Extra+.

 結局、注射を打ったのに、彼は罹患した。


 わたしと一緒に住むようになってから、彼はマスクをして出歩くようになったのに。わたし経由で移されたらしい。ちなみにわたしは無発症。全てのウィルスを叩き壊したっぽい。


 彼は多少熱が出たけど、あの日みたいに胸の中でしぼむようなことはなかった。


「注射打っててよかったね」


「ああ。熱とだるさと痛みがやばかったけどな。死ぬよりはいい」


「うん」


 さて。


「おい。座れ。おまえの料理はだめだ」


「だめって何よ」


 彼のほうが、料理はうまかった。


「まだ熱あるのに」


「おまえは任務だろ」


「まぁ、そう、ですけど」


「街がなくなったら困るからな。美味いもんを作ってやるから、生きて帰ってこいよ」


 最近の彼の、口癖だった。

 生きて帰ってこいよ。

 わたしは、返事をしない。死にたいという思いは、簡単には、消えない。でも、なんとなく。薄くなっているような気は、する。


 キッチン。


 彼の、はなうたが聴こえる。

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はなうた (Hi-sensitivity) 春嵐 @aiot3110

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