったんですよ?』と伝えている。
松ちゃんも俺の狙いがわかったらしい。
新二『…ひょっとして…次回あたり俺わかるようになるかな?』
…松ちゃんの期待は大きい。
でも俺は引っかかる。
松ちゃんママは事あるごとに口にするのは、
ママ『…しんいちとしんじ…。』
出来れば兄弟で会いに行った方が良いのでは?って思う。
それとなくそう伝えたけど浮つく松ちゃんには伝わらない。
翌週またママのと訪ねる事を約束して俺は松ちゃんと別れて夜道を自転車で走る。
なんとか松ちゃんとママを繋げてあげたい。
実の親子がこのままじゃ悲しすぎる…!
憎しみあってるでも嫌いあってる訳でもない。俺に何が出来る?
帰り道ずっとずっと考えた。やっぱり夏休み中しかない。
時間を捻出出来るこの夏休み中に松ちゃんなんとかして香椎さんを…!
俺はひたすら考えながら自転車で夜を駆ける…!
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