ガーネット

砕け散る 砕け散る

世界という柘榴石ガーネットのド真ん中

硬い鮮血をさかずきに捻じ込んで

毒をあおった僕が死ぬ


開け放した独り部屋の窓を通って

自惚うぬぼれという青い薔薇の腐香くさりかがする

呼びもしないのに

いとも容易くやって来る ────

苦しみ抜いた愛の肌に

電線に掛かる凧のような 奇妙な角度で


僕の辿った道のうた

余りにも 韻を踏み忘れてきた

僕が夢に見た虹の軌跡は

君たちと重なるすべ悉皆すっかり失くした


縁からみ出るシールの微苦ほろにがさで

毎日毎日 生活という名の

永々と 晴れることのない霧の

それでいて とても勇敢で美しい呼吸いき

どうやら 君たちは持っているらしい


ああ そんな君たちの瞳には

さぞかし冒涜violationと映るに違いない

僕のマッチが延々とこぼし続ける

酷く曖昧模糊としたvioletの煙の塊……

(それとも それを証明するために

 僕は生まれたのだろうか?

 ……しかし それでも

 記憶の列車がレールにはぐ

 僕は もう これ以上

 ハンドルを握ることさえ覚束ぬ)


さあ 世界よ

麗しきその紅柘榴あかざくろ

涙ぐましき葬礼の旗を揚げよ!


砕け散る 砕け散る

世界という柘榴石ガーネットのド真ん中

硬い鮮血を杯に捻じ込んで

毒を呷った僕が死ぬ





──── はずだった けれど





あの日

曙光に飾られた大空の紫色ししょく

僕の魂が重力をうしないながら

天に昇るのを きっぱりと拒んだ


やがて 仕方なく

僕は 小さく生きることを選んだ


でも 今は思っている

ああ それでいい

これでいい と


僕の血が少しく滲む紅い宝石ガーネット

生命いのちの熱に輝いて

いつものように 君たちのように

今日も格別に 美しいと思う


そしてまた 今日もねが

世界よ どうか平和であれ と



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詩集 生的デッサンとガーネット もざどみれーる @moz_admirer

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