第26話 でもね…今後、どうなっても知らないからね

 中村優斗なかむら/ゆうとはこの前、色々な経験をした。


 結城芽瑠ゆうき/めるが、あのチョコの影響で大胆になり。

 そして、如何わしいことをしまいそうになったりと。


 芽瑠の母親が一人で食べてと伝えていたのは、彼女がそれを口にしたら、どうなるかわかっていたからだろう。


 まさか、芽瑠があそこまで豹変するとは予想外である。


 でも、普段の彼女とは違う一面を見れたことに、少し得をした気分だった。


 やはり、好きな子の知らない一面を知れたことに、数日経った今でも興奮が止まらない。


 今は普通に付き合っている関係。


 この前、芽瑠がお酒の勢いで迫り着ていたが、優斗はやんわりと断った。


 普通にやれる環境ではあり、断る理由もない。


 でも、それはフェァじゃないと思い、優斗は拒否したのだ。


 芽瑠が平常心では無い時に、そういった関係を持っても意味がない。

 そういったのは後でもいいといった結論に至ったのだ。


 芽瑠が正気を取り戻す前に、あのブラジャーを取り返せたのは色々と都合がよかった。

 内心、そう思う。




「ねえ、優斗。この前は、色々と迷惑をかけちゃったんだよね?」


 今は学校からの立ち去り、街中へ向かって歩いている最中だった。


 彼女は自身の記憶に曖昧さが残っているようだ。


「え? いや、大丈夫だからさ。気にしないで」

「でも、優斗には悪いことをしたような気がして」

「そんなことはないさ、むしろ、俺の方も色々と問題があったしさ」

「……問題って?」

「え……いや、なんでもないよ。気にしない方がいい時だってあるし」


 優斗は何事も無いように言葉を選びながら話を逸らす。


 こちらの話だ。


 やはり、あのことは記憶に残っていないらしい。


 でも、その方が都合がいいというもの。


 優斗はホッと胸を撫で下ろし、その状況を何とか乗り越えたと実感する。


 優斗は彼女と共に、街へと向かって歩き続けた。


 この前は芽瑠にあげようとしていたブラジャーを、自身のリュックにしまい、自宅に帰ったのだ。


 彼女の部屋の匂いがしみ込んだままの下着が、未だに自分の部屋にあると思うと、心臓の鼓動が急激に高ぶってくる。


 いや、今は忘れた方がいい。


 じゃないと、現状どうしてもヤバくなりそうだからだ。


 この妙に高ぶってくる心臓の高鳴りをどうにかしないといけない。


 優斗は深呼吸をして、平常心へ持っていこうとする。




「私ね、行きたいところがあるの」

「ど、どこ?」


 急に、隣を一緒に歩いている芽瑠からの問いかけがあった。

 しかも、その豊満な胸が迫り寄ってきているのだ。


「どこでもいいんだけどね。私、優斗に、この前、迷惑をかけちゃったと思うし。だからね、今回は私に奢らせてほしいの」

「そう言う事なら、いいけど……」


 優斗は内心、考える。


 しかし、芽瑠のおっぱいばかりが優斗の脳内を掌握する。


 彼女のおっぱいばかりに意識がいく。それほどに、彼女のおっぱいが優斗の腕を圧迫していた。


 そういった行為は嬉しいのだが、やはり、心に平穏を確立させることには限度があるものだ。


 このまま人が多く行き交う街中を歩くとか、本当にどうなってしまうのだろうか。


 優斗の不安が拭われることはなかった。


「私ね……後で優斗に話したいことがあるの」

「な、何を?」

「……ここでは無理だけど」

「無理なこと?」


 では、まさか、アレの事なのか⁉


 そう思うと、優斗の内面を襲うドキドキ具合が収まることはなかった。


 二人は、どの店屋がいいか、街中を歩きながら探す。


 でも、周りから感じる嫉妬染みた視線を、優斗は受け続ける羽目になったのだ。






「ここのお店とかよさそうよね」


 優斗は芽瑠と一緒に、とある喫茶店に入ることになった。


 店内には清潔感があり、楽し気な雰囲気が漂う空間。


 BGMも心地よく素晴らしいものだった。


 優斗は彼女と共に、店員から案内されたテーブルへ向かう。

 そして、二人は向き合うように座った。


「本当になんでもいいからね。今回は私が払うから」


 芽瑠の奢りであり。

 好きなモノを選んでも自分には何の負担にもならない。

 だからと言って、余計に注文することはしない。


 優斗はテーブルに広げたメニュー表を見て思考する。


 色々なモノがありすぎて、やはり、迷う。


 喫茶店であり、多種多様なコーヒーがある。

 そういった専門店なのか、注文の際に店員に伝えれば、味の濃さも細かく設定できるらしい。


 少し悩んだ結果。


「俺、これにするよ」


 選んだのは、少し濃いめのクリーム入りのコーヒーだ。


「じゃあ、私も優斗と同じのにしようかな」


 芽瑠は優斗と同じメニュー表を見ながら、同意するように言う。


「それでいい?」

「うん、今日は優斗と一緒のにしたい気分だから」


 上目遣いで、優しく伝えてくる彼女。

 そんな彼女の台詞に、ドキッとし、それ以上、何も言えなくなった。




 大体の注文内容が定まった頃、店員を呼び、後は彼女との会話をし始めようとした。


 芽瑠と一緒にいる中で、やはり、楽しくやり取りできる時が心地よく感じる。


 ようやく恋人らしいことができ、内心、嬉しく思う。




 刹那、どことなく怪しい空気感が、その場に漂う。


 嫌な予感を胸に感じていたが、それは的中することになった。




 なんで、こんなタイミングでと思いつつ、優斗は驚愕する。


 鈴の音色と共に、この喫茶店にやってきたのは、幼馴染の詩織だった。


 店内の入り口には彼女が佇み、店員と会話している。


 間が悪いというか、本当に勘弁してほしかった。


 決して彼女のことが嫌いとかではないが、どうしようもない事態に、頭を抱えてしまうことになったのだ。






「なんで、あの子といるの?」

「それは……この前にも言っただろ……芽瑠と付き合うことになったって」


 優斗はもう一度説明するように伝えた。


 今、優斗と詩織は喫茶店から一旦出て、店内の入り口前にいる。


「でも、私……私の方は?」


 隣に佇む彼女は横目で優斗の方を確認してくるのだ。


「え?」

「だから……私とも付き合ってよ」

「いや、だから、それは……」


 優斗は困った態度を見せる。


 しかし、こんなところで言葉を詰まらせてはダメだ。自分の中ではすでに決まっているのだから。


「俺は変えるつもりはないから……」

「……本気、なのね?」

「ああ」


 優斗は素直にそう言った。


 自分のこの考えには間違いはないと思っているからだ。


「これから友達としてならいいけど。俺はさ、詩織とは今まで通りの関係性の方がいいんだけどね」


 これまで幼馴染としてやってきたのだ。


 詩織には申し訳ない気持ちもあるが、これからの事を考えると、やはり、この決断で正しいと思う。


「……わかったわ。優斗がその気ならね……」


 詩織はしょうがないと言った感じに溜息を吐く。

 彼女は優斗をジッと数秒ほど見つめた後。

 優斗と向き合うような場所へ移動し、軽く口を開き始める。


「でも、そう決めたのなら、しょうがないとして。でもね、今後、どうなっても知らないからね」


 詩織は意味深な言葉を捨て台詞のように残したまま立ち去って行く。


 一体、どんなことが生じてしまうのだろうか?


 嫌な予感を感じたまま、優斗は動揺しつつも、再び、芽瑠がいる喫茶店内へと戻るのだった。

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未だに童貞な俺が、学園一の爆乳美少女と付き合うことになったわけ 譲羽唯月 @UitukiSiranui

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