Ep3-5:四方木くん係
「
半分しか席が埋まってない教室。
「なんだ?」
グビグビと牛乳を飲む手を止めて、礼祀は寄ってきた小動物を見やる。なんとなく
「コクソ期限は6ヶ月って、どういう意味なの?」
よく聞いてくれた! とクラスメイト達が耳を
「スマホで調べりゃいいだろ」
「ええー、耳コピだと間違ってるかもしれないし。それに、四方木くんの話の方が面白いもん。そもそも四方木くんは自己完結って言うか言葉足らずだと思うんだよ。みんな四方木くんみたいに頭いいワケじゃないんだからさ」
「はぁ…… 告訴ってのは警察に、私はこれこれこーいう被害を受けたから事件を調べて犯人を捕まえて下さい、って申し込むことな」
「ああ……やっぱりその告訴なんだ……」
去年まで能天気に生きて来た中学生である夏水に告訴と起訴と直訴の区別は付かないが、警察沙汰ということだけは理解できる。彼女の呟きはまさしくクラスメイト達の代弁であった。幽霊の次は警察。あらゆる方面から執拗に詰めてくる。絶対にタダでは済まさんという強い意志を
「冤罪っつーか名誉毀損とかの場合は、その申し込み期限が6ヶ月なんだよ」
「け、警察って……
「大事だろーが」
礼祀の声のトーンが一段低くなった。
お前を冤罪で檻にブチ込んでやろうか、と言わんばかりの目付き。
教室から食器の立てる音まで消えた。隣のクラスから昼休みに何して遊ぼうかと相談する声が聞こえてくる。
「警察って、
「アイツらのやる気次第だな…… まぁ、貸しがある連中に声を掛けてでも動かすけど」
ああ、やっぱりそういうことも出来るんだ、
「俺も鬼や
ああ、鬼じゃないよな。と、
「ま、このままだと半年以内に忙しくなりそうだなって話だ…… 面白かったか?」
「べ、勉強になりました」
小輪雁夏水は青い顔でそう答えると、助けを求めるようにクラスメイト達を見る。助けて欲しいのはこっちの方だと、クラスメイト達は蒼白い顔で目を反らす。
担任は、受験を前に訴訟を抱えるのかと遠い世界の物語のように話を聞いていた。自分が責任を持つべきクラスのことなのに、発展途上国の子供達のニュースに心を痛めるような心境にしかなれなかった。何かしなければと思いながらも、どこに地雷が埋まっているのかさっぱり分からなくて一歩も動けない。
頼みの綱は、小輪雁夏水だけ。
当の彼女は、そーいえば四方木くんって好きな給食の献立とかあるの? などとどうでもいい話をしていた。特にないな、強いて言えば牛乳。というどうでもいい情報が入手できた。
******
次回も新規中編を構想しつつの不定期更新となります。
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小輪雁さんは怖がり 地空月照_チカラツキテル @Tsukiteru
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