第1話 風がつよつよの世界ではドライヤーが最強らしい
そんなこんなで異世界転生させられた俺、気がつけば森に放り投げられていた。
いや雑ゥ……。
俺はそんなに投げやすいだろうか、死んだ時も吹っ飛ばされたし……。
そのようなことをうじうじ考えていても仕方ないのでまずこの世界を把握するところから始めよう。
まず、周囲を見渡す。木ばかりで家は見えず、文化レベルが分からない。超森。
何故か俺の足元に拾えと言わんばかりにドライヤーが置いてある、え?異世界にドライヤー?早速怪しいぞ??
己を見る、特に念じてもステータスは出ない。一見特に変わったところがあるように見えない、強いて言うならファンタジーの農民のような服装に変わったくらいだろうか。
何も分からん、住む世界が不便になったことしか分からん!
下手に歩き回って魔物とかに襲われたらせっかくの人生が台無しだし……。
そんな風に頭を抱えているとあのカミサマの声が耳元に響いてきた。
『どうも、カミサマASMRだよ。』
やかましいわ。
そう言いたかった気持ちを抑える、いい加減でもカミサマはカミサマだ。丁寧に扱わないと後でどうなるか分かったもんじゃない。既にろくな目に遭ってないが。
「カミサマ、ここの世界観どうなってるんですか?」
『そういうのって自分で把握するもんじゃないの?』
「ここじゃ何も分からないから聞いてるんですよ、あなたが分かりにくいところに送り込むから……。」
『コミュ障をいきなり社会性求められるところに送り込むの、俺的には流石に抵抗あって〜』
「黙ってくれませんかね……。」
ダメだ、話すだけでこのおっさん疲れるぞ?
そう呆れてため息をついていると「ハイハイわかりましたよォ」と手を叩く音が耳元に響いた。……この距離の近さどうにかならないのかい。
『簡潔に言うとここは俺なりに異世界を解釈した世界です。
剣と魔法は分からないけど、魔法な世界にはなってると思うよーん。』
「一応寄せる努力はしたんだ……足元にドライヤー捨ててる癖に……。」
『それはゴミじゃなくてチートアイテムなんだって!今から説明するから!』
チートアイテム?ドライヤーが??
首を傾げ過ぎて頭が外れるかと思ったわ。
そんな俺の理解しきれてない顔を無視してカミサマは続ける。
『この世界、ムフウの国は風の概念が君の世界よりずっと少なくてね、風は魔法でしか起こせないものとしている。
だから風魔法というのは生活面でも重宝されるし、火や水の魔法を増強させるものとしても重宝されているんだ。』
「ネーミングセンスは置いておいて割とまともだった。
でもそれなら風魔法のチート能力くれたらいいじゃん、できないっぽいんだけど。」
『あ、カミサマね、いきなり個人のステータスを上げることあんましたくないのよ。だってほら、人の気持ちも理解できないような子に育って欲しくないし。
だからね、アイテムにしてみたよ。』
アイテムってドライヤーが??
風を起こすでもなんでドライヤーなんだ?扇子とか扇風機とかもっとそれっぽいものあるだろ、いや待て扇風機は嫌だわ……。
『強そうじゃん、それにドライヤーって壊れたら火をふくし。』
「火をふかせるな。」
『それにさ、騙されたと思って使ってみてよ。』
そう言ってカミサマは勧めてくる。
仕方ないから試してみるか……。
一般的なものとほとんど変わらない形状のドライヤーからはコードが伸びている。
使おうにも当然ながらこんなところにコンセントは無い。
『君のベルトに繋ぐんだよ。』
ベルトを見てみると確かにコードを刺すところがあった。
え?電力源俺?
これはどこに繋がっているのだろうか……。
細かいことを考えるのを諦め、スイッチをオンにする。
ブオオオオン
当然熱風が勢いよく出る、俺の頭、オールバック。
普通のドライヤーだと思っていた時、異変に気づく。
……後ろから物音がする。
振り返ってみればそこには
大量の木がドライヤーの風によって倒れていた。
嘘だろ??
「マジか…………。」
『どう?強いでしょ??』
そんな明るいトーンの声に、カミサマのドヤ顔が浮かび、殴り倒したくなるのであった
異世界転生ミリしらの神様に転生させられたらドライヤーが最強の世界ってマジですか? 客砂鈴 @kyasarin_yusyo
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