第3話 先駆者
先を往く者は、孤独を成し遂げることが出来る者だ。
今日は祝うべき高校の入学式である。
真新しい制服に身を包み 、期待に胸を膨らませている者。不安に押し潰されそうになる者。高校など、社会の奴隷となる為の予行練習をする場所であると悲観する者。様々な者がいる。
新入生長谷川はというと、まだ眠っていた。
惰眠に惰眠を重ね、惰眠を貪っているのか、はたまた惰眠に貪られているのか分からないような春休みを過ごしていたが為、朝という概念が彼の中で形を成さなくなっていたのだ。
燦然と輝く陽光に照らされ、長谷川は高校への旅路についていた。
眠い目をこすりながら、ただひたすらに走る。刻一刻と迫り来る時間から逃げるように。
「自己紹介をします」
担任がそう言葉にした。
肺を枯らしながら走り、時間制限残りわずかで校門を潜り、休む間もなく長い式へ参加した挙句にくだらない馴れ合いの為の自己紹介をしろという地獄。
長谷川は、生を実感した。
「長谷川 健太郎くん、お願いします」
聞きたくもない他人の趣味を聞かされ気分を害していた長谷川が大きな音と共に立ち上がった。
「名など言わん!くだらん馴れ合いの為に自分を紹介など死んでもごめんだ!何故友を作ろうとする?自分の利益の為の人形とするならばまだ分かるが、お前らは本気で信頼していそうで怖い。他人を愛する情が有るのなら、何故それを自分に注がない?何故、全てを自分に注がないのだ!いつの時代も一番の理解者は自分である!この境地に達することが出来ないお前らは愚者であり、私は先駆者である!お前らがこれから手に入れる未知の景色は、私にとっては過去である!」
と豪語してみせたのである。
幸せとは建前である @riomayo
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