セカンドライフ~今日は何しよう

クースケ

第1話 セカンドライフ


「いらっしゃいませー」


遡ること数時間前 私は定年退職を迎えた。


「部長!待ってください」私を呼び止める声に振り返ると

私の直属の部下である石崎 歩が立っていた。

「うぅ、い 今までありがとうございました。俺、安藤部長のおかげで」


「そんな顔、するんじゃない。仕事頑張れよ。」


花束をもらい こうして私の社会人人生は幕を閉じた。


「部長、この後ご予定空いてますか?送別会とかどうですか?」


「いや遠慮しとくよ。若いもんたちで楽しくやってくれ」


石崎 歩はしゅんとした表情で

「…そうですか、残念ですがわかりました。今までお世話になりました

お元気で」


「おう、お疲れ」


長年お世話になった部署から出ると、

いつも通ってきた廊下が目に入ると

不思議と哀愁が漂っているように感じた。

(長年通ってきたこの道も今日で最後か。最後はこんな気持ちになるんだな)

男は涙もろい方ではなかったが、


いままで抑えていた熱い気持ちがこみ上げ目頭を熱く濡らし

どこか悲しげな気持ちになった。


無音の廊下に響くのは男のどこか悲しげな泣きじゃくる音のみで

どこか切なく感じた。




私はタクシーに乗りその場を後にした

ノリが悪い部長だと皆に思われただろうか?


思い返せしてみれば

果たして皆にとっていい部長でいられただろうか?


甚だ疑問には感じたがほっぺを「バシンッ」と両手でたたき

気合を入れなおし

今はただセカンドライフを楽しむことにした。



仕事場という戦場を乗り越え

会社を後にし彼の足が向かったのは


現役時代 鬼の安藤部長と呼ばれた

彼には似つかわしくない場所だった。


その男、名を安藤猛

高校から働いた〇〇株式会社という会社で

努めはじめ早40年

思い返せばいろいろなことがあった。

部下に恐れられ 後輩の誘いも先輩の

誘いもすべて断ってきた彼は


いつしか誘われなくなっていた。

無趣味と思われていたに違いない

   

仕事という戦を乗り越えキャリアを積んでいった彼は

欲しいものはすべて手に入れた

冨 名声  

いつしか貫禄も出て

戦士の顔になっていた。



そんな彼だが飢えていた。


飢えに飢えていた。


そう、、癒しに

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