第12話 謁見の場
第6王子一行は、
この砦城は小振りながら、城としての機能は、しっかり兼ね備えているようだ。
ほどほどの距離の廊下を歩いた先に、広間があった。
広間の上座は、暗い色の薄布の
王座に座っているのは――。
目を凝らしても見えなかった。
ルッキオたちは、すぐに床に右ひざをついて伏したのもある。
「――魔王よ」
第6王子一行の中で最も年かさな神官が進み出た。
まず、
「
朗々と語り出した。
「サーシェルの子女、魔王の
神官が大ウソ、言っとるがな。
父王、第6王子を9歳まで放置しとったがな。
ルッキオは、複雑な面持ちで伏していた。
まぁ、どうでもいい庶子をよこしたとばれたら、国交問題に発展しそうだから。
UUUUUU。
神官の前に、あの銀のホールケーキが降りてきた。
ぱしゅ。
水面を魚の尾びれが叩くような音がした。
ぐらぁと、神官がよろめいた。
「神官さまっ」
神官助手が駆け寄る。
神官は、白目をむいてひっくり返っている。
『 前置キハ イイ 』
銀のホールケーキが言った。
「死んだっ?」
思わず、ルッキオは屈託なく叫んでしまった。
『 ミネウチ ジャ 』
銀のホールケーキの声は無機質だ。
「それ、危ないからっ」
老い先短いじじいになんてことをするんだ。ルッキオは、いきどおった。
『 デハ 続キハオ前ニ 聞ク 』
銀のホールケーキが、ルッキオの前に浮遊してきた。
「え?」
『 見定メテヤロウ オ前ニ価値ガ アルンカ 』
「うわ……」
ルッキオは、自分は下むいているだけで謁見済むかと思っていた。甘かった。
な、何か言わねば。
ルッキオは、必死に言葉をひねり出す。
「……き、貴国と貴国の
わー、もう何言ってんだか、わからなくなった。
「ふーん。よく口が回る子供だなぁ」
「小賢しいのは好きじゃない」
ばっと、
現われたのは、黒ずくめの長身の少年だった。
ちいさな襟の袖がふくらんだシャツとパンツ。すねに巻いた
そして、大きめの手帳くらいの銀の装置から2本出た取っ手を、両の手のひらで握りしめていた。
「……こんとろーらー」
ナーソーがルッキオの後ろでつぶやいた。
「サーシェルの客人たちよ。戦に負けた途端に丁重なご挨拶、痛み入る。必要はないが、一応は両国の、これからの絆のために自己紹介しておこう。魔王の第6子、アーフェン・ツェッツェだ。この砦城を任されている」
そう言うと、黒ずくめの少年は、きゅっと靴底を鳴らして90度右を向くと、すたすた部屋から去って行った。
UUUU。
その後ろを、銀のホールケーキが低速低空飛行で追って行った。
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