同じ馬車なのかよ!

 俺は領主様に会うのは二日後にしてくれとお願いした。

 すると、すぐに了承の伝言を持った使いが来て、二日後に歓迎されるらしい。





 そしてあっという間に二日が経ち、領主に会いに行く日になってしまった。

 ……俺は二日間の間何をしていたかと言うと、特に何もしていなかった。……なんならまだ二日前に目覚めた時にいたベッドに居たりする。

 いや、これはしょうがないと思う。だって、ここにいる限り三色飯が出てくるし、働かなくていいんだ。……まぁでも、ずっとここにいるつもりは無い。この二日間だけのつもりだ。……だって飯が出てくるのはいいんだけど、おまけ感覚で飯の度に主人公も出てくるんだよ。

 まぁとにかく、主人公が出てくること以外は最高だった。

 ちなみにだが、領主の呼び出しから逃げることは考えてない。……だって貴族だもん。後が怖いよ。

 それを言ったらこの主人公だって貴族なんだろうけど、こいつの場合は一緒にいる方が権力なんかよりよっぽど怖い。


 そんなこんなでお迎えが来た。


「リヒト様、お迎えに参りました」


 派手な馬車でのお迎えだ。


「わざわざありがとうございます」

「いえいえ、街の英雄様に迎えを出すのは当たり前です」


 ……この二日間で英雄というのを否定するのは諦めた。

 だって、否定する度に俺の好感度が上がっている気がしてならなかったんだよ。もちろん主人公のだ。

 いや、俺の自意識過剰で気のせいなら全然いいんだよ。でも、気のせいじゃない気がするんだよな。……自意識過剰ってのは好意がある人にする行為だと俺は思っている。そして俺は主人公に対して好意があるのか? 答えはすぐに出た。無い。一切無い。むしろ関わりたくないと思っている。

 だからこそ、俺は英雄と言われるのを否定しないことにした。……ただ、肯定したらしたでもし俺が英雄じゃないとバレた時に怖いから、肯定もしていない。

 ほんとは馬鹿みたいに肯定して、自慢することで主人公の好感度が下がりそうだからやりたいんだけどな。


「足元をお気をつけください」

「はい」


 馬車に乗り込んだ俺はチラッと後ろを見た。

 すると、主人公がいた。……まさかだけど、同じ馬車に乗るのか? ……だとしたらこれはもしや俺が手を差し伸べるのを待っているのか? そういうエスコートがあるって聞いたことあるぞ。……よし、気がつかないふりをしよう。……これで好感度が下がったら万々歳だな。


 俺が気がつかないふりをしていると諦めたのか、普通に馬車に乗ってきた。

 ……やっぱり同じ馬車なのかよ!


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鑑定スキル持ちの俺はある日倒れている主人公を見つけた〜主人公の近くにいたらやたらと事件に巻き込まれるので俺のことは放っておいてくれ〜 シャルねる @neru3656

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