第3話 モンスター退治出発
しばらく走っているとどこからか美味しそうな匂いが漂ってきた。
ちゃんと目的と場所へと向かっている証拠だろう。
大通りを抜けると広場についた。
そこでは至る場所に出店が立っておりベンチで昼から酒盛りしている
人もいる。料理の熱気と匂いそしてアルコールと男の臭いが混じり合って
混沌とした雰囲気を醸し出している。
食欲をそそるご飯には後髪を引かれるが目的の場所はここじゃない。
広場を抜けてこの辺りではかなりの大きさの屋敷へと向かう。
正門から入るには警備兵の審査を受けなければならないので裏手に回る。
この時間帯なら彼女はいつものとこにいるだろう。
一等地に広げられ綺麗に手入れされている裏庭だが花や噴水があるのではなく
かなり実用的?実験的?に作られた畑とその周りを家畜化されたモンスター(ニワトリ?)が走り回っている。
そんな中で土を掘り起こしている姿が見えた。
「ムーちゃーん!」
「ふぉーだれだー」
振り返ったそのbodyは同い年の12歳とは思えないほどに大きかった。
身長は私と同じぐらいなのだが横幅が広い。おそらく70kg overといったところか。
「ふぉーせなちゃんだー。ひさしぶりだー」
「ムーちゃん久しぶりだね!元気だった?」
「ふぉーオラはいつでもげんきだー」
そう言いながらムーちゃんはズボンと服についた土をはらいながら
今まで掘っていたであろう穴から出てきた。
「ムーちゃん今日は何してたの?」
「ふぉーきょうはちか水みゃくのかくにんをしてただー。
さいきんは町の人がたくさんふえたかあら、お水がなくなってきてるだー」
「大丈夫なの?」
「ふぉーだいじょうぶだー。父ちゃんにウォータースライムをとってきてもらう、いらいをしてもらっただー。ウォータースライムがいれば他のところから水をとってこれるしー、雨をきれいにしてためておくこともできるだー」
そういって彼女は用意していたのであろう昼食のボックスを開けて中の
サンドイッチを取り出し大きな口で食べ始めた。
いつも不思議に思っているが彼女はサンドイッチを縦向きに食べる。
口が大きいから横でも縦でも大した差はないのだろうが、みているとなぜだか
可笑しくて笑ってしまう。
そんな私を見て彼女もまたニコニコと笑みをこぼした。
しばらく笑った後で本題を思い出した。
「ねえムーちゃん」
「ふぉ?なんだー?」
「私と一緒にモンスター討伐に行かない?」
「ふぉーモンスターとうばつ?」
「そう。モンスター討伐。最近勉強ばっかりしてたから嫌になってきた。」
「ふぉーでも前いっしょに行ったときすごくおこられただー。せなちゃんちのメイドさんにつぎせなちゃんと悪いことしたらおなかのお肉を食べますよって言われただー。食べるのは好きだけど食べられるのはイヤだー」
「でも私のお父さんはいいよって言ってたよ」
「ふぉー ほんとうにー?」
「うん」
「ふぉーじゃあいっしょに行くだー。じゅんびしてくるからまっててー」
そう言って彼女はベランダから屋敷へと戻っていった。
モンスター討伐用の装備を着てくるのだろう。
お父さんに許してもらってるって嘘ついちゃったけどまぁ大丈夫だよね。
ちょっと嫌なのは私の家に一人だけいるメイド。オルカ。あいつは怖い。
モンスター討伐にいったことがバレたらどんなお仕置きをしてくるかわからない。
バレないようにするためには夕方までには家に戻らないといけない。
窓から飛び降りて出てきたのでバレないように自分の部屋に戻るための
ルートを考えているとムーちゃんが出てきた。
「ふぉーじゅんびできただー」
「よしじゃあ行こう!!」
まず私たちは街の外に繋がっている門を目指して歩き始めた。
「ふぉーところでせなちゃん」
「なに?」
「ふぉーモンスターとうばつって言ってもいったいなにをたおすだー?」
確かに言われてみればそうだ。とりあえず外に出てモンスター相手にマジックを試してみたいと思っていたが肝心の何のモンスターを倒すのかを決めていなかった。
モンスター討伐には2種類あって一つが依頼によるモンスター討伐。
例えば村をモンスターが襲って人が食べられたり畑を荒らされたりした時に
集会所で手続きを踏むことでモンスター討伐の依頼が出せる。
実際には村から集会所まで来ることができる村人は野盗やモンスターの関係で
いないし依頼ができるお金もない。他の街では知らないがこの街での依頼は
交易物資や依頼人の護衛がほとんどだ。
二つ目は冒険的モンスター討伐。自主的に街の外へ出てモンスターを討伐する。
もちろんモンスターを討伐するのが目的でなくても鉱石や薬草の採取をしている最中にモンスターが出てきてそれを討伐するのもこっちに含まれる。
基本的に拘束はないが希少なモンスターを乱獲したりすると処罰が下される。
特定の区域のモンスターには駆除報奨金がかけられている場合もあるのでそれを
目当てに討伐に出かけるパーティーも少なくない。
「うーん」
今回はお試し的な側面が強いから依頼は受けないで自由に戦いたいけど
モンスターの生息地どころか交易用に使われるルートしか知らないから
どこに 何が あるのか全然わからない。
モンスターも反撃してくるやつだともし何かあったら危ないし。
母と一緒に読んだモンスター図鑑を思い出しながらどのモンスターにするかを
考える。そういえば!!
「ムーちゃん」
「ふぉーなんだー?」
「さっきウォータースライムの捕獲の依頼出したって言ってたよね?」
「ふぉーそうだー。水をためておくのにつかうんだー」
「それじゃあさウォータースライムを私たちで捕まえてみない?」
「ふぉーたしかにウォータースライムは何びきおってもうれしいだー」
「ムーちゃんはウォータースライムってどこにいるのかわかる?」
「ふぉーたしかエルフのもりのちかくのドウクツにいるって父ちゃんが
いってただー」
「エルフの森かー結構遠いね」
エルフの森はその名の通りエルフが住処としているかなり広大な森だ。
様々な生き物が住んでいる中でエルフが頂点に君臨している。
多少のモンスター討伐や薬草採取は見逃しているらしいが
度々人間や森以外からの亜種族からの侵攻を防ぐために大規模戦争をしている。
実際エルフの森を挟んで隣の国は軍事業のための森林伐採を行おうとして
エルフに相当手痛く反撃をもらったらしい。
でも実際あの森にはかなり豊富な資源が眠っていて作物を育てたり家畜を育てられたら少なくともその国が数百年の間主権を握るとかなんとかとお父さんが言っていたのですごいとこなのだろう。ただしエルフの上位版でありこの世界では有数の力を持っているhiエルフもいるらしいので周りの国は傍観を決めている。
そこにいけばきれいな水を好むウォータースライムはいてもおかしくない。
でも問題は、歩いて行ける距離ではないこと。
ただ歩くだけでもおそらく1日はかかる上に危険がないとは限らない。
正直辛い
しかめっつらをしながら悩んでいるとムーちゃんが肩をトントンと叩いてきた。
「ふぉーせなちゃんせなちゃんあれみるだー」
振り返るとそこには鉄で作られた馬車があった。
馬はいないがその代わりに6足の地を這うトカゲのようなモンスターが
鉄馬車背負っている。あれはたしか捕獲したモンスターを運ぶための
乗り物だった気がする。
「ふぉーあれにのせてもらえばもっと早くいけるだー」
確かにあの檻のような馬車にのせてもらえば行き帰りは楽ちんだしモンスターも
のせて帰ることができる。しかも捕獲したモンスターに余計な傷がついたりしないように揺れを作らないように歩くあのトカゲモンスターを使っていたはずなので
中に入っても乗り物酔いに悩まされたりすることはないだろう。加えて命令を
下すだけであとは勝手に向かってくれる。訓練要らずだ。
じゃああの馬車?を借りてエルフの森の近くにある洞窟を目指しましょう。
とは普通はならない。なぜならああいった護送用の馬車は貴重なので借りるにしても
かなりのお金が必要だしコネも必要だ。たとえその二つがあったとしても当日にすぐ貸してもらえるわけじゃない。万事休す
そう普通なら
普通なら万事休す。
でも私たちは普通じゃない。なぜなら私たちはこの街一番の有名人。
なぜなら親が偉いから。
ありがとう神様。
あんなキモい父親でも役に立つ時はくる。
涙ながらに親指を立てているお父さんが浮かぶが特に感情はない。キモいだけ
流石に警備兵がいるなら話は別だがそこは交易所。本人確認みたいな面倒な手続きをしなくても向こうに特別な理由がない限り私たちの”お願い”は聞いてくれる。
私とムーちゃんは互いに顔を合わせた後交易所へと乗り込んだ。
そしていい子ちゃんふうな笑顔とおしゃべりをしてロリコンを騙し
馬車を手に入れ意気揚々とウォータースライムのいる洞窟へと向かった。
ニート(異世界転生者)のすゝめ @baibaisan
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