第6話 冒険の…始まり?
「うぅん…参ったな」
俺はあれから服も購入できて生きれる分の食事も買えて宿に泊まりでなんとか生活する事ができていた。
その後もパチンコ屋に通い、甘デジやライトミドル、釘が良さげな日は1/319の台も打ってダンジョンに行ってはで実質、パチンコのみで生活していた。
元いた世界にいれば仕事もあるのでこんな楽しい日々は過ごせないだろう。
だが
「回らねぇ…」
釘を締められてしまった。
読者の中にはパチンコを知らない人達もいると思うのでここで説明するが、パチンコはアタッカーの中に玉が入ってから図柄が回転していく遊びなのでまずそのアタッカーの中に玉が入らないと意味がないのだ。
なのでそのアタッカーに玉が入る為の釘が締められてしまっては元も子もない。
「連日俺が勝ち続けてしまったからなぁ…」
俺の台選びが良かったのもあるからかここ連日はパチンコだけで生活できるぐらいには稼げていた。
だが、異世界であれども世の中そんな上手く作られていない。
店も商売なので釘を締めようと思えばいくらでも締める事ができる。
「しゃあね…普通に働くか…」
そろそろ働く時が来てしまったと思い、働く事を決意した。
せっかくの異世界なんだしモンスターをかっこよく退治する勇者にでもなってやるか。
「おぉ、あんちゃん帰るのか?」
「やります?この台」
俺が席を立とうとしたら後ろにいた2足歩行で歩く蛇の顔をした人物が話しかけてきた。
「やるわ。今からどこ行くんでい?」
「分かんないですけど…働きたいので仕事探しに」
「へぇ。頑張れ。でも勇者はやめとけ」
「なんでですか?」
普通、勇者とかになると周りから応援される筈だが何故か止められた。
「この世界には魔王がいるんだけど魔王倒しに行った勇者は皆帰ってきてねぇんだ。だから辞めとけ」
「はい…」
「でも、なるなら冒険者もありかもな?」
「冒険者ですか?」
勇者とはまた別の冒険者という職業を勧められた。
「あぁ。冒険者は楽しいぞ〜色んなとこ行って色んなモンスターや仲間達に出会えるし…」
「へぇ…楽しそう…色んなところに冒険…あれ?」
冒険者は色々な場所を旅する職業なのを知った。
しかし、俺はここである事を思い浮かべた。
冒険者となると色々な場所を旅する事ができる。
つまり、色んな場所のパチンコ屋に行く事ができる。
なので、異世界のパチンコ屋の旅打ちができる!
「それ、俺なります!どこ行けばなれますか!?」
「冒険者ギルドってとこだぁ。この店から出て真っ直ぐ行ったとこにある」
「行ってきまーす!」
「気ぃ付けろよ」
異世界に来てから特にこれといったやりたい事はパチンコ以外思い浮かばなかった。
しかし、異世界のパチンコ旅打ちなんて普通の世界に生きていたら絶対にできない。
でも、異世界ならそんな有り得ない旅打ちだって可能だ。
数多く異世界に転生した奴は他に沢山いるだろうけど異世界でパチンコ旅打ちなんて多分俺だけに違いない!
やってやる…最強の異世界パチンカーに…なってやる!
そう決意していたら後ろで
キュイン!キュイン!キュイーン!と大当たり音が鳴った。
さっき俺が座ってた台からだ。
「あの野郎ぉ…!」
台から離れた瞬間、違う奴が打って大当たりする。
これはパチンコあるあるである。
「気を取り直そ…」
ここで落ち込んでいても仕方がない。
気を取り直して俺は冒険者ギルドへ向かった。
「すみません。冒険者になりたいです」
「ようこそ冒険者ギルドへ。冒険者志望の方ですね」
「はい!」
早く冒険者になって旅打ちがしたいので受付の人に向かって潔く返事をした。
「それではここにお名前のサインを…」
「はい!じゃあここに…と」
名前を書く紙が渡されたのでペンで俺は名前を書く事にした。
これで俺は晴れて冒険者だ。
しかし…
「俺の名前…なんだっけ…?」
異世界に来てから名乗る事が全くなかったのですっかり忘れていたが俺は自分の名前が思い出せなかった。
恐らく前いた世界で頭を銃で撃たれてしまったのでその衝動で一部記憶がなくなってしまっているのだろう。
「やっべぇ…俺って誰だっけ…そもそも異世界来る前何してたっけ…?嫁と子供はいたっけか…?」
肝心な記憶を忘れてしまっていたら良くないと思い、すぐに大事な事を思い出そうとした。
「あぁ俺独身だったわ」
それだけはすぐに思いだせた。
「どうされましたか…?」
「なんでもないです…名前、書きますね…」
どうする…どんな名前書く…
好きな食べ物…いや、思い出せない。
好きなアニメ…思い出せない。
好きな人…そもそもいない。
趣味…パチンコと…そうそう!ピンボールも好きで家に家パチの隣にピンボールマシンとか置いたりしてたな…
パチンコとピンボール…よし決めた!
「俺の名前は…」
パルとサインを書いた。
「パル様ですね。かしこまりました。それではこちらの冒険者専用のカードをお持ちください」
「はい!」
どうせ異世界なんだし別名義で活動しても問題ないだろうと思ったので俺はこの世界でパルとして生きる事を決めた。
そうして冒険者専用のカードを受け取り、俺は晴れて冒険者になった。
「やったー!これで俺は冒険者だ〜行くぞ〜次の場所へ!」
そうして俺はすたっとギルドを飛び出した。
「あぁパル様!お仲間を連れなくて大丈夫でしょうか…?」
どこからか心配の目線を感じたが気にしないぞ。
「とりあえずこれとこれとこれで…よし、大丈夫だ」
食べ物やポーションをバッグの中に入れて持ち込んで出発の準備を整えた。
さぁ、パチンコ旅打ち冒険の始まりだ!
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