第5話 ダンジョン
前回までのあらすじ
異世界のパチンコで勝ったのでアレを交換しようとしたが交換する場所はまさかのダンジョンの先だった。
「で、来てみたのはいいものの…どうすりゃいいんだよ…俺なんて戦闘経験全くないし…」
当たり前ではあるが現実の世界ではダンジョンも魔物も存在しないので当然、戦闘なんてまともに経験を持っている筈がなく、ダンジョンの入り口の先でただ突っ立っているだけであった。
「お〜兄ちゃん、今から交換しに行くのか?」
「まぁ…はい…」
いかつい筋肉に嘴を尖らせた二本足で立つ鳥の種族の男に話しかけられた。
「何も武器すら持ってないし防具も身に付けてないのに?」
「くぅ…」
そうだ。
よくよく見れば他の客はちゃんと腰や背中に武器は装備してあったしある程度頑丈そうな防具も身に付けていた。
それに比べ…俺は今はスーツ姿で武器は何も持っていない。
だから変な目で見られるのはこの世界では当たり前の話だ。
「は〜あ…兄ちゃん見てると昔の打ち始めたばっかりの俺を思い出すわ。しょうがねぇ、これやるから頑張って交換所まで行け。今の時間帯なら精々弱いゴブリンとかスライムがちょっといるぐらいだろうし何とかなるだろ」
「あ…ありがとうございます!」
「おう!行ってこい!」
ゲームでいうよくドロップはするが使うのは序盤だけと言っても過言ではない棍棒を受け取った。
だが、武器があるのとないのとではかなり差が出てくるので俺は無償で武器で貰えた事に有り難みを感じながら感謝の意を述べ、棍棒を持ちダンジョンの中へと足を運んだ。
あれ?でもさっきの鳥の人はダンジョンの目の前を通ったのにダンジョンの中には入らなかった…
となるとパチンコで負けた…もしくは勝っても負けてもいないトントンだったのであろうと予想した。
その経験は現実の世界でも何度もあったから大体察しはつく。
勝負の世界、勝ちもあれば負けもあれば引き分けもある。
パチンコだけに限らず、チェスであれスポーツであれテレビゲームであれどの勝負もそうだが毎回毎回勝てる程、都合良く作られていない。
だからこそ、面白い!
「きゅっきゅ〜」
「出たなスライム!ここで会ったが30秒!俺が倒してやる!」
そう勝負の心理なんて物を哲学者にでもなった気分でのうのうと考えながらダンジョンの中を詮索していると早速スライムのお出ましだ。
割と中は歩いて行ったのでもうすぐ交換所が見えてくるに違いない。
そのせいもあってか今なら倒せる謎の自信が湧いてきたので棍棒を手に持ち、スライムに向かって俺は走り出した。
「うおおおっ!」
「きゅっきゅっきゅ!」
スライムの顔面に向かって棍棒を強く振り下ろした。
「きゅー!」
「よっしゃあ!」
スライムは液体となり辺りに散りばめられて破裂した。
俺はスライムに勝利した。
「よし!この調子で行けば絶対行ける…というか行ってやる!待ってろよ!」
今の調子だと棍棒さえあればスライムなんて怖くない事が判明したのでこの調子を崩さずダンジョンの中を走り回った。
「見えたあれだ!」
既に何人か人が並んでいて特殊景品を手に持っているのでそれらしき場所を見つけ、俺もそこに並んだ。
「次の方どうぞ…」
俺の出番まで後5人ぐらいだったので抜かさず待つ事にした。
しかし
「ぐおおおお!」
「な、なんだあれは!?」
「でっか!?」
突如となく現れた巨大なゴブリン、手持ちの斧を振り回し人々を恐怖に陥れる。
「この時間帯だとこんな奴出てこない筈だぞ!?なんで…どうしてなんだ!?ぐわあっ!」
振り回された斧により、並んでいた人は次々に斬られていき辺りは血で一杯になってしまっている。
「やべぇよ…こんなんじゃまた俺やられちまう…くそっ…せっかく異世界にまで来たのにまたこうなってしまうのかよ…」
現実の世界でも頭を撃たれ、異世界でも同じ様な目に遭って命を落とす。
そんなの絶対御免だし、せめてこの世界に来たからには精一杯前生きていた分まで生きてやりたい。
その思いを込めて俺は手持ちの棍棒に力を込めて立ち向かう。
「来るなら来やがれこの野郎!ただでかいだけで根っこはただのゴブリンじゃねぇか。そんなんなら俺相手だと速攻でやられちまうぜ?この棍棒で一撃万発…じゃなかった一撃必殺をくらえー!」
「ふんぬ!」
「あーっ!斬れた!」
流れ的に立ち向かったのでご都合展開で勝てると思いきや、棍棒は真っ二つに割られて速攻で使い物にならなくなった。
「でも俺はまだ諦めない。高速で、手短で、真ん中に俺は拳でぶん殴るだけだ!いくぞ!うおー!」
「ぐお!」
「ぎゃあー!」
向こうは武器すら使う価値ないと判断されたらしく、斧ではなく拳で殴られて俺は気絶した。
意識が遠のいていく…間違いなく今度こそ俺は死んだに違いない。
皆…僅か5話だったけど今まで読んでくれてありがとう…
異世界パチンコ、完
「な訳!…あ、あれ?さっきのでっかいゴブリンは…?」
目を覚ますと辺りは血まみれになっていたが俺は意識があり、まだ生きていた。
目の前には黒い布を着てフードを被った白髪の少女が杖を持ち、こっちを見ていた。
「えっと…何…?助けてくれたのか…?」
「…うん。貴方はまだ息があったから助かったの。ここの洞窟だしどうせパチンコでしょ…さっさと交換したら…?」
「お、おう。でも例は言わせてくれ。ありがとう。お前のお陰で俺助かったみたいだし、安心して交換してくるわ」
「もう会う事ないだろうからいいけどお前じゃなくて私はセレス…別にお礼なんか要らない…私は貴方達みたいに昼間から遊んだりする程、気楽に生きてないから…じゃあ」
「じゃあな。セレス。ったく人助けたんだしもっとイキっても良いのに…」
助けたからこれ以上俺に関わりたくなかったからなのかセレスはその場を速攻で離れたので俺はそれを後にして特殊景品を交換しに行った。
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