「”もりひと”はいるか?」

低迷アクション

第1話

「“もりひと”はいるか?」


そいつが俺達の駐屯地の食堂にズカズカ入ってきての第一声だった。見た目は白人っぽいんだが、何か違う。顔は人形みたいに真っ白でかなり異様…


食堂に詰めてた隊員全員が“えっ?何?”って顔で固まってると…あの野郎が再び、


「もりひとはいるか?」


って、繰り返しやがった。表情一切変化なし。瞬きもしねぇの。ビックリだぜ?


そろそろ、誰か呼んでこいって、周りがザワめきだした頃…


人形野郎の後ろから俺達の班長が覗いて、俺を手招き…


えっ?俺って、まわり見渡し…どーぞ、どーぞの流れで、気が付いたら、基地の駐機スペースにオスプレイが止まってて、有無を言わさず、荷物みたいに積まれちまった。


そんまま、飛び立ったけど、数時間(多分)…機内は一向に明るくならねぇ。これも多分だが、客は俺だけ…パイロットは英語で何か話してる。


スマホの翻訳音声流したら、


「コイツ、ホントニ、ツカエルカ?」


「J(自衛隊の米軍呼称)ノナカデハ、イチバンダソウダ。シンデモコマラナイトモイッテイタ」


ちょっ、おい!?って立ち上がったら、後ろの後部が開いて、空に放り出された。

よくよく考えたら、乗り込むときにパラシュート胴衣、着せられてたのすら忘れてた。

何せ、暗かったからな。焦りながらも、


「何処行くんだよ?」


って叫んでやった。俺の怒鳴り声に対する英語の返事は、スマホ翻訳必要なし…もっとも、スマホは先にダイブしてたけどな。肝心の言葉は、こーゆうシチュじゃ、想像つくだろ?多分、アンタの予想通り…



「HELL(地獄だよ)」…



 「よく来たな。怪我はしてないか?悪いが、急いでる。早速だが、コイツは使えるか?」


返事も待たずに、アメリカ製の突撃銃を放った相手は迷彩服とデカいバッグを担いだ

日本人…


場所は富士の樹海並みの原生林。鈍い明かりが遠くに見えていた。一番驚いたのは、

銃の重さだ。訓練でハチキュー使ってるから、わかる。実弾が詰まってるんだ。


俺が訳を聞く前に向こうから、聞きたい目的がやってきやがった…


“ウゲゲゲゲ…ゲゲッ?ウェ、ウェッヘヘヘ”


何か壊れた酔っ払いが“見つけたぞ?”って感じの音声と一緒に樹木の間から顔を出した。それも複数…


俺より頭二つ分、首が長かった。日本人の相棒がデカいライトで照らしたら納得…

普通の日本人連中、服も着てる。だけど、額の先がぱっくりザクロ、中から、血管みたいな管が伸びて、天井上がり…オマケに先っぽ、赤果実…脳みそかな。覗いてやがんの。


迷わず撃ったね。


ハチキューより、軽い反動と安定ある突撃銃から放たれた弾丸が2,3個の果実を

“ブチュッ”って感じで吹っ飛ばす。


残りは相棒が仕留めた。検定2級の俺と同じくらいの腕前だ。


「よく、撃った、いや、撃てたな?」


静かになった森の中で、化け物共のボディチェックを行いながら、相棒が言う。


「いや、これ、どーみてもバ〇オのマジニ(ゲームに出てくる敵キャラ)っしょ?ヘッドショットは基本じゃね?」


俺のゲーム趣味は奴さん、理解できなかったらしい。頭を振りながら、〇〇世代が…

とか言ってやがったな。明らか、悪口…


まぁ、文句言おうにも、新たに出たマジ〇野郎3匹を撃つのに夢中で、突っ込む暇はなかったけどな。


そんな感じで、時々飛び出してくる奴等に銃弾かましてたら、いつの間にか、周りが明るくなってた。多分、降りた時に見た明かりの元に辿り着いた。


「山の公園?」


「跡地だ。注意しろ、奴等に見つからないようにな」


「ああ」


短いやりとりしながら、把握を進める。備え付けの大型ライトで照らされた、円形のアリジゴクみたいな場所は、中心にむかって、多くの“奴等”が犇めいていた。そこの根っこ、中心地には、車のタイヤ、いや、丸みが少しあっから、卵か?


2、3個転がっててよ。


近くには下半身赤くしたガキ…おじょうちゃんがアワ拭き状態で伸びてやがった。


展開と状況早すぎて、ついけてねぇって感じの俺の横で、相棒がため息一つ、銃の先に、

サプレッサー(消音装置)ひっつけて、構え始める。狙ってる先は…


「オイッ、ちょっまてよ(このネタは相棒の年齢的に通じると思った。これは間違ってなかった)何処、狙ってる?」


「天孫降臨、キリストの降誕…人は常に、それを神秘と崇め奉る。間違ってる。奴等の存在が、人類に何をもたらした?争いと天災…いや、最初に来たのは、良いモノだったのかもしれない。だが、常に来るものが良いとは誰が保障した?


ここにいる奴等、化け物になり果てた狂信者達は、それで幸せなのか?とにかく、ここで止めなければいけない。止めねば」


独り言強めの言葉が止まったのは、俺の銃の台尻がほっぺに見事に収まったからだ。血反吐出しながらも、相棒は言葉を続ける。見上げた根性だよ。全く…


「俺が殺した子供の数は何人になると思う?もう受胎は済んだようだが、器は存在する。つまり、あの子を殺さなければ、災厄は生まれ続ける。ニュースを見たか?同時多発的に連続する火山噴火…手遅れになれば、10年前の


つな…」


「あーっ、もう、うっせぇー」


“馬鹿っ”と言った感じの大口を負けない位の大声で吠え突いた後、背中のバッグをひったくる。


中を開けたら、2本のロケット砲…お前等がよくゲームとか映画で観てるRPG(旧ソ連製対戦車ロケット砲)じゃねぇぞ?


アメリカ製のAT-4だ。RPGより威力は高めだ。オマケは数発の手榴弾…


思わず笑ったね。リアルコマンドーだぜ?


白煙を上げたロケット砲弾で迫った化け物共を吹き飛ばし、俺は銃を乱射しながら、

中心に向かう通路を駆け下りる。


ここに辿り着く前の戦闘で、連中の動きや習性はよく見ていた。恐らく人外れの

能力もあるんだろうが、まだ慣れてない。アウェーに来たサッカー選手みたいに緊張してらぁ。そして、一番重要なのは、これ。銃が効く事だ。


だったら、やる事は一つ…


手早く、ガキの横に転がり込むと、新しい弾倉を差し込み、背負いこみ、叫ぶ。


「オイ、この後はどうする?」


返事と共に、手前に迫った奴の頭を、銃弾で撃ち砕く。流石にヤバくなってきた。


「卵だ、卵を吹き飛ばせ!」


相棒の怒鳴り声で我に返った。周りより、変な色の明るさで、足元照らされてると思ったら、

卵の野郎…何か訳知りでビクビク蠢動の赤色プロジェクション何たら!


「クソッタレ」


って吠えた俺は、手持ちの手榴弾を全部放って、走りだす直後に爆発…生まれて初めて、

空を飛んだ。3メートル位…


地面に、化け物共の破片+でズッコケた俺に、駆け寄ってきた相棒が笑いながら言った。


「流石だ。守人(もりひと)」…



 ってな感じでどうだい?週末、不景気で客少な目、飲み屋のよもや話としちゃ、上出来だろ?おたく、web投稿してんだってな?


陰謀系のネタ、イイ感じのストーリー展開だったろ?俺、次の仕事は脚本めざそーかな。いや、冗談、冗談。とにもかくにも、事実は小説より奇なりって言うだろ?


案外、こんな話もあんのかもよ。えっ?女の子はどうなったか?相棒が所属する機関?


なんだよ~?俄然興味持った感じやん。ワリいな。その話は、また今度…


あのよ、さっきから入口で騒いでる外人、見えるか?


アイツが何て言ってるか、わかるか?


えっ?“もりひとはいるか?”


そうそう、それな。あれさ。俺を呼んでんだよ。だから、ワリいな…(終)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「”もりひと”はいるか?」 低迷アクション @0516001a

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る