青と白に惹かれる春の日

CHOPI

青と白に惹かれる春の日

 ――……あつい。


 カレンダーに目をやる。おかしい。まだGWすら来ていない、4月半ばだ。


 続いて窓の外に目をやる。やはりおかしい。突き抜けるような青空に浮かぶ白い雲。


 ……春のそれ、じゃなく、どこか夏の匂いさえ感じられる雲が浮かぶ空を見て、だけどそれ以上は考えられなくなる。暑さで脳が少しずつ溶かされている錯覚を起こす。あれ、ついこの間、桜の品種の中では遅咲きの八重桜が満開を迎えた気がしたんだけど。季節の巡る速さに頭を抱え込もうとして、だけど、はて、本当に季節が巡るのが速いのか?と考え直してもう一度カレンダーを見た。やはり間違いなく、4月の半ばだった。


 スマホの画面を開いてSNSを覗いてみる。不特定多数のユーザーの呟きで溢れるその世界では、時を同じくして『肌寒さを感じる』という呟きをしている人もいた。それを見て、なんだか不思議だ、と思う。同じ時、同じ国で、だけど少し離れれば環境が全く違って。狭く小さい島国でもこう感じるのだから、他の国へ行ったらもっとその違いは大きいのかな、なんて思ったり。


 思考回路が思わぬ方向へと向かって行く。ぼーっと一人、こうやって思考を巡らせて、まだまだ先の、真っ白にさえ感じる日差しの暴力とアスファルトが反射する熱、やまない蝉時雨と生ぬるい湿り気を帯びた空気を思ってため息をついた。梅雨さえ超えて、もう一足先の季節へ意識は既に持って行かれている。年々、春と秋が短く感じられるようになってきたのは、気のせいじゃないのかもしれなかった。


 ……いや、待て。落ち着け?


 早い、早い。夏に気を巡らせるにはあまりにも早すぎる。


 あっぶねー……


 気を抜いていた、もう少しで持って行かれるところだった。それもこれも、少し早すぎるくらいの暑さのせいだ。とりあえずは今、目の前のことをしっかり一個ずつ。そしてとりあえず、目指せGW。その後のことは、その時にでも考えよう。きっともっと具体的に、しっかりと考えられるはずだから。


 ――……危うく連れていかれかけた、そんなとある4月の出来事。

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