白夜に舞う

岸亜里沙

白夜に舞う

これは、少し前に、霊感のある私の友達が話してくれたお話。


私はその日、桜子さくらことカフェで、タピオカドリンクを飲みながら、ざっくばらんな会話をしていました。

そして暫くして話題は、私の彼氏の話に。


「ねえねえ、こずえの彼氏の写真見たい。見せて!」


「えーっ、恥ずかしいよぉ」


「いいじゃん。少しだけ!」


「もー、分かったわよ。ちょっと待って」

そう言って私は、彼氏と二人で撮ったケータイ写真を桜子に見せました。


「でも、なんか不思議なんだよね。私、彼の事全くタイプじゃなかったんだけど、初めて会った時から好きになってて。一目惚れだったのかなぁって」


「やっぱりね!」


「えっ、何がやっぱりなの?」


「だって梢の守護霊と、彼の守護霊がかれ合ってるんだもの」


「どういう事?」


「俗に言う一目惚れって、守護霊と守護霊が、引き寄せ合う事によって起こる事があるの。だから、全くタイプじゃなかった人を好きになるのは、これが原因なの」


「えっ、じゃあ、彼を好きになったのは、私の感情ではなく、守護霊が影響を及ぼしたって事?」


「そう。写真を見て分かったわ。梢の守護霊が、彼の守護霊を好きになったみたい。だから梢と、彼を近づけようとしたの。そうすれば守護霊同士も近くに居られるしね」


「でも、守護霊って感情を持つの?」


「ごくまれにね。守護霊同士が良い関係なら、二人の相性は最高になるわ」


「じゃあ私と彼の相性は良さそうなの?」


「ええ!凄く!」


彼との相性が良さそうと言われ、私は嬉しかったけど、守護霊の都合で私は利用されただけなのかと思うと、操り人形みたいで嫌だなとも思った。


「私の守護霊って一体誰なの?」

私は桜子に尋ねた。


「そうね、見た感じ、例えて言うなら、マリー・アントワネットみたいな」


「マリー・アントワネット?守護霊って亡くなった私の身内とかじゃなくて?」


「よくおじいちゃんとかが守護霊です。みたいな話も聞くけど、実際は違うわ。だって梢が産まれた時は、おじいちゃんまだ生きてたでしょ?」


「そうか」


「だから、人それぞれ守護霊は違うの。有名な人物だと、今のロシアの大統領、プーチン大統領の守護霊は、アドルフ・ヒトラーだったり」


「あぁ、なんとなく分かる気がする」

桜子の話に、私は思わず吹き出しそうになった。

まさか守護霊トークで、桜子とこんなに盛り上がるなんて、予想外だ。でも私は、最後に桜子にどうしても聞いておきたい事があった。


「ひとつ教えて。私の守護霊が恋した、彼の守護霊はどんな人なの?」


「宮本武蔵」


「・・・へっ?」


「彼の守護霊は、宮本武蔵よ」


「ははは!それじゃ、今、マリー・アントワネットと、宮本武蔵が付き合ってるわけ?」


「うん。まあ、そうなるね」


「絶対合わない二人でしょ?」


「分からないよ。意外と上手くいったりするんじゃない?恋愛なんて、そんなものでしょ?」


そう言って桜子と私は、二人で笑いあった。



結局、恋って、不思議です。

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白夜に舞う 岸亜里沙 @kishiarisa

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