第四話 ゆくらゆくらと揺れる
(どうしてこういう事になったのかな……?)
女官が机の下に頭をつっこんで、
「ううん……、どこかしら……。」
と捜し物をしている。
(丸いんだなあ……。)
そのお尻が、右に、左に、たっぷりと時間をかけて、ゆくらゆくらと柔らかく揺れる。
右に。
左に。
ゆぅくらゆくら……。
悪いと思いつつ、つい見入ってしまうのだった。
* * *
三虎と野駆けをし、
三虎は、
「革をなめした様子を確認しますので、今日は下がります。」
と早めに下がった。
大川は自室で一人で過ごす。
ぬるくなった
(もう今日は
と思っていたら、
「大川さま。入れてください。宇都売さまの使いでございます。」
と、閉じた
母刀自に差し上げた山橘の残りを、部屋に飾りに来たと言う。
母刀自からは、山橘のお礼を、嬉しそうに告げられた。
(母刀自が喜べば良い。)
その事だけで満足し、大川の部屋に戻ってきたら、山橘が飾られていなかった事など、気にもしていなかった……。
「
不思議に思ってそう言うと、十七か十八歳くらいの若い女官は、
「ええ。」
と大きな口でにっこり笑い、
「大川さまの分の山橘が少なくなって、寂しい感じになってしまったので、なんとかならないかと、
と、大川の部屋にあった、
見れば、たっぷりの山橘と、少しの
冬、
「
「ええ、清浄な香りがするので……、あ!」
山橘が一房、揺れて、紅い小さな実が床にこぼれてしまった。
「申し訳ございません。すぐに……。」
さっと女官はしゃがみこみ、落ちた山橘の実を探しはじめた。
もうすっかり陽は落ちて、部屋は
人の顔は見れても、床の小さい実を探すのは難儀だろう。
「別に良い。」
そう大川は声をかけたが、すでに女官は机の下に頭をつっこんでいて、大川は
ゆくら、ゆくら、と豊満なお尻は大きく動きながら、
「すぐ見つけますわ!」
と返事をし、その割には、なかなか小さな赤い実を見つけられず、大川は首を傾げ、腕を組み、随分居心地の悪い時間を過ごした。
居心地が悪いのは、つい、まるく揺れるお尻の動きを目で追ってしまったからである……。
「ありましたわ!」
大きな声がして、にょきっと机から頭が生えた。
(あっ!)
女官の満開の笑みから、大川は目を目を
女官の髪型がひどく乱れ、耳上の
それは、人に見せるにはひどく恥ずかしい格好である。
女官は笑顔をひっこめ、不思議そうな顔をしたが、ややあって、髪型の乱れに気がつき、
「あああ……。」
と大きな口で悲鳴をあげ、真っ赤になって小走りに部屋を出ていこうとした。
しかし
「人に見られたら良くありません。
部屋の隅でお時間をいただいてもよろしいですか?」
と訊いてきた。
否と言えるはずもない。
髪を
(
大川は
「あまり見ない顔だけど、母刀自の女官なのか?」
「はい。つい最近、召し抱えていただきました。
この秋までは
髪を梳る音がやんだ。
「ありがとうございました。」
女官がでてきた気配がした。
大川は振り返る。
唇が厚く、ぽってりとして、柔らかそうだ。
目は小さめだが、愛らしく、どちらかというと丸い顔。
肌は良く日焼けしていた。
大川もつられて微笑み、
「まだ慣れぬか?」
と訊いた。
「はい、稲刈りや、
「藁紐編みなら、私もできる。」
大川が胸をはって言うと、
「
と信じられないように言った。
大川は、なにか良い気持ちになり、
「本当さ。こうやって、右足の親指にひっかけて、こより、こよりして編むんだ。長く作れるぞ!」
「へえ……。本当なのね。」
↓挿し絵です。
https://kakuyomu.jp/users/moonpost18/news/16817330660883866244
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