終章 書き手の事情は見えない

……。


ふと気づくと、私は全身を拘束されていた。


「なぜに」


なんだこれ。

拘束されてると思ったけど縄とか見えないし、ただの金縛りか?


「目ヲ覚マシタカ」


謎の人物が現れた。発光していてよく見えない。


「怪人?怪人なの?」


敵に捕まってしまうイベントでも発生したのだろうか。


「怪人トイウカ我々ハ宇宙人ダ。

オマエハ実験動物トシテ捕獲サレタ」


宇宙人、っているの。

いきなりこの距離感で登場されても、心の準備ってもんが。


「え、実験て何」

「遺伝子改造ダ。宇宙人デ実験スル訳ニハイカナイカラ死ンデモイイ手頃ナ動物ヲ使ウ」


なんかすごいこと言ってる!


「ちょ、私死にたくないんですけど」

「研究目的ナノデ絶対ニ死ヌトイウ訳デハナイ」


そういう問題ではない。


「いやいや、人命を危険にさらす実験なんて許されないって」

「人間ハ他ノ動物デ実験シテイル。文句ヲ言ウノハ筋違イダ」

「そうだけども!」


宇宙人のくせに正論を言いやがって。


「エゴまる出しの自分勝手で悪いか、それが人間なんだよ!」

「悪クナイ、オマエデータ取ラレテ死ヌ、ソレダケ」


わっ、宇宙人の数が増えてる。

でも眩しくてよく見えない。こんなことなら目の下の黒いやつを塗っておけばよかった。


「麻酔要ル?要ラナイ?」

「要るけどやめろー!」


ダメだ、動けない。

何、ここで終わるの?急すぎるでしょちょっと。

お上、お上ー!!


おーい、あんただあんた、返事しろ!


――えーっと、もしかして呼んでる?


そうだよ、他にいないだろ。


――あの、認識するのはともかく、話しかけるのはさすがにやめてもらえるかな。


そんなこと言ってる場合か、絶体絶命だよ!

っていうか展開が急すぎるじゃん。

打ち切りか、打ち切りなのか?


――いや、打ち切りというかそもそも読み切りなので。これでも頑張った方かと。


だからって雑に死んで終わりじゃあんまりだ。

別に「俺たちの戦いはこれからだ!」でいいじゃないの。


――じゃあ宇宙人と戦って生還するのはこれからだ、応援ありがとうございました!ってことで。


無理無理、もう意識が薄れてきてる。

そうだ夢オチ、夢オチでお願い。


――夢オチあんまり好きじゃないんだけどなあ。


死にオチよりマシだっつーの!

ああダメだ、何も考えられ…な…





















「おーい、いつまで寝てる」


顔をパンパンされて気づくと、目の前に――


「お前は、

野球怪人マサオカ!」

「シキューシキだ」

「な、なぜお前が」


…え。


私マジカルピュアレディじゃん。

戦闘中?


「私の千本ノックを頭に受けて気絶してたんだ。

目が覚めてよかったな」


…だいぶ戻ったぞ!

生きてることに感謝だけど、だいぶ戻ったな!


だったらボッチャ怪人の場面で…

ダメだ、あいつ弱かったから意識を失う要素がない。


え~ここからか。

もう野球イベントは無視してもいいよね。


あ、いやこれはこれで未来がわかるというか、ループものみたいなことがやれるのかな。


「何ぶつぶつ言ってんだ、さっさと勝負の続きをやるぞ」

「うん。

え、なんで起こしてくれたの敵なのに」

「プレー中のケガで退場されるのは不本意だからな。

復帰できるようになるべく手は尽くしたい」

「うわースポーツマンシップの塊だ」


やっぱりまた野球には誘ってやろう。

もう4番は打たせないけどな。


ということで、私たちの戦いはこれからだ!

最後まで応援ありがとうございました。


(おわり)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ちえちゃんは異次元が見える 久坂晶啓 @alarmclock

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ