第2話 旅立ち、そして出会い




「空白の1ページ」






これを埋める為、外の世界へ一歩踏み出したアム。



外で見た世界は、アムの心を簡単に壊すのも容易だった。




造りの親同様の姿の者達、ある者は両腕がなくなっており、ある者は両足がなくなったりしている者もいた。



アムは1人立ち止まり、雄叫びのように泣き叫んだ。





この場所は、小さくとても貧しい村で、パーツの奪い合いや、他の村からの襲撃を受ける事によって壊滅していたのだ。





重たい足取りで 1人歩いていくアム。




今にも心が壊れてしまいそうだが、空白の1ページを埋めるため、涙を拭きながら必死で歩く。





どれぐらい歩いただろうか。 気づいた時には村の出口にいた。




そこでアムは、村を出た丘の頂上に灯りがポツリとついている事に気がついた。





心がボロボロのアムには、なぜだかこの光が神からの贈り物だと思うほど、実に神秘的で神々しく見えた。






その光を見た途端 、アムは走り出していた。




今までの疲れを忘れ、何かに助けを求める様に無我夢中で光に向かって走っていく。



何故だか、この光の先にある物は 今のボロボロの心を救ってくれると信じ、必死で走った。





光の元に辿り着いたアムは、安堵の表情を浮かべ、疲労の末、地面に崩れ落ちそのまま眠りに落ちてしまう。






「トントントンッ ザクッ」





どれぐらい時間が経ったのだろう、 何か作業をしている音と、凄く食欲をそそる匂いと共にアムは目覚める。





「ここは…?」






辺りを見渡すと、どうやら6畳に満たない穴だらけの建物で、謎の人物が動いている。



その少女は、アムと同じぐらいの背丈で、自分同様、両腕、両足の長さや色がバラバラだった。



謎の少女

「あ、起きたんですね!? よかった! 外で倒れていたから心配してたんですよ!! もう少しで美味しいご飯出来るから待ってて!」




話を詳しく聞くと、夜に外で物音がしたから盗賊だと思い確認しに行ったのだが、そこにアムが倒れていたので、一日中看病してくれていたらしい。




アムにとっては初めて生きている人間に出会った事で少し警戒していた。




村で見た光景で、アムは絶望していたが、この少女と話す事で 何故か少し心が安らぐ気がした。




謎の少女

「はい! 出来ましたよー 。 一緒に食べましょ!!」



この世界で初めて食べるご飯。



そのご飯はとても質素な物だったが、アムの心を温かくするには十分すぎた。




ご飯を食べながら、目からは涙が零れ落ちている。



謎の少女

「どうしたんですか? 涙なんか流して。」





アム

「涙…? これは涙と言うのかい?」






謎の少女

「そう、これは涙って言うの。 悲しい事とか、嬉しい事があった時流れるの」





アム

「そうなのか。 君は物知りなんだね! 僕はアム。 君の名前を教えてくれるかい?」







謎の少女

「私はエバよ。

本当の名前かは分からないけど、何故か記憶の中にこの文字があったから名前にしたの。」






アム

「エバ、、 君は僕より沢山の事を知っていそうだし、もっと君の事を知りたいんだ。 教えてくれるかい?」





それから2人はお互い色々な事を話した。





自分が目を覚ました時の事、村の事、空白の1ページの事、お互いずっと1人ぼっちだった事、この世界を変えたい事。




エバもアム同様、ランクの低いパーツを付けていて既にあまり時間がないらしい。






これらの話はどれもが、重たく冷たい話だったが、初めて自分の事を人に話すことが出来たという事から、お互い胸の中の痛みが少しだけ和らいでいく感じがしていた。





その話し合いは朝まで続き、2人は行動を共にする事にした。




そして用意を終わらせた アムとエバは、不安を噛みしめながら、外に続くドアを開いたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

空白の1ページ 葛城ネム @nissy0221

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画