第7話 俺には無理

 前回までのあらすじ

俺、パルは冒険者になり、異世界の色んな各地でパチンコ旅打ちを始める事を決めて新たな冒険が始まるのだった。


 …筈だった


「ぐわあっ!」


 道中、現れたゴブリンの群れに追いかけ回されて散々な目に遭ってしまった俺は慌てて逃げて前いた街まで走って戻ってきた。


「なんだよあのゴブリン共めがぁ…俺が本気出したらけちょんけちょんにしてやるっつってんのにふざけてんじゃねぇよったくよぉ…」


 ゴブリンにすら勝てなかったのでイライラしながら街を歩いていた。


「あれ?あれはさっきのゴブリン…」


 そうしていると先程のゴブリンの群れが荷車に乗せられて運ばれて来るのを目にした。


「どんな奴が倒したんだ…?」


 これだけのゴブリンを倒したんだ。

きっと勇者もしくは力に自信がある冒険家が倒したに違いない。


「偉いぞ〜今日は頑張ったな!」


「うん!僕、頑張ったよパパ!あんなの余裕だよ〜」


「嘘だろ!?」


 なんとあのゴブリンの群れを倒したのはまだ幼い子供だった。

大人の俺でさえ一体も倒せなかったのに子供が倒したとなると今の異世界にいる俺の実力は子供以下にしまっている訳になる。


「ちっくしょう…異世界行ったら普通最強になれるんじゃないのかよ…どうしてこうなった俺の異世界人生…」


 大体、この手の異世界に行ったの主人公は最強になるパターンが多いので俺もその内の1人になれているかと思いきや、そんな事は全くなくて異世界関係なくどの世界であろうとも他の誰でもない俺は俺。その事実に揺るぎはなかった。


 だからとはいえ、子供より弱いのは悔しくて仕方がなかった


「ちっくしょう…今に見てろ…俺は…強くなってみせる!その為には修行だ。行くぞぉぉぉ!」


 俺は旅打ちの前にまず強くなりたくなったので修行できそうな場所に向かって走って行った。


「パパ、今の叫んでた人何?」


「気にするな…」


 先程の親子は俺を変な目で見ていたがそんなのは知らない。


「ここが道場だな。よし、ここで強くなって俺は最強になるぞ!」


 強くなる為の道場を見つけたのでここで修行すれば、きっとどこの場所へ行ってもスライムだろうがゴブリンだろうが倒せて真の旅打ちライフを満喫できるに違いないと最高の未来を予想できたのでドアをノックした。


「すみません…強くなりたいんですけど…」


「ほう。強くなりたいか?」


「はい!」


 中から大きな人が出てきたので俺は返事をした


「じゃあ向こうからここまで10週走ってここまで戻ってこい!途中で何も口にするな!」


「はい!?」


「強くなりたいのだろう?じゃあやれ。できないとは言わせぬ」


「やってやろうじゃありませんか…走ってみせますよ!」


 ここでへこたれていたら何も始まらない。

だから俺は勇気を出して走り出した。


 そう…強くなる為に!


6週後


「ひぃ…ひぃ…も、もう無理…ポーションを…」


 流石に走りすぎてきつくなってきたのでこっそりポーションを出した。

その時だった。


「何をしている…?」


「ひぃっ!こ…これは…」


 後ろから突然、道場の人が姿を現した。


「話が違うだろう…強くなりたい心意気はどこに行った…?そのまま走れ!」


「で、でも何も口にしないなんて無茶ですよ…」


 流石に10週も走るのにポーションすら口にしてはいけないのは無理がありすぎる話なので俺はここで反論した。


「つべこべ言わずに強くなりたいなら走れ!それともここで殴り合って話を付けるか?」


「上等じゃないですか…やってやりましょうよ…」


 間違いなく勝てないのに何故か俺は殴り合う事になってしまった。


「はぁぁぁっ!」


「うぉぉぉっ!」


そうして殴り合いが始まった。


しかし


「へらへら…もう勘弁してください…」


 俺は案の定ボコボコにされた。


「これに懲りたらちゃんとしろ!良いか!?やる気がないなら帰れ!」


「じゃあ帰ります」


「は?」


 そして俺はその場から離れた。


「いってぇ…本当にボコボコにしやがって…殴り合いにすらなってねぇだろ…」


 ポーションで回復させていきながら俺はブツブツ文句を言った。


「やっぱ強くなるの向いてねーな俺…」


 ここで確信してしまった。

俺は強くなっていく系ではない。


 そもそも普通はあの場でも立ち上がるところだが俺はあそこで逃げてしまった。

だから到底強くなるには程遠かった。


「ってかもう努力努力とか…努力したくねー…怠けててー…弱いままでいいや」


 俺みたいな人物が最も言ってはいけない言葉を息を吸う様に吐き続ける。


「にしてもどうしよ…何して生きていこう…」


 今度こそ本当に行く宛を見失ってしまったのでどうして生きていけば良いか分からなくなってしまった。


 するとそこで


「いやぁ…今日は冒険したなぁ…」


「だな…」


 冒険者が2人でこの街に入って来るのが見えた。


「ああいう手もあるのか…そうか!」


 1人ではなく2人で冒険する手があったと俺はこの時気付いた。


「1人で冒険するんじゃなくって仲間を連れて行けばなんとかなりそうだ…俺は戦う担当じゃなくてアイテム担当とかサポート担当になれば良いし…」


 思い出してみれば、俺は前の世界にいた時に遊んでいたオンラインゲームでヒーラーやタンクをよくやっていたので異世界でもその手を使えばどうにか生きていきながら旅打ちができるかもしれないととっさに思いつき、再び旅打ちに興味が戻り、次は仲間を探す事にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界パチンコ メロンストーン @cosmo_no_cosmo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ