第2話 第2の人生

 「はあ〜。」


午前7時、いつものように目を覚ました。よく晴れた気持ちのいい朝だった。

「今日も暇だなー。」

こんなに良い天気なのに、出かける予定もなくただ家で時間がすぎる毎日である。


 少し前までは、毎日が忙しくあっという間に一日が終わってしまうと感じていたが、今となってはどうしてこんなに一日が長いのかと同じ時間を過ごしているとは決して思えなかった。


 会社を辞めたあとのことなんて、しっかり考えたことがなかった。好きなことを自由にやったらいいと思っていたが、いざ時間が有り余るとすることが浮かばない。とりあえず健康のためにと始めた朝のウォーキングもせいぜい2時間で終わってしまう。


 公園で遊ぶ子どもたちを眺めていると、自分の子供時代を思い出す。外で遊ぶことが好きだった私は、よく公園で遊んでいた。当時一緒に遊んでいた同級生たちも、退職してきっと同じような生活をしているのかと思うが、就職してからほとんど連絡もとっていないのでどこで何をしているのかさっぱりわからない。


 よく考えてみれば、自分から連絡できるような友人はもう残っていなかった。仕事のために、友人との時間もまったく作れなかったからだ。というより、仕事を優先してそういう時間をつくらなかったからだ。今となっては大きな後悔だ。


ーとある月曜日ー


 今日もいつものように朝のウォーキングを始めた。

「今日はいい天気だし、目覚めもいいからちょっと遠くまで行ってみるか」

そう思い、いつもよりも遠くへ行ってみようと歩き始めたが、帰り道がわからなくなってしまった。携帯を見るが、なぜか位置情報が更新されない。人気もなく、道を聞くにも聞く人がいない。


「困ったな…」


しばらく歩き続けると、見覚えのあるトンネルを見つけた。


「あっここ通ったような気がする。」


少し安心したときだった。


段々とあたりが真っ白に包まれていく。


視界が真っ白になり、気を失った。




目を覚ますと、覚えるのある場所にいた。


ー面接会場だ。


唯一内定をもらえた、自分の人生を捧げたあの会社の面接会場にいる。


「あれ、ここで何をしているんだ。」


考えていると、


「次の方どうぞ。」


部屋の中から声がする。


「次の方。山下さん、山下和夫さんどうぞ。」


自分の名前が呼ばれたことに驚いた。


状況がつかめないままだったが、とりあえず中に入った。


そこには、長年お世話になった社長と仲間の姿があった。


「名前と大学名、学部名をお願いします。」


そう言われたが、


「社長、何をおっしゃいますか。私ですよ、山下ですよ。」


社長は眉間にシワを寄せながら、


「ほお、新しい自己紹介ですね。おもしろい。とりあえずお座りください。」


私のことは全く知らないようだ。


私は確信した。


「これは33年前に戻っている。」


そう考えながら、面接が進んでいくのだった。

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俺の人生 もっくん @moto5332

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