少年の靑萅

ねむねこ

よくある日常

 ピッピッピ…

そんな電子音が僕の耳から脳に直撃するかのように聞こえる。

僕は瞼を開ける。病室だろうか、体は動かない。

体を拘束されたような金縛りにあってしまっている。どうしたものか

そう思ったのもつかの間、次に瞬きをすると金縛りは解かれており肋骨と胃らへんに少し重さを感じる。

今、夢の中なのか現実かはわからない。

 いや現実だ。僕は一瞬で確信した。理由は僕の体の上に小さい女の子がいたからだ。

(え?なにこれ?何て名前のギャルゲー?それともなにこのラブコメ展開!?)

「あ、お兄ちゃんおはよう。」

「ん?お兄ちゃん?」

「お兄ちゃんはお兄ちゃんでしょ?まだ寝ぼけてんの?」

「なんだお前か、びっくりさせやがって。」

「なんだとはなによ!このかわいらしく愛くるしいうえにお兄ちゃん一筋であるこの妹を邪魔者みたいに言って。」

「あ~もうわかったわかった。ごめんな。」

「分かればいいのです。まぁとにかくお兄ちゃん早く準備してよね、朝ごはん出来てるんだから。」

 妹は急かすような言い方で僕をベッドの上から起き上がらせる。

「はいはい」とため息をついてから返事をし、着替えを持って1階に降りる。

 ここらで自己紹介でもしておこうかな

 僕の名前は天川乖離(あまかわかいり)。今年から私立天海学園に通うこととなった高校1年生だ。

 妹のは天川 妖(よう)だ。めんどくさく、可愛い妹だ。

「...ぃちゃん、...にぃちゃん、お兄ちゃん!」

 はっと妖の呼びかけに気づく

「ごめんごめん、どうした妖?」

「どうしたのはこっちのセリフだよ、今日のお兄ちゃんいつもより変だよ?」

 心配そうな顔で僕を見つめる。

「ごめんごめん、考え事してた。」

「もうお兄ちゃんったら今日入学式なんだからしっかりしてよね。」

「あ、あぁわかった。」

 そう、今日は天海学園の入学式である。(ちなみに天海学園は中高一貫の学校で僕は高入生だ。)

中学校の頃にろくに友達がいなかった僕には憂鬱な日である。

 朝ごはんを食べ終わり、学校に行く準備をし終わったころ、さっさと学校に行けやと言っているかのように「ピンポーン」とインターホンが鳴る。

 返事をし、ドアを開けると、そこには同じ学校で幼馴染の乙月天音(おとつきあまね)が立っていた。

「おはよう、かいくん!今日は入学式だね!」

彼女は元気よく挨拶をした。そして彼女はいろいろデカいため、

ジャンプするたびにあらゆる部分が揺れる。

朝からなんてもの見せてくれてんだと思いながらも「おはよう」と僕は疲れたように返事をする。

「そんな調子で高校生活大丈夫なの?」

「お前は俺のオカンかよ。」

 そんなあいさつを交わした僕たちは家を出た。

学園に合格が決まってからあまり運動をしてなかった僕は少し歩いただけで息が上がってしまった。

「学校行くのってこんな疲れることだっけか?」

疲れている状態でそんなことを言うと

「もう、中学卒業してから、ろくに運動してなかったでしょ!」

と横から僕に鋭い言葉を返す天音が言った。

「返す言葉もございません。」

「もう、これから毎日きっちりかいくんの腐った体を叩き直してやるわ!覚悟してね。」

勘弁してくれと心の中で思っていた時だった。

とある少女が僕たちを追い越した。

その子は美しい長い銀髪、青い瞳の持ち主だった。

「綺麗だ…」そう僕はつい声に出してしまった。

「あの子、綺麗だったね!」と興奮したように天音が言う。

「そうだな。」僕はあの子の綺麗な容姿を頭の中で思い出しながら答えた。

(あの子はたぶんクラスのカースト上位の子になるだろうな~。極力接しないようにしよう。)

通り過ぎた瞬間に彼女の視線が僕に向いていたことは天音には言わなかった。

 学校に着き、下駄箱でクラス表が渡されたのち、自分のクラスに向かった。運良く、天音と同じクラスだった。天音以外に仲いい人物がいないので心から安心した。

自分のクラスに着いたらなんだかクラスの前に人だかりができていた。

「ねぇかいくん、あの人だかりなんだろう?私たちのクラスの前にできているけど。」

「さぁな、俺らには関係のないことだろう。」

その人だかりの目線は一人の人物に絞られていた。

さっき僕と天音を追い越していった女の子だ。

僕たちは人だかりをよけながら教室の中に入り、黒板に貼ってあった座席表を見てから席に座った。

なんとも迷惑なことに注目されていた女の子の隣が僕の席だったのだ。

(周りの視線が痛い...)

そんなことを思っていた時だった。

「さっき会ったの覚えてる?」

「あ、あぁ覚えてるよ。会ったというか通り過ぎただろ。」

「そうか、今の君は表の君なのか。じゃあ通り過ぎたって感じてもしょうがないか。」

彼女がそんなことを言った。彼女の言っていることが僕にはさっぱりわからず少し考え込んでいると、彼女がすかさず僕に言う。

「そういえば君の名前は?」

「僕は天川乖離。(どうせあとでクラスの前で一人ずつ自己紹介していくのに何でいまするのか考えたが、彼女なりの人との交流の仕方なのだろう)」

「乖離くんね、僕は渡月火憐(とげつかれん)、よろしくね。」

彼女が自己紹介をし終えた後、彼女の口からはもう一言言葉が出た。

「ちなみに僕、男だから。」

僕は茫然とした。

「へ、へ~そうなんだ」

「あれ?あんまり驚かないんだね。ほかの人たちからはすごく驚かれたりしてるんだけど…」

もちろん内心驚いていた。それよりも先に動揺していた。

(さっき会ったこの子が男の子⁉嘘だろ)

「ま、まぁ人の見た目はそれぞれだって考えてるから驚くことはあまりないよ。」

僕は苦笑い気味でそう言った。

その後、彼女…じゃなかった。彼は少しうれしそうな顔でそのまま僕と話し続けた。


 火憐と親睦を深めた後、僕たちは入学式の会場である体育館へ向かった。

僕は校長の話が長く、少し寝てしまった。

「…て、…きて、…起きてってば!」

「はへっ…!」

 僕は垂れていたよだれを拭き、起こしてくれた子に礼を言った。

「ありがとう。」

「いえいえ、私もあなたの寝顔を見ていて楽しめました。」

 彼女はくすっと笑った。

「天使みたいだ…」そんなことを思いつつ彼女と顔を合わせる。

「自己紹介が遅れてしまいました、私は姫神アイリと申します。」

「僕は天川乖離、よろしく。」

(一日に友達が二人もできてしまった、これは幸先良いのでは!?いや待てまだ友達と確定したわけではないぞ。落ち着け俺!)

 その子としばらく小声で世間話をして入学式は幕を閉じた。


 入学式が終わり、周りの生徒たち(主に中入生)が連絡先の交換や、遊びの約束をしている最中、僕は危険をいち早く察知した野鼠のように教室を出て下駄箱へと向かった。

 「あれ、乖離くんは?」と火憐は天音に聞く

「あ~、かいくんは周りが盛り上がった雰囲気になると理由もなくどこかに行っちゃうんだよ。」

「そうなんだ。なんか少し悲しいね。」

「慣れたらあまり悲しいとは感じないけどね。」

天音ちゃんは少し苦しいような悲しいような顔をして返事をした。

「だから嫌に存在感が強かったのか…」

「ん?火憐ちゃんなんか言った?」

「あ、いや、なんでもない」

天音ちゃんは頭にクエスチョンマークを浮かばせたような顔をした。

「てか天音ちゃん、なんで僕のこと『ちゃん』付けで呼ぶの?」

「いやぁ、見た目女の子だからこっちの呼び方のほうが落ち着くんだよ。」

僕は彼女に僕が男だってことは伝えといた。(けど異様にこの子、人との交流が得意すぎないか⁉)

天音は周りからコミュ強といわれてきた火憐でもびっくりするぐらいのコミュ強だったのである。

彼女はへへッと軽く笑いながらそう言った。


 靴を履くために、げた箱を開けると一つの手紙が入っていた。

(ラブレターだとしたらこれはまた原始的な…笑)

 手紙の内容はこんな感じだった。


「体育館裏で待っています。

 来てくれるとご褒美があります。

 詳しい内容は来たときに説明します。

 とにかく待ってます。

 来てください。

 あなたの秘密を知るものより。」

「なんだこれ」

(これはなんだ!?カツアゲか何かなのか?だとしたら困ったもんだ。それに…少し嫌な予感がする。僕に人に話せないような秘密なんてないのにな。

 とにかく、これは行くしかなさそうだな。行かなかったらなんかありそうで怖いし。)

 To Be Continued


 

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