Extra+.
結局、注射を打ったのに、彼は罹患した。
わたしと一緒に住むようになってから、彼はマスクをして出歩くようになったのに。わたし経由で移されたらしい。ちなみにわたしは無発症。全てのウィルスを叩き壊したっぽい。
彼は多少熱が出たけど、あの日みたいに胸の中でしぼむようなことはなかった。
「注射打っててよかったね」
「ああ。熱とだるさと痛みがやばかったけどな。死ぬよりはいい」
「うん」
さて。
「おい。座れ。おまえの料理はだめだ」
「だめって何よ」
彼のほうが、料理はうまかった。
「まだ熱あるのに」
「おまえは任務だろ」
「まぁ、そう、ですけど」
「街がなくなったら困るからな。美味いもんを作ってやるから、生きて帰ってこいよ」
最近の彼の、口癖だった。
生きて帰ってこいよ。
わたしは、返事をしない。死にたいという思いは、簡単には、消えない。でも、なんとなく。薄くなっているような気は、する。
キッチン。
彼の、はなうたが聴こえる。
はなうた (Hi-sensitivity) 春嵐 @aiot3110
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます