終章

そして、水車公園の前で、岩屋公園の牧原さん殺人事件の犯人が捕まった。

犯人は、長田だった。


小森君に、牧原さんを花見へ誘うように仕向けたのは、長田だった。

ちょうど、その二人の、待ち合わせの日、長田は、伝言板に何か書込んでいる、北村さんを見掛けた。


水車公園に隣接する、道の駅の伝言板に「六時半、岩屋公園で待っています」と書込んで、小森君のサインをしたのは、北村さんだった。


牧原さんが、道の駅の伝言板で、その書込みを見るかどうかは、分からない。


それで、長田は、どうなったのか、確かめたくなって、岩屋公園へ向かった。


午後六時、騙された牧原さんが、岩屋公園へやって来た。


長田は、牧原さんに話し掛けた。

その頃、小森君が、長田に、西峰の嫌がらせについて、相談していた。

牧原さんは、その事を知っていた。


長田は、牧原さんに、小森君が、西峰に襲われて、怪我をしたと嘘を吐いた。

小森君が入院した病院へ行こうと云った。


実は、長田は、一週間以内に、弘川の所へ、ファミレスでトラブルになった女子の、誰かを連れて来いと命令されていた。


弘川は、ファミレスに居た五人の女子の内、誰でも良かった。

金蔓になれば、それで良かった。


長田は、西峰が、小森君を襲ったと云った。

ところが、牧原さんは、小森君から西峰が、今朝、大阪へ行ったことを聞いていたらしい。


小森君は、長田から西峰の事を聞いていたそうだ。

何とも、間抜けな話だ。


だから、牧原さんは、西峰が、まだ地元に居る。と云う事を不審に思ったようだ。

小森君に携帯で確認しようとした。


長田は、言い訳が思い付かなかった。

後先考えず、ナイフを取り出して、牧原さんを刺した。

云う事を聞かない場合、脅すつもりで、ナイフを用意していたそうだ。


そして、今年、西峰が失業して地元へ戻って来た。

また三人が、つるんでいた。


実を云うと、長田は、弘川に弱みを握られていた。


長田は、六年前、大学生の時、海岸道路の水車公園の前で、ひき逃げ事件を起こしていた。

その時、長田の車に同乗していたのが、弘川だった。


当時、長田はニュースで見て、名前を覚えていた。

忘れられなかったそうだ。

長田は、ずっと怯えていたそうだ。


弘川は、長田に道の駅の伝言板に、メッセージの書込みを指示した。


そして、西峰に森本さんが、岩屋公園へ行くと仄めかした。


長田は、森本さんが、伝言板を見た事を確認して、弘川に伝えた。

西峰は、岩屋公園へ行ったが、森本さんを殺してしまった。


長田は、慌てて、伝言板の書込みを消した。

痕跡が残ってはいけないと思ったそうだ。


しかし、後で確認すると、道の駅の防犯カメラには、確り映っていた。


弘川は、残った豊田さん、大垣さんと北村さんの三人の内、誰か誘き出す機会を窺っていた。

長田から聞き出した、小森君のサインを真似て、道の駅の伝言板に書込みをしていた。


そして、弘川は、西峰に、それとなく、殺人現場を見た女子学生が岩屋公園へ来ると伝えた。

そして、西峰が岩屋公園で、警察に捕まった。


長田は、弘川から、道の駅の伝言板のメッセージを消すように指示された。

弘川の自宅に警察が来たらしい。


長田は、慌てて水車公園へ向かった。

そこで、逃げる途中、事故を起こした。

長田は、今回の事故の瞬間、山岡聡子さんを見た、と云っている。


一体、この三人は、何を考え、何をしたかったのか。

理解出来ない。


真由は、やっと誓いから解放された。

来年は、浪速大学大学院を目指す事ができる。


そして、鈴音寮へ入寮した。

三階の一番奥、つまり、秋山さんの隣の空き室に入った。


北村さんは、警察で、全て正直に話したそうだ。

北村さんの起こした事件で、今の家に居づらいそうだ。

大垣さんは、北村さんの両親に、今でも、いや、これからも友達だと、伝えたそうだ。


豊田さんは、北村さん両親の事を考えて、訪ねるのを控えていた。

豊田さんも、訪ねてみようと思っているそうだ。


北村さんの処分は、まだ決まっていない。


それと、驚いた事に、大垣さんも寮に入る事になった。

今、準備しているそうだ。

寮生活は、絶対に嫌だ。

と云っていたそうだ。

どんな心境の変化だろう。


「本当に、これで幽霊は、成仏したんやろか」

大垣さんが、そう云ったそうだ。


今回の事件は解決した。

もう絶対に、事件は起きないのだろうか。


これから、もっと、何か大きな事件が、起きるような気がする。

牧原さんが、入寮した形跡のある事件は、まだ解決していないと云い張る。


大垣さんが、物騒なことを云っているようだ。


さて、名探偵、秋山弘さんの娘、秋山千景さんには、どうしても解明したい事があるそうだ。

真由の部屋を調査した。

ロールカーテンだ。


何故、開いていたロールカーテンが閉まったのか。

何かの拍子に、巻き上がる事は、あるかもしれないが、閉まる事は、まず無い。


おそらく、細工したのは、森本さんだ。

しかし、仕掛けが分からない。


今日、日直の先生は、鳥井先生だ。

ロールカーテン事件の時は、鳥井先生だったそうだ。

だから、鳥井先生に立ち会ってもらった。


秋山さんは、自室のロールカーテンと同じなのか確認した。


まったく同じだ。と、なると、プルコードの摘み部分だ。

摘み部分は、プラスチックだ。


コードの先端を金属の輪っかで繋ぎ、摘み部分がカバーになっている。

最初に思い付いたのが、超強力磁石だったそうだ。


事件が気になって、実験出来なかった。

真由に話して、実験しようとしている。


「ちょっと待って」

真由は云った。


ロールカーテンの材質が同じだと分かった。

だから、秋山さんの部屋のロールカーテンで実験しなさい。と云った。


秋山さんが、納得した。

部屋の外から、窓ガラスに磁石を近付けた。

巻き上げたロールカーテンのプルコードの摘みが、窓に吸い付いた。


ゆっくり、磁石を下へ移動する。

ロールカーテンが、磁石と一緒に引き下げられた。

プルコードの摘みは、窓枠で止まった。

実験は成功した。


鳥井先生に、確認してもらった。

ロールカーテンのバーから、ぶら下がったプルコードと摘みまでの間隔は八センチ程ある。

窓枠の下辺からロールカーテンのバーは、八センチ開いている。


あの時は、窓枠の下辺の板までロールカーテンは閉まっていた。

「従って、この方法ではない」

鳥井先生は、研究者らしく結論付けた。


鳥井先生は、研究の合間に、考えてみると云った。

案外、本当に、幽霊の仕業かもしれない。

と、研究者らしからぬ事を云って、当直室へ戻った。


名探偵、秋山弘さんは、娘さんが事件に巻き込まれると大変だと思った。

殺人事件の捜査が長引くと思ったそうだ。

娘さんの側に居て、守るつもりだった。


何でも屋の、寺井社長に相談すると、ちょうど、人を探していた。

「何でもするゾウ」の社長、寺井冴子さんには、真由の父親が、お世話になっている。

不思議な巡り合わせだ。


秋山さんは、二ヶ月の契約で、花宮水産石鎚山営業所で勤務する事になった。


ところが、勤務初日に、事件は解決した。

活躍するどころか、出る幕もなかった。

悔しいと云っていた。


秋山さんは、今から二ヶ月、娘さんが外出する時の、運転手にされそうだと、不安に思っている。


何より、娘さんに、小遣いをせびられるのは、非常に酷しい。

と云っている。


残念

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鈴音寮の幽霊 真島 タカシ @mashima-t

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