5 鼓動

 

 たくさん苦しんだ夜、泣き晴らした目に刺さる光、やっと朝がきたみたい。


 僕の隣には、命。

 何も言わずに、ただずっと、僕の横で呼吸を繰り返す。

 君は僕の側で生きている。安心して眠っている。

 その姿があまりに穏やかで無防備だったから、思わず僕は君に触れた。

 君は暖かかった、じんわりと。

 僕は君を抱きしめた。肌に伝わる君の温もり、鼓動、毛並みの柔らかさ。


 すると、目から幸せが溢れた。

 僕の頬を伝っていくそれは、さっきまで冷たかったはずなのに、今はとても暖かくて。

どうしてだろう、嫌じゃない。むしろ心地いいんだ。


 君と今生きている。君の暖かさがうれしくて。


 小さなおでこにキスをした。


 おやすみ。



 君の隣で、僕は目を閉じた。

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拝啓、私を見つけた人 水中 @_mu_2

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