二章 その後、今の状態(仮)
第10話 記憶のバリア
中学を卒業し、希望通りの高校に通うようになった。通っている高校は学校柄男女比率が極端で、男子に偏っている。僕にクラスは三年間クラス替えが発生しないからずっと暮らすメンバーは固定。固定なだけあって友人関係はそのままの事が多い。
高校に入学する頃には心の修復はほとんど終わっていた。だけど、もう中学の時のような癒しは無い。高校でもいじめが起きてしまったら、流石に修復できないという確信があった。
大体この時の心の状態のイメージはこんな感じ。
いじめられた時の「悲しみ」、「恐怖」などの負の感情の塊のボールに、Kさんたちと過ごした時に得られた「楽しい」、「幸せ」の記憶のバリアで分厚く覆っているようなイメージ。
負の感情が外に漏れださないようにした。だけど、記憶のバリアもそう長くは維持出来なかった。
一年生の時に美術の授業の時にさっき書いたイメージを絵にした。その完成した絵を僕の過去の事情を話してある友人に見せたら、その絵の意味が伝わると言ってくれた。描いてよかった。
一年生の頃は負の感情が外に漏れだすことはほとんどなかった。まだ記憶のバリアは分厚く抑え込んでくれていた。だけれど、二年生に進級して、日が経つにつれて少しずつ記憶のバリが薄くなってきた。
薄くなってしまったことで、負の感情がバリアの薄いところから外に出てくることが多くなった。外に出てくる時はそれを起こすトリガーが存在する。そのトリガーが引かれると、ドッと負が押し寄せて表に出ている心を攻撃していく。すると、過去の襲ったあの恐怖で過呼吸になったり、上手く声が出なかったり。そういうことが何回か起きた。
そこで、負が押し寄せてきてもいいように、一つ工夫してみた。
押し寄せてくる前に、簡易的に表に出ている心を、自分の意志で疑似的にいじめられていた頃の心に切り替える。こうすることで恐怖から受けるダメージを減らした。ただし、これをした時の反動は大きかった。疑似的に変えた心から、表の心に切り替えるのに数時間かかってしまう。それまでは無口になったりするし、上手く思考が出来なかったりと、デメリットが多かった。
所詮、記憶で作ったバリアだ。いつかは忘れてしまうだろう。だから、この、
【『いじめ』は『人』を、『人生』を破壊する。そして、願い続けた『願い』は叶わない。】
を作った。
この先の未来、忘れてしまうこともきっとあるだろう。忘れてしまった時、これを自分が読んで少しでも思い出してもらいたい。まだ記憶があるうちに覚えている事全部書いてしまいたい。
未来の自分がこれ読んで何を思うか分からないけれど、少なくとも今はこれを書いて良かったと思っている。
高校の記憶でも負を抑えるバリアを作れないかと考えたことが何回かあるのだけれど、どうしても無理だった。高校の記憶をバリアにするのはできないらしい。それほど、今バリアとなっている中学の時の記憶が強いという事なのだろうか。そうであると信じたい。
バリアに成れないからって高校の生活がつまらなかったわけでは無い。高校は高校で勿論楽しかった。
『いじめ』は『人』を、『人生』を破壊する。そして、願い続けた『願い』は叶わない。 オララオ @LAO321
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