第3話 旅立ち、そして出会い

「空白の1ページ」

これを埋める為に外の世界へ一歩踏み出したディラスだが、外に出た瞬間ディラスは壮絶な現状を目の当たりにする。


道端には作りの親同様、身体から赤い液体を流して倒れている者たちだらけ、ある者は両腕がなくなっており、ある者は両足がなくなったりしている者もいた。


ここは小さくとても貧しい村で、パーツの奪い合いや、他の村からの襲撃を受けることによって壊滅していたのだ。


その現状を見たディラスは、身体の中から何か湧き上がってくる気がした途端、嘔吐した。


なぜ自分が嘔吐してしまったのか、この胸の中から込み上げる物はなんなのか。 ディラスはわからずにいた。


そう、ディラスには いや、この世界の作られた人間達には感情というのがわからないのだ。


悲惨な状態の村の中を1人歩くディラス。 重たい足取りで必死に歩いている。


目からは大量に透明な液体を流しながら…


その液体を腕で拭いながら 最後の1ページの答えを見つける為と、踏ん張りながら歩く。


液体が止まった時にはディラスは村の出口まで辿り着いていた。


ふと、目を上にやると村を出た丘の上に灯りがひっそりポツリとついている事に気がついた。


ディラスにはこの灯りが神からの贈り物だと思うほど実に神秘的で神々しく見えた。


その灯りを見た途端 ディラスは走り出していた。 今までの疲れを忘れ、何かに助けを求める様に無我夢中で光に向かって走っていく。


光の元に辿り着いたディラスは安堵の表情を浮かべながら、疲労の末地面に崩れ落ちそのまま眠りに落ちた…


「トントントンッ ザクッ」

どれぐらい時間が経ったのだろう、 何か作業をしている音と、凄く食欲をそそる匂いと共にディラスは目覚める。


「ここは…?」


辺りを見渡すとどうやら6畳に満たない穴だらけの建物で、少女が何か作っているみたいだった。


その少女は自分と同じぐらいの背丈で、自分同様、両腕、両足の長さや色がバラバラだった。


謎の少女

「あ、起きたんですね!? よかった! 外で倒れていたから心配してたんですよ!! もう少しで美味しいご飯出来るから待ってて!」


少女の話を詳しく聞くと、夜に外で物音がしたから盗賊だと思い確認しに行ったのだが、そこに自分が倒れていたから一日中看病してくれていたらしい。


ディラスにとっては初めて生きている人間に出会った事で少し警戒していた。


だが自然とディラスの胸の中の痛みは少し和らいでいく。


謎の少女

「はい! 出来ましたよー 。 一緒に食べましょ!!」



自分が作られて初めて食べるご飯。 そのご飯はとても質素な物だったが、ディラスの心を温かくするには十分すぎた。


ご飯を食べながら、目からはまたあの透明な液体が流れ落ちてくる。


謎の少女

「どうしたんですか? 涙なんか流して。」


ディラス

「涙…? これは涙と言うのかい?」


謎の少女

「そう、これは涙って言うの。 私もたまに流れてくるのだけど、何故流れてくるのかわからないの。」


ディラス

「そうなのか。 君は物知りなんだね! 僕はディラス。 君の名前を教えてくれるかい?」


謎の少女

「私はクレナよ。 本当の名前かは分からないけど何故か記憶の中にこの文字があったから名前にしたの。」


ディラス

「クレナ、君は僕より沢山の事を知っていそうだし、もっと君の事を知りたいんだ。 教えてくれるかい?」



それから2人はお互い色々な事を話した。

自分が目を覚ました時の事、村の事、空白の1ページの事、お互いずっと1人ぼっちだった事。

どうやらクレナはランクの低いパーツを付けていてもう既にあまり時間がないらしい。


これらの話はどれもが、重たく冷たい話だったのが、初めて自分の事を人に話すことが出来たという事からお互い胸の中の痛みが少しだけ和らいでいく感じがしていた。


その話し合いは朝まで続き、お互いの為に行動を共にすると決意した2人は家を後にした。


世界を変えるために…

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