第303話 バレンタイン編 必要な成分【side香椎玲奈】
愛情を…愛情を込めたの?
私の口元は緩みっぱなし。
もちろんおばあちゃん亡くなって悲しい。
しょんぼりしてる。
それでもなお自然に緩む口元!承くんの一言でこの高揚感!
私さっきまであんなにだるくって、しょんぼりしてて、何もしたくなかったのに、どんどん元気!までは行かなくってもちょっとテンションが戻ってきた。
『…バレンタインはさ…。3世紀頃のローマで?
当時のローマ帝国皇帝クラウディウス2世が、愛する人を故郷に残した兵士がいると士気が下がるという理由で、兵士たちの婚姻を禁止。
そんな中、政策に反対し隠れて多くの兵士たちを結婚させていた司祭バレンティヌス。
彼の噂はやがて皇帝の耳に入り、怒った皇帝はウァレンティヌスに、二度とそのようなことがないように、またローマの宗教に改宗するように、と命令しました。しかし、ウァレンティヌスは愛の尊さを説きその命令に従わなかったため2月14日、処刑された、その彼を祭る日だって言ったら、
その彼を祭る『バレンタインデーは漢の日』。』
『漢だね…!』
承くんは漢を語る時と家族と友人を語る時が1番輝く。
しばらくそんな話ししながらふとチョコの作成の話になって、
『玲奈さんにいつもいつも美味しいモノたくさんご馳走になってるからさ?
俺もこんな時だけど少しでも力付けたいな?って思って作ったけど難しいね?』
『そうだね、自分で食べるんじゃ無くって人に、美味しく食べて貰いたい!って思うと味や見た目、色々こだわっちゃうよね。
こないだのカレー美味しかったな。』
265話 仲なおりの味 参照↓
https://kakuyomu.jp/works/16817330656200078233/episodes/16817330669424017428
承くんは照れながら、
『あの時も今日も思った。
毎回玲奈さんが美味しいの作ってくれる時きっと食べる人の事考えて気持ちを込めて一生懸命に作ってくれるから信じられないほど美味しいんだろうなって。』
バクン!
こんな日なのに心臓が跳ねちゃう。
嬉しい…嬉しすぎる…!
承くんは正確に私の意図や気持ちをわかっててくれて?
その上で信じられないほど美味しいって…?
もうキュンキュンするぅ!
しょんぼりから一点テンションが上がり過ぎそうになってまたすぐ↓戻る…。
ふう。でも落ち込みすぎてたのが承くんに会った事ですごく心がポカポカして、ふつふつとバレンタインチョコ作りたいよ!って前向きエネルギーが湧いてくる。
おばあちゃんの事は悲しい。
でも、おばあちゃんは具合が悪くなるまで溌剌としておじいちゃんが大好きな人だった。
チョコ…食べたいな…。
どんなチョコかなあ?
『承くん、チョコ見せて貰っても良い?』
『え?あ?うん、良いけど…?』
玄関横に置かれたチョコを取って来て、まじまじ見つめる。
ピンクのハートをいっぱい散らした女の子デザインの包装紙だけど…?
『望の友達が持ち寄ってたのを分けて貰ったんだよ。』
『そっかあ。じゃ失礼して?』
包装紙を破かないように綺麗に外す、綺麗に包装してるけど包装してもらったのかな?
きっと男の子だから形は丸とか星とか?ハートは無いか?
箱をそっと開ける…。
『ハート!!』
『ごめん!望たちその型しか無くって!』
承くんはごめんって謝るけどハート❤️
そっかあハートかぁ。
嬉しいな、嬉しいな!
『そっかぁ…承くんハート型のチョコくれるのかぁ…❤️』
私はまたニコニコしちゃう。
『あれ?なんか書いてある?』
そのチョコには一言、
これからもよろしくね!
って書いてある。
子どもみたい?ううん、文字通りだよね?
『これからもよろしくね?』
『これからもよろしくね!』
ふふー!そうだよ!
私たちはこれからも…ずっとそうなんだよね?
『そんな大した事書いて無いよ?』
『そうかな?これからもよろしくってとっても未来を感じさせる言葉じゃないかな?』
私はお姉ちゃんの言う通りちょろい女の子なのかもしれない。
だってチョコ一個でこんなに元気出てきた。
『もう食べる?』
聞かれたけど、
『写真とってゆっくりあじわうから後で食べる。
ありがとう!承くん♪』
私はニッコリ笑って、承くんは照れてる。
さっきキッチンへ向かう時に感じた足りない成分なんだろ?
そんなの簡単!
承くん成分だよ!
ちょっとだけ…甘えても良いよね…。
少しだけおばあちゃんの話がしたい。
こてん。
横に座る承くんの肩に頭を預ける。
公園のベンチに寄り添う2人。男の子の肩に頭を預ける女の子って外からどう見えるのかな?彼氏彼女に…見えないかな?
『なっ?!』
『ちょっとだけ聞いて貰っていい?』
『…もちろん。』
私はおばあちゃんの思い出を取り留め無く語る。
長すぎないように、承くんにもたれながら。
承くんはそんなにマッチョってわけでも無いのにガッチリしてて男の子から男の人になりつつあるんだなぁって思った。
おばあちゃんの話しをしてるうちに感情が溢れてしまって私は泣いちゃう。
ふえぇぇ。
承くんは、黙って聞いてくれてちゃんと聞いてるよ?ってキチンと相槌打ってくれる。
泣きだした私に少しオロオロしたあと、
なで、なで、なで…
大きくって暖かい手。
前にも凹んだ時に撫でて貰った事あったね…。
そのなでなでが優しくて、暖かくて私は安心しちゃう。
承くん成分を私はたっぷり補充した。
…大丈夫、また明日から私頑張れる。
しかし、一個だけ気になる事がある…。それだけ最後に確認したの…。
『承くん、永遠から…チョコ貰った?』
承くんはちょっと居心地悪そうに、
『貰った…。』
『…ふーん…。良かったね?承くんチョコもあげたの?』
ちょっと目力強かったかも知れない。
でも怖がるなんて失礼じゃないかな?
『ひぃっ、あげてない…玲奈さんだけ。』
『ふふー!そっかあ♪どんなチョコ?もう食べた?』
承くんは顔を曇らせながら、
『…まだ開けてない。2個貰った…多分デート権券も入ってる…?』
承くんがオドオドしてる…。
私はそんな心の狭い女の子じゃないよ?まして彼女でもないし…。
『…私もチョコ渡したい!
感謝と愛情込めたとびっきりの!』
『ホワイトデーで良いよ?』
『そうはいかないよ!
…永遠のチョコ2個食べるなら私のは4個食べてもらうよっ!』
『…また始まった…!』
『デート権券だって2枚付けちゃうもん!』
『…玲奈さんだからなぁ…。』
承くんは笑いながら帰って行った。
『…これからもよろしくね!かぁ。』
なんか未来を連想させるシンプルな良い言葉って思った。
あんなに沈んでた気持ちが今はこんな軽く、前向き。
承くん成分すごい!
…せっかくもたれたんだから、くんくんしておけばよかったなぁ。
なーんてね?
『おばあちゃんに会わせてあげたかったなぁ…。』
私の呟きは冬の公園に吸い込まれていった。
☆ ☆ ☆
長々続いたバレンタイン編終了です。
お疲れ様でした!
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