第47話「終焉の魔女」


―学園寮・詩音の部屋―


「最強の魔女になるにはこれしかないよね」


最強の魔女になれば神に利用される。

でも最強の魔女にならなきゃ神は倒せない。

詩音は色々考えた結果、最強の魔女になる道を選んだ。


「ブック!この魔術書に宿る魂よ、顕現せよ!」


すると金髪の美しい少女が現れた。


「これが古代世代の最強の魔女、創世の魔女ユリィの魂・・・」


「私に何用か娘よ」


「簡単な話よ、あの神をぶっ倒す方法を教えて貰おうと思ってね」


「簡単な事、私と奴の力は互角だ。貴様が私を使いこなせればよいだけの事」


「でもそれじゃあダメなのよ。術者が私のままじゃあ精神操作されちゃう」


「ならどうする気じゃ?」


「あなたの魂と私の魂を融合する」


「なっ!?それじゃあ私の自我がなくなるではないか!ダメじゃダメじゃ!」


「ごめんね、もう決めたの」


「やめろおおおおおおお!」


「ブック!魂よ、融合せよ!」



「シオンさん、どうされたのですか!?」


詩音の部屋で轟音が鳴り響き黒煙が上がっている。

シルフィーヌは部屋に駆け込むと風の魔法で黒煙を晴らす。

するとそこにはいつも通りの詩音がいた。

違うとすれば雰囲気だろうか。

いつもの詩音とは違うと思ったシルフィーヌは思わず尋ねた。


「あなた、誰ですか?」


「私は地球の、いえ終焉の魔女よ」


―学園校門


学園の校門には裏生徒会会長のアリスが立ち塞がっていた。


「アリス様、そこを通してください」


「私を倒せない様では導きの魔女様なんて到底倒せないわよ」


「では失礼します」


「天よ!」


アリスが叫んだが何も起こらない。

アリスの魔術は無効化されていた。


「・・・・・・」


無言でアリスの横を通り過ぎていく詩音。

詩音が通った瞬間、得体のしれない何かが通った様な違和感を感じたアリスは冷や汗をかいていた。

そして今度は詩音の前にレオナが立ち塞がる。


「シオン、どうしても行くのね」


「はい。止めるのならお姉様と言えど・・・」


「逆よ。行くというのなら私を連れて行きなさい」


「危険なんです。死ぬかもしれませんよ」


「大切な妹を見殺しに出来る訳ないでしょ」


レオナの決意を汲み取った詩音はレオナの同行を認め、導きの魔女の洞窟に向かった。


―導きの魔女の洞窟・最深部


「やあやあ待っていたよ生徒会長さん。ついにその魔術書を使いこなして最強の魔女になったようだね」


「まわりくどい説明はいいわ。私と決闘しなさい」


「決闘なんて必要ないさ。必要なのは君の力だけ。さあユリィ出ておいで」


しかし何も起こらない。

詩音の持っている魔術書は返事ひとつしない。

無言のままだ。


「貴様、ユリィに何をした!」


「あの魔女なら私の魂と融合してるわよ。だから呼んでも無駄」


「小癪な真似を・・・!でもアストラル・ドミネーションは最強の魔女さえいれば完遂できる!」


「私があなたの言う事聞く訳ないでしょ。ユリィと融合した私に精神操作も無駄」


「じゃあこういうのはどうかな?転移!」


「!?」


レオナが導きの魔女の隣に転移する。

導きの魔女こと神はレオナを抱き寄せた。


「ほうら、愛しのお姉様が大変な事になるよ」


「やってごらんなさい」


詩音はレオナが人質に取られたというのに余裕の表情を見せていた。


「じゃあお望み通り・・・!?」


神が巨大な大剣を取り出しレオナに向ける。

それでも詩音の表情は崩れない。

それを見た神は激高してレオナの首を切ろうとした。

しかしレオナにかけられた防護魔法がそれを完全に防いだ。


「くっ、なら!」


神は消えた。

正確にはその肉体を捨てアストラル界(精神世界)に魂だけ逃げたのだ。


「追いかけるわよ、シオン!」


「はい、お姉様!」


二人は魔術で魂だけ肉体から抜け出すと、アストラル界(精神世界)に移動した。


―アストラル界


ここは異空間、アストラル界である。

精神世界であり、精神体のみが存在できる場所だ。

その空間は無であり、自然も建物も存在していなかった。


「逃がさないわよ、神もどき!」


「どいつもこいつも私を馬鹿にして・・・!」


「ところで今更聞くけどどうしてこんな計画が必要なの?今のままで十分じゃない」


神はやれやれといった顔つきで返答した。


「神は一定数の人間が死ぬと代替わりしないといけないんだよ。だから精神世界で永遠に生きていて貰えば私は永遠に神でいられる」


「そんな自分勝手な理由で・・・!」


詩音は伝説級の氷剣を精製し構えた。

そして神は先程の大剣を構えた。

ただ先程と違い大剣は炎を纏っている。


「煉獄の炎でその魂を焼き尽くしてやる!」


「氷剣で全部ぶった斬ってやるわ!」


二人は互いに突撃し斬りつけあった。

そして勝負は決まった。


「神である私がこんな小娘なんかに・・・」


「小娘じゃない、地球の魔女よ!」


先程の攻撃で斬りつけられたのはユリィの魂だった。

斬りつけられる瞬間魂を分離させ身代わりにしたのだ。


「さすがね、シオン」


「ええ、ありがとうお姉様」


「ところでシオン、そろそろ物質世界に戻らない?」


「ああ、そうですね。それじゃあブック!・・・てあれ?」


魂の分離と結合、そして精神世界との行き来は古代の高等魔術なのだ。

ユリィの魂亡き今あの古びた魔術書を使う事は出来ない。


「どどどうしましょう、お姉様!?」


「じゃああの小さい魔女さんに頼みましょう、ユリィ様」


「ぐぬぬ、バレておったか」


そこには手の平サイズの小さなユリィがいた。

ユリィは煉獄の大剣で切られる瞬間に魂を分割したのだ。

一応二人を元に戻す位の力は残っているが、勝手に魂融合されて、身代わりにまでされたユリィが承諾する訳も無かった。

が・・・


「じゃあ喫茶ポワレでスイーツ永久食べ放題でどうです?」


「乗った!」


詩音の提案に乗ったユリィ。

いくつになっても女の子の弱点は甘い物と相場が決まっているのだ。

こうして詩音とレオナは元に戻る事ができた。

そして目の前には魔女や魔女候補生達、そして書記のマリアがいた。


「みんな連れて来たわよ!導きの魔女様はどこ!?」


どうやらアリスが援軍を連れてきたようである。

しかしそれはもう無用であった。

そして・・・


「お姉様、私決闘のご褒美が欲しいです」


「なんでも良いわよ。言ってごらんなさい」


「あの、その、キスを・・・」


「え!?」


驚くレオナ、当然である。

しかしレオナは快諾してくれた。


「一度だけよ?・・・」


「お姉様…」


「シオン…」


レオナは詩音に皆の見ている前で頬に口づけをし、二人だけの世界を作る。

二人はこの時が永遠に続けばよいと、神様のいないこの世界で祈った。





現代最強生徒会長、転生し魔術を極め最強の魔女になる~百合の世界でお姉様と甘々な姉妹生活を目指します~-完-

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現代最強生徒会長、転生し魔術を極め最強の魔女になる~百合の世界でお姉様と甘々な姉妹生活を目指します~ 勇者れべる1 @yuushaaaaa

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