第1話 頑張りなさい
これは、5人の男の愛と正義の話
「ウギャーーーーーーーーーーー!」
に、これからなる予定の話。
「おい!誰だ、ここにマネキン人形置いた奴は!しかも3体。
ただでさえ5人でぎりぎりの部屋なのに、身長約180センチのマネキンが3体なんて、炊飯器に顔を突っ込むようなもんだぞ!」
「うん、ぜんぜん例えになってないから、なに?炊飯器に顔突っ込むって、やめて。」
朝から騒がしいのはいつものことのようで、呆れた顔でセナが反応する。
部屋に置かれたマネキンは、洋服屋にあるようなマネキンではなく一体ずつに
赤・青・黄に染まっている、ヒト型信号機のようだ。
「あっそれ置いたの僕だよ、ごめんね脅かしちゃって。」
店の入り口からひょっこりと現れた少年に、2つの視線が合わさる。
「お前だったか。お店に、物を置くときは一声かけなさいみち。」
みちと呼ばれた少年が俯きながらはるかにもう一度謝ると、でもねと話し始めた。
「とうじ君に、お店に明日カラフルできゃわわなマネキンが届くよって、皆に伝えてほしいって言ったはずなんだけど…。」
えっそうだったの?とセナが反応する。
「少なくとも僕は聞いてないよ、はるちゃんも聞いてないみたいだし。」
はるかも頷く。すると階段に繋がる扉が開き、とうじが出てきた。マネキンに目線が動く。状況が理解できたようだ。
「あっ…。すんません。」
常人が見たら反省の色が見えない顔をしているが、何年も一緒にいる仲だからなのか少しだけ申し訳ない顔をしているのがわかるようで、はるかも拳を握るだけに留めた。
「もういいとうじ、こんなことでカッとなった私も悪かった。しかし、気を付けるんだな。」
「僕も次はもっとわかりやすく伝えるね、とうじくん。」
「俺もごめんみっちー。」
「まぁ 僕は何にも困ってないけどね、朝からはるちゃんのビビり顔見れて満足だったし。」
と、ヘラヘラした顔でセナがしゃべる。
そんなこんなで【お店】の開店時刻が迫る中、1人だけ来る気配もない人間がいた。
「そういえば、かすみさんがまだ来てないですね。あと10分で、お店開けなきゃなのになー。」
と、みちが辺りを見回す。
すると…。
ドサッ!と何かが倒れる音が聞こえた。毛布にくるまりながらもぞもぞと動く物体に心当たりしかない4人は、呆れながら近づいて行き、
はるかが強引に毛布をはいで、すやすやと眠るもぞもぞの正体を起こす。
「かすみさん、起きてください。あと10分で開店ですよ。」
どれだけ体をゆすっても起きないかすみにとうじが
「バケツの出番か?」
と話しかけるとすぐに目が開き、怯えたようにはるかの後ろにもぞもぞと隠れて
「バケツ 嫌」と言った。
「かすみさん、おはようございます。今日も張り切っていきましょう!」
こぶしを高く挙げているみちの真似をして、おーっと笑顔で答えた。
「気合があるのはいいことだけど、さっさと支度してきなよね。」
セナがかすみのほっぺたを引っ張りながらうりうりとする。
うん。と言って洗面のほうにパタパタと小走りで向かいパタパタと戻ってきた。
「全員揃いましたね。」
「それじゃあ、探偵所キリカ 開店!」
探偵所はつづかない 巴ミロク @moon-frower191024
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