第304話 おばけこわい
立花光4歳。通称ひーちゃん。
ひーちゃんお化けが怖い。
外伝 立花家の怪奇現象 参照↓
https://kakuyomu.jp/works/16817330656200078233/episodes/16818023211988234920
先の一件以降、お化けは居る派になったひーちゃん。
兄の承は怖い話が大好き!
姉の望は怖いけど怖い話し好き。
弟の光は怖いから怖い話し嫌い!
おばけ(ここでは幽霊、妖怪をひとくくり)が怖い!
なんなら最近怪奇現象を目の当たりにしたばかり!
ひーちゃんの知る限り1番の力持ちで尊敬する兄ならなんとかならないかな!
『でもね?にいちゃんならやっつけられるよね?』
承『無理だね。幽霊や妖怪は攻撃効かないもん。』
兄ちゃんでも…?!ひーちゃんは驚愕する。
ひーちゃんは姉にすがるように聞く、
『ねえちゃんならぴゅー!ってにげれるよね?』
望はニヤニヤしながら、
望『…お化けには捕まっちゃうな…。』
『ぼく…ぼく…どうしたら…?』
兄の承くんがふと思い出します。
自分の机の本棚の奥の方をがさごそ。
望『えっちぃ本探してるの?そこじゃ無いよ?』
『は?違う!』
物持ちの良い立花家ならではの、子供の頃承が持ってた本は綺麗なモノは保管されてます。
昆虫図鑑や恐竜図鑑、絵本はもうひーちゃんに譲られましたが、小学生の前半頃の本の中から取り出したのは…?
承『あったあった、妖怪図鑑!水木しげ⚪︎先生の会心の力作!
はい、ひーちゃん。』
ぽん、とひーちゃんの手に妖怪図鑑が手渡されます。
近代の妖怪ウオッ⚪︎とか明るくポップな感じは無い。
ヌラァとかおどろおどろしいとかそんな感じの妖怪のイラストと説明文が書かれてる逸品。
『…ぼくにはまだはやい…。』
兄が譲ってくれる一品をひーちゃんは辞退します。
望はニヤニヤしながら、
望『…でも妖怪を知らなきゃ妖怪に会った時どうして良いかわからないんじゃない?』
『…ちょっとずつ、よんでみる…。』
兄と姉が居る時限定。
そろそろってページを開く…。
『…。』
なんとも言えない表情で小さく開いたページを音読して、1ページ読んだらパタンと閉じて兄か姉にピタってくっつきます。
((…うちの弟可愛い。))
兄も姉もひーちゃん大好きすぎです。
さて、その日、また次の日読み進めるうちにひーちゃんは妖怪図鑑にハマり初めます。
図鑑を開き、しっかり隅から隅まできちんと読むようになります。
『ねえちゃん、ざんにんでどうもうってなぁに?』
望『残忍?獰猛?…すっごく悪くて優しくなくて酷い?』
次の日。
『…にいちゃん、せんどうくんににてるひとがいる…。』
承『ぷふー!!!』
兄は飲んでた緑茶を吹き出します。
妖怪に逃げ惑うヒョロイメガネの青年が友人の仙道晃くんにそっくりだったからです。
仙道くんは水木しげ⚪︎先生の画風です(笑)
☆ ☆ ☆
『…ぼくはようかいだいすきだなぁ…。』
ひーちゃんはちょっと虚な瞳でつぶやきます。
毎日一緒に寝るようにせがむひーちゃん。
心配になった兄はひーちゃんに問いかけます。
承『ひーちゃん?どうしたん?怖いん?』
『いいようかいもいる…でもわるいようかいこわい…。』
兄は反省します。
確かに早かったかも?
承はひーちゃんに悪い妖怪は大体昔に退治された事。
妖怪は昔神様だったり、何かの化身だったり、人間の過ちを指摘する存在だと。
昔から伝わる伝承や物語、夜世界の住人だけど付き合い方があるんだよ?
って伝えます。
ひーちゃんはホッとした様子で、
『なかまのふりしようとおもってようかいだいすきっていった。
いいようかいはともだちになりたいな。』
承『ひーちゃんみたいに優しくて純真ならお化けとだって友達になれるだろうね。』
『…おばけはちょっと…。』
望は横で寝転がって笑って話しを聞いてます。
ちょっと笑いながら、
望『あー、ひーちゃん可愛い❤️』
ひーちゃんはちょっとムッとします。
子供扱いが嫌いなひーちゃん。
姉ちゃんに抗議します。
『ねえちゃん!わるいようかいこわいんだよ?』
ひーちゃんの必死な様子にちょっと半笑いで望はいなします。
望『ふふ。お化けなんて本当は居ないんだよ?』
『いるよ!ほんとうにいる!』
科学的には望の言う方が正しいのかもしれない。
ただ、ひーちゃんはこの数日妖怪の本を読み、恐れ、自然には人間の力の及ばない何かが居る。それを肌で感じたひーちゃんはいつもは姉ちゃんの言う事に納得するのに今日は譲りません。
自分の言う事に頷かない望はひーちゃんを挑発します。
望『えー?そんなに妖怪図鑑怖かったの?』
『…ねえちゃんはこわくないの?』
望『姉ちゃんだってもう14歳だよ?もう2ヶ月で15歳だよ?
この21世紀に…。』
やれやれって顔をする姉。
ひーちゃんは怒るかと思いきや。
『そうなの?!じゃこわくてよめないページよんでー!』
しょうがないな…。
承がスマホをいじっていると隣で望がひーちゃんに妖怪図鑑を音読してる声が聞こえてて…。
望『牛鬼(うしおに)…残忍で獰猛人を喰い殺す…まじ?』
『…ごく。』
ひーちゃんはひとりで読めないほど怖かったページが読めてすっきり。
望『輪入道(わにゅうどう)…会うと病気にかかる?どうすりゃ良いの?こんなの…?』
『でしょ?でしょ?』
望とひーちゃんの熱心なディスカッションにくすりとしつつ、
疲れた兄ちゃんは眠くなっちゃいます…。
うとうと…。
気付くと寝てた兄。
妹と弟も寝落ちして図鑑は足元。
ひーちゃんは気持ちよさそうに、望は寝苦しそうに寝ています。
承(寝る前に読む本じゃ無いだろ?)
クスッと笑って兄は可愛い妹弟に布団をかけて常夜灯だけ点けて自分も眠ります。
…。
…。
…。
…。
きゅっ!
承はびっくりして飛び起きます!
自分の左横にひーちゃん、その左横に望が寝た。
さっき布団かけたから間違い無い!
右に気配?何かが!
それは髪がボサボサの女が這いつくばってる光景!
流石に承は悲鳴が出そう!
望『…にいちゃん…つめて。』
妹の望です。
音も無く這い寄って来たのは妹の望!
承『なに?超ビックリしたわ…!』
望『…だって…妖怪エグい…目を瞑ると牛鬼が出てくる…。』
承『お前…お化け居ないってあんなに言ってたのに?』
望『…居ないよ!そんなの!
いいからそっちに詰めて!』
望は涙目でぷるぷる震えています。
望は承をつめて真ん中に置いて、自分も腕枕で寝かせろって要求。
承は突っぱねようとしましたが望が涙目なのでため息ついて腕枕します。
…両手腕枕だと寝返りも打てずけっこう苦行です。
…。
…。
『…にいちゃん…。にいちゃん。』
今度はひーちゃんです。
ひーちゃんは時々おねしょしちゃうデンジャラスボーイです。
今日はおしっこセンサーが発動しました。
『…にいちゃん、おしっこ…。』
承『…うん。』
立花家は古いので階段が急なのです。
急いでる時,兄姉はひーちゃんを抱っこかおんぶで一階へ下ろします。
トイレは一階へ降りたところに二つあります。
洋式と和式。
半分寝てるひーちゃんを抱え上げ布団から立ち上がる兄。
望『…ふにゃ。おトイレ?あたしも行くぅ…。』
目をこすりこすり望ちゃん。
寝ぼけてふにゃふにゃ望は大層可愛らしく兄は寝てなって優しく声かけます。
ううん、あたしも…まだ起動してない望に対し、
『おしっこでる…!』
こっちは
ひーちゃんを抱え上げ一階のトイレへ向かいます。
モコモコズボンを下ろして、洋式に座らせ兄はトイレから出ると、
とん、とん。
望が降りて来ます。
望『…置いて行かないでぇ…。』
望は香椎さんの影響で寝る時半袖短パン。
兄の感覚では足出しすぎじゃ無い?って思うほど丈短い。
それに承の新しいカーディガン(長め)を羽織ってます。
(俺の前のカーディガンどこへしまったんだろ?)
※玲奈さんが毎日愛用してます。
望は完全洋式派なのでひーちゃんが出るのを待ちます。
待つ時間もアレなので承は和式で用を足します。
承が出るとひーちゃんがもう出てて、トイレから、
望『兄ちゃん?ひーちゃん?待っててね?…絶対置いて行かないでね?』
…置いて行けって事か?
承はひーちゃんを抱いて階段を上がります。
後ろから抗議の声が聞こえる気がしたけど眠いし寒いしもう布団に帰りたい。
兄弟はうとうとしながら布団に入り、
『さむいね?』
『寒いな?』
お互いにくっつきながら再び眠りにおちます…。
ばんばんばん!
荒い音を立てて望が部屋に飛び込んできます!
望『待っててって!言ったでしょー!』
『にぇむい…。』
『れいにゃさ…』
『…ふぁっく。』
望はひーちゃんと承の間をこじ開けて真ん中に収まりました。
『だって…怖いんだもん…。』
兄弟に挟まれてやっと望は安眠する事が出来たのでした。
望『…おばけこわい。』
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