コーチの葬式
久石あまね
コーチの葬式
山川コーチお世話になりました。
天国でゆっくり御休みください。
本当にありがとうございました。
大学一年の夏。
小学校時代の少年野球チームのコーチが亡くなられた。胃がんだったそうだ。
二階堂達也は数珠を汗ばんだ手で握りしめ、葬式会場の椅子に座っていた。参列者は100人近くいた。皆、神妙で悲しい顔をしていた。山川コーチは水産高校の教師で、その水産高校の生徒たちも葬式に来ていた。
達也は少年野球チーム時代のことを思い出していた。達也は2年のとき野球チームに入団した。入団した当初は、バットにボールは当たらなく、投げてもめちゃくちゃな方向にボールがいった。僕たちの代は8人いた。みんな下手くそだった。そんな僕たちを山川コーチは熱心に楽しく指導してくださった。
葬式にはかつての少年野球チームの先輩や同級生も来ていた。みんな驚くぐらい背が高くなっていた。彼らを山川コーチがみたらびっくりするだろうなと思った。会場には山川コーチの家族写真が貼られていた。あたたかい家庭を連想される家族写真だった。
焼香をするとき、山川コーチの顔を見た。安らかな顔をされていた。山川コーチの明るい指導を一気に思い出した。山川コーチみたいな前向きな大人になりたいと思った。
葬式は終わり、達也は会場から出た。
達也は帰りに居酒屋で豚汁を飲んだ。そのとき、少年野球チームの新年会で出された豚汁を思い出した。たしか山川コーチは豚汁を三杯していた。山川コーチの豚汁を飲んでいるときの顔を思い出し、達也は涙を流した。
コーチの葬式 久石あまね @amane11
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