第6話

「……以上が、その事件の顛末です」


 わたしは会長に音楽室の暗号、その解決までのプロセスを語った。

 実はこの後も、相生先輩がその夜に当直をしていた先生を調べ当てて、先生に尋問をしようかしまいかなどという問題に発展しかけたこともあったのだけれど、それについては双方の名誉のために言わないでおこう。最悪、墓場まで持って行くしかないな。


「……確かに、探偵としてのスキルはあるそうですね」


 スキルというよりは、推理力と言った方が正しいような気もするけれど。


「ですが、それでも探偵部を認める訳にはいきません。理由はお分かりですね? メンバーが足りないからです。部員二名での部活動を認める訳にはいきません」

「ぶつくさ言っているけれどよー、それなら何をすれば認めてくれるんだよ? 探偵部には大会というジャンルがそもそも存在しないんだぞ」

「極端なことを言えば、部員さえ集まれば何も言いません。幽霊部員であろうが、なかろうが。もっとも、そんな部活動に部員が入るとは……」

「じゃー、良いよ。探偵部はなしで」

「えっ?」

「えっ?」


 思わずわたしと会長が同じタイミングで、聞き返してしまった。

 今の今まで探偵部を作ろうと悪戦苦闘していて、探偵としての推理力をアピールするための暗号の解決までのプロセスを事細かに説明して、お膳立てもしっかり終わらせたのに、部活動は作らなくて良い?

 今までの苦労はどうなるんだ……。


「その代わり、団を作る! チームだな、クラブじゃなくて。その名も鹿鳴館学園少女探偵団! 団員募集中、ってな訳で。それなら同好会扱いだから別に学生会の許可は必要ないよな?」


 相生先輩は意外と校則を見ていたようだった。

 この鹿鳴館学園には、部活動と同好会が存在する。そして同好会は部活動の下位互換であり、単独の部室が割り当てられないなどのデメリットはあるものの、それ以外はかなり自由に活動することが出来る。予算も部活動に比べれば少ないし、制約もいくつかあるのだけれど、実績と人数が増えていけば部活動への昇格だって有り得る。

 プロ野球で言えば一軍と二軍みたいな立ち位置。

 それが部活動と同好会の関係性だった。


「……確かにそれならば、学生会も止められませんね。少女探偵団、ですか。何処まで出来るものですかね」


 何で挑発的な態度を取るのだろうか……。


「やってみないと分からないぞ。吠え面かいていられるのも今のうちだからな」


 そして何で相生先輩も煽り返すのかなあ……。


「それじゃあ、また会おう! 失礼したな!」


 そう言って相生先輩は足早に会長室を後にする。

 わたしはそれを見て会長に頭を下げると、追いかけるように出て行く。

 少女探偵団、ここからが始まり。

 その活躍はどういうものになるのかは、また別の話。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

少女探偵団と音楽室の暗号 巫夏希 @natsuki_miko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ